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中国で体験したBYDの超高速充電システム「スーパーeプラットフォーム」の衝撃

2025.06.08

 中国の自動車メーカーBYDが今年3月に発表した超高速充電システム「スーパーeプラットフォーム」を、上海郊外の常州市にあるBYDのディーラーで体験することができた。「スーパーeプラットフォーム」は、BYDが開発した「ガソリン車の給油速度と同等にする“油電同速”の実現」に向けて開発されたものだ。

なんと1000kWもの超高速を実現

 BYDでは、「1秒あたり2kmの航続距離に相当する超高速充電を行う「フラッシュ充電」を実現し、5分間で最大400km分の充電を可能とすることでEV充電に関するこれまでの課題を大幅に改善する」と謳っている。日本のCHAdeMO規格での高速充電の多くが150kWであるのに対して「スーパーeプラットフォーム」はなんと1000kWもの超高速を実現したという触れ込みだから、もはや次元が違う速さなのだろう。

 そのためには充電器だけ開発しても実現せず、同時にその充電を受け入れられる能力がクルマに備わっていなければならない。そのために、まず同社の「漢L」(ハンエル)というSUVと「唐L」(タンエル)という大型セダンに最大1000V級の高電圧に対応する世界初の量産車向け「全域キロボルト高電圧アーキテクチュア」が採用された。

 そして、それら2台に搭載されるモーターは単体で最大580kWもの高出力を発揮し、最高回転数30000rpmを実現。これにより、どちらも最高速度300km/h超と発表している。超高速充電もさることながら、あまりの超高性能ぶりに、何度もプレスリリースを見直してしまった。充電器はスーパーeプラットフォーム用に開発された特別なものだ。今後、BYDは各地のディーラーを皮切りに中国全土4000か所以上への設置を予定している。

 常州市のBYDディーラーを訪れると、すでにその「漢L」と「唐L」が準備されていた。どちらも特別に用意されたものではなく、このディーラーで商品として販売される予定の2台だ。漢Lと唐Lのどちらも、BYDが中国で展開している「王朝シリーズ」のトップグレードモデルだ。日本で販売されている「SEAL」と「シーライオン7」よりひとまわり大きく、内装なども高級感を漂わせている。

100%まで充電されるのに9分あまり

 事前に、クルマに充電されている電気の量を0%に減らしておいてあった。

そこから充電して、実際に何分で満充電に達することができるのか?ひとつの充電器からは2本の充電ホースが伸びていて、1本から最大500kWが供給される。これだけでも超強力だ。漢Lにも唐Lにも充電ソケットが左右にひとつずつ設けられ、2本同時に差し込めば合計1000kWで充電できるというわけだ。

 充電器には操作パネルのようなものはない。操作はあらかじめスマートフォンにインストールした専用アプリから行なう。15時50分にディーラーの担当者がアプリをタップして充電が開始された。すぐに448kWまで出力が高まっていき、551kW、677kWと急速に出力を増やしていく。50%を超えた辺りから絞り始められ、100%まで充電されるのに9分あまり。566km走行可能だと表示されていた。「5分間で最大400km分」からは遠い値だったが、9分で566kmというのは日本の現状とは雲泥の差がある。たった9分間で566kmも走れる分の充電が行われたのには驚かされてしまった。最初は信じられなかったが、アプリだけでなくクルマ側のメーターパネルに表示された値も確認したので間違いない。

 昨年、京都から東京までの500kmをボルボ「EX30」で走ってきた時に、途中の新東名高速浜松SAで1回充電した。その時は、30分間で270km分の充電ができた。それと較べると、BYDのスーパーeプラットフォームは約7倍もの速さで充電できたことになる。恐ろしいほどの速さだ。

 今までは、テスラの「スーパーチャージャー」規格が日本のCHAdeMO規格よりも格段に速かったが、そのテスラすら較べものにならない劇的な速さをBYDは実現してしまった。感覚的に「ガソリン給油と変わらない」と断言しても構わないと思った。それほど驚かされた。上海まで行った甲斐があった。

 EVの宿命的な弱点とされていた充電時間の長さを、ほぼ解決してしまったようなものだ。9分間で566kmだから、京都から東京までは充電せずに走り切ってしまう。日本でも体感できるようになるのは少し先のことになるのかもしれませんが、BYDが日本市場で本気を出すならば、それほど遠くはないような気もした。

カセット式バッテリー交換システムも

 さらに中国には、NIO(ニオ)もある。NIOのカセット式バッテリー交換システムは、専用交換ステーションで空になったバッテリーを予め満充電にされているバッテリーと全自動で交換する。要する時間は3分未満。プレゼンテーションは何度も見たことがあるし、北京の街中の交換ステーションで一般の利用者が行うのを偶然に見た時に計っても3分より少し早く交換していた。7年前に運用を開始し、現在では中国全土に交換ステーションは3000か所に増えた。どこのステーションに何個のバッテリーが用意されているかなどの情報や予約などは、専用アプリから行える便利さだ。

 おまけに、NIO各車はバッテリーレスで買うことが可能という先進性も備えている。オーソドックスな充電器を使った充電もできる。しかし、カセット式をメインで使って、サブスク契約でバッテリー使用料を支払う形も選べる。バッテリー劣化の不安からの中古車価格の下落も防げる優れたシステムとなって顧客から支持されている。

 つまり、中国では、充電時間の長さというEVの宿命的な弱点がBYDやNIOなどが技術面から事実上解決したのと併せてバッテリーレス購入とサブスク使用契約などによって、EVの普及の道筋が太く強いものになっているのだ。中国の自動車社会は欧米や日本が成し遂げていない新しい段階に、すでに入っていると言えるだろう。

■関連情報
https://dime.jp/genre/1949409/

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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