
昆虫界の絶対的人気者と言えばカブトムシですが、カブトムシはコガネムシの仲間です。そんなコガネムシの仲間にはカブトムシに負けないくらい美しくてカッコいい「糞虫」と呼ばれる仲間がいます。糞虫はその名の通り、主に糞を食べるのですが、そのイメージとは裏腹に最高のビジュアルをしています。今回は日本を代表する糞虫たちについて、さらにはこれからの時期に彼らと出会う方法について解説します。
宝石のように美しい糞虫・オオセンチコガネ
オオセンチコガネは1~2cm程の大きさで、北海道から九州まで分布しています。草原や森林に生息していて、シカやウシ、ウマ、サルなど様々な動物の糞に集まりますが、金属光沢の美しい体をもっており、自然の中で太陽の光に当たった時の姿は宝石そのものです。さらに、興味深いのは地域によって輝く色が異なり、様々な色のバリエーションがあります。ここでは、代表的な色のオオセンチコガネについて紹介します。
(1) 瑠璃色
近畿地方中部~南部、鹿児島県の屋久島などには瑠璃色の体を持つオオセンチコガネが生息しており、「ルリセンチコガネ」とも呼ばれています(屋久島の個体群は亜種ヤクルリセンチコガネ)。有名な場所として、奈良県の奈良公園ではシカの糞に集まるルリセンチコガネを多く観察することができます。
(2) 緑色
京都府、滋賀県、三重県北部、北海道の一部などには緑色に輝くオオセンチコガネが生息しており、「ミドリセンチコガネ」と呼ばれています。オオセンチコガネの中でもこの緑色の個体は特に人気が高いです。
(3) 赤紫色
赤紫色のオオセンチコガネは最も広い地域で見ることができるタイプです。しかしながら、地域や個体によってもバリエーションは非常に多く、これまであげた色との中間のような個体も多くいます。
カッコいい糞虫たち
ツノを持つ昆虫と言えば、カブトムシですが、負けないくらいカッコいいツノを持っている糞虫がいます。そこで、僕が「この糞虫のツノは特にカッコいい!」と推している糞虫2種類を紹介させていただきます。
(1) ダイコクコガネ
ダイコクコガネは1.5~3.5cmほどの糞虫の中では大型の種類で、北海道から九州まで分布しており、ウシやシカの糞に集まる習性があります。オスは頭に大きなツノを持っており、カブトムシ同様に個体によってツノの長さも変わります。糞虫界では大人気の種類なのですが、放牧地などが減少していることから近年は激減しており、各地で絶滅危惧種にも指定されています。
(2) ゴホンダイコクコガネ
ゴホンダイコクコガネも(1)で紹介したダイコクコガネと同じ仲間なのですが、1~1.5cmほどの比較的小型の種類です。しかしながら、頭のツノだけではなく、胸からも4つのコブ状のツノが生えており、非常に美しい造形美を持っています。ウシやウマなどの糞によくやってくる習性があり、ダイコクコガネに比べると、簡単に見つけることができます。
糞を食べない糞虫
■ムネアカセンチコガネ
糞虫として扱われている種類の中には例外的に糞を食べない種類もいます。ムネアカセンチコガネという種類は分類学的には糞虫の仲間なのですが、糞を食べずに、地中の菌類を食べることが知られています。すべての糞虫が糞を食べるわけではないのです。
糞虫を見つけるには
ここまで日本を代表する美しい、カッコいい糞虫たちを紹介してきましたが、皆さんもう既に探しに行きたくて仕方ないのではないでしょうか?(笑)糞虫を見つけるためにまず重要なことは彼らが好きな糞を見つけることです。
おすすすめなのは、ウシやウマがたくさんいる牧場やシカがたくさんいる公園などで、糞の周りをチェックしてみることです。必ず、土地の管理者の許可を得てから探すようにしましょう。
また、糞虫の仲間は夜、灯りに集まる習性もあります。手袋をしたとしても、糞に近づきたくない方は動物が多く生息してそうな場所の近くの街灯の下などをチェックしてみましょう。糞を食べない糞虫のムネアカセンチコガネも灯りによくやってきます。
糞虫は動物の糞を分解するという生態系の中でとても重要な役割を果たしてくれています。美しい種類やカッコいい種類も多いので、彼らに関心を持つと、私たち人間と生き物の関わりについて考える良い機会となることでしょう。
昆虫ハンター・牧田習
博士(農学)。1996年、兵庫県宝塚市出身。2020年に北海道大学理学部を卒業。同年、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学し、2025年3月に同大学院博士課程を修了。昆虫採集のために14ヵ国を訪れ、9種の新種を発見している。「ダーウィンが来た!」(NHK)「アナザースカイ」(NTV)などに出演。現在は「趣味の園芸 やさいの時間 里山菜園 有機のチカラ」(NHK)、「猫のひたいほどワイド」(テレビ神奈川)にレギュラー出演中。昆虫をテーマにしたイベントにも多数出演している。
著書:「昆虫ハンター・牧田習のオドロキ!!昆虫雑学99」(KADOKAWA)、「昆虫ハンター・牧田習と親子で見つけるにほんの昆虫たち」(日東書院本社)、「春夏秋冬いつでも楽しめる昆虫探し」(PARCO出版)好評発売中。Instagram・Xともに@shu1014my
文/牧田習
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「昆虫採集」のすべてがわかる!イケメン昆虫博士がガイドする虫とりの完全攻略本、発売!
いよいよ、始まる夏休み。カブトムシやクワガタが好きな子どもたちが楽しみにしていた季節が到来します。昆虫採集の楽しみと言えば、虫をつかまえることにあります。憧れて続けてきたカブトムシを手にしたときの興奮、意外な場所でたくさんのクワガタを発見した時の胸の高鳴り。子どもの頃、体験したこのワクワクは一生の思い出として残り続けます。

ただ、狙った虫をつかまえるためには、それなりの情報や技術も必要です。カブトムシやクワガタもつかまえるにはそれなりのコツが必要であるがゆえに、挑戦しがいがあるのです。一方で、樹木を傷つけたり、照明をつけて大量に捕獲したりするなど、ルールを守らない人も増えているのも事実で、そもそもルールを知らないという人も増えています。

そこで、虫とりが大好きな子どもたちのために、楽しくて正しい虫とりの方法を指南する最新のガイドブックを作りました。ガイド役は、NHK Eテレなどでも活躍しているイケメン昆虫博士の牧田習さんが担当。牧田さんならではの視点と知見をフルに活用した、実践的で楽しい虫とりのハウツーを余すところなく、紹介しています。

本書では、春から秋にかけて採集できる代表的な昆虫(チョウ、テントウムシ、カブトムシ、クワガタ、カマキリ、セミ、ホタル、水生昆虫、カメムシ、コガネムシ、カミキリムシ、タマムシ、バッタ、ナナフシ、トンボ、オサムシなど)の、見つけ方、探し方、捕り方のテクニックをわかりやすく解説。初心者でにもやさしい実用的な情報から、ちょっとマニアックな採集テクニックまで網羅した、最新の昆虫採集マニュアルとなっています。
しかも、虫とりに行く時に携帯するのにちょうどいいポケットサイズなので、とても使いやすいのもポイントです。子どもたちの自由研究にも役立つ楽しいガイドブック。保護者の皆さんにも子どもの頃を思い出しながら、読んでほしい虫とりの全部入りガイドブックです。

子どもに虫とりに連れて行ってほしいと言われ、困り果てているお父さんたちにも読んでいただきたいポケットサイズのガイドブックです。昆虫採集は今も昔も、子どもたちからの定番趣味として大人気。子どもの好奇心を大事に育んでいくのにも最適な一冊です。お子様へのプレゼントにもおすすめです。
著者プロフィール

牧田習(まきた・しゅう)
博士(農学)。1996年、兵庫県宝塚市出身。2020年に北海道大学理学部を卒業。同年、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学し、2025年3月に同大学院博士課程を修了。これまで14か国を訪れ、9種の新種を発見している。『趣味の園芸、やさいの時間』(NHK)、『猫ねこのひたいほどワイド』(テレビ神奈川)にレギュラー出演するなど、テレビやラジオ、雑誌で活躍。昆虫をテーマにしたイベントにも多数登壇している。著書に『昆虫ハンター・牧田習と親子で見みつけるにほんの昆こん虫ちゅうたち』(日東書院本社)などがある。Instagram・Xともアカウントは@shu1014my
書籍情報
『昆虫博士・牧田習の虫とり完全攻略本』

著者:牧田 習
定価:1,210円(本体1,100円+税)
体裁:新書判 / 128ページ / 4C刷
発行:小学館
発売日:2025年7月4日
ISBN:9784092274433
https://www.shogakukan.co.jp/books/09227443
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●本書の構成・目次
・はじめに&この本の使い方かた
・虫むしとり道具 のきほん装備
・虫むしとりのきほんワザ10
・正しい昆虫の持もち方かた
【採集編】
花に集まる虫をとろう!
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構成/DIME編集部