誘惑の儲け話と少額の利益が地獄の始まり
今年、静岡県下田市に住む70代自営業の男性がSNSで株への投資を勧誘され、現金1500万円をだまし取られた。
また、藤枝市に住む40代介護士の女性もSNS型投資詐欺の手口で現金計約1100万円をだまし取られている。
社会経験が豊富な大人が、なぜこうも簡単にだまされてしまうのか?SNS型投資詐欺の具体的な事例を伺った。
「SNS型投資詐欺の多くは、SNS上のバナー広告やダイレクトメッセージなどをきっかけに被害者と接触し、トークアプリやチャットグループへ誘導することから始まります。そこで継続的に連絡を取り、情報交換などをしながら信頼関係を構築した上で投資の話を仕向けるものが多いです」
グループ内のメッセージには、被害者を誘惑するような“おいしいエピソード“が次々と投稿されるという。
「本日は1000万円の勝ち」
「先生のご指導で大きな利益が出ました」
「儲かったお金で高級車を購入した」
自分同様、投資に興味があり、情報を共有している仲間たちが軒並み儲かっていることを目の当たりにすると、警戒心を上塗りするように金への欲深さが現れる。
冷静さを失い、ウソだらけの煽りに被害者は『自分も参加しなければもったいない』という強迫観念にかられ、大事な資金を投入してしまうのだ。
また、一度グループに引き込まれると、個別にメッセージが届き、投資とは関係のないプライベートの話で盛り上がることもある。
そこでもさらに関係性を築き、信頼を得て、いつの間にか詐欺の餌食に。
「著名な投資家やトレーダーを名乗る者の他、身内に投資アナリストがいるなど被害者の関心を引き付け少額の利益を得させる手口です。たとえ少額でも利益が出ることで信用した被害者は徐々に高額の増資に手を出し、結果多額の現金をだまし取られてしまうことになります」
株や外貨、暗号資産への投資を勧められ、指定口座への送金を指示されると、怪しむことなく大金を投入。その後、たとえ不信感を抱いたとしても時すでに遅し。
『出金には手数料が必要』、『税金を払うため送金してほしい』、『出金には時間がかかる』などの言い訳が繰り返され、しばらくすると連絡が途絶える。そこでようやく詐欺であることに気づくという。
詐欺に遭いたくないないなら金融庁と公式サイトを見ろ!
年代性別を問わず被害が増加しているSNS型投資詐欺。投資経験がある人でも、思わぬカタチで詐欺に巻き込まれることも少なくない。
一体なぜ今、SNS型投資詐欺が急増しているのか?
「被害の中心である40~60代は、一部証券会社が調査公表している年代別投資家人口層と符号しています。昨今のNISAを始めとする投資ブームの影響から、「元本保証」「必ず儲かる」といった甘言につられやすい状況にあり、被害が拡大しているものと分析しております」
――SNS型投資詐欺に遭わないためにはどうすればいい?
「投資は個人が無登録で資金を預かり、代わりに投資することは法律で禁じられてします。また、投資業務を行うには金融庁への登録も必要です」
「投資を勧められた商品について、金融庁HPや企業公式サイトなどを活用し、必ず自分自身で確認するとともに、SNSで投資を勧められた場合はまず先に詐欺を疑い、家族や最寄りの警察署に相談することが大切です」
――詐欺を見分ける方法は?
「一つは、『金融庁に登録のない業者から勧誘されていないか?』、そして、『絶対に儲かる等と勧誘されていないか?』、『投資アプリのダウンロードや個人名義の口座への送金を指示されていないか?』などがポイントになります」
「静岡県警察のHPでも上記のポイントを掲載して注意を呼びかけています。SNS上で知り合った相手からの投資話は詐欺を疑い、一人で判断しないことが重要です」
もしかしたら、「絶対に騙されない」という自信に満ちた人ほど知らぬ間に隙が生まれ、危険な道へと引き摺り込まれていくのかもしれない。
非常に巧妙な手口による投資詐欺、あなたはだまされない自信がありますか?
取材協力
静岡県警察
静岡県警察公式チャンネル
文/太田ポーシャ