
ビタミンD3は生物学的な老化を抑制する?
ビタミンD3サプリメント(以下、サプリ)は、本当に「若返りの泉」となって人間の生物学的な老化を遅らせることができる可能性のあることが、新たな臨床試験で示された。ビタミンD3を毎日摂取している人は、染色体の末端にありDNAを保護する役割を果たしているテロメアの摩耗が抑えられていたことが確認されたという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院予防医学部門長のJoAnn Manson氏らによるこの研究結果は、「American Journal of Clinical Nutrition」に5月21日掲載された。
靴ひもの先端をカバーするプラスチック製の覆いに例えられるテロメアは、加齢とともに劣化する。そのため研究者は、出生から経過した年数に基づく暦年齢ではなく、実際に体がどれだけ老化したかを表す生物学的年齢の指標としてテロメアを用いている。
この臨床試験では、ビタミンD3サプリおよびオメガ3脂肪酸サプリの効果の検証を目的とした大規模臨床試験であるVITAL試験(試験参加者2万5,871人)のデータが用いられた。VITAL試験では、試験参加者がビタミンD3(1日2,000IU)またはオメガ3脂肪酸(1日1g)のサプリを毎日摂取する群にランダムに割り付けられていた。今回は、VITAL試験参加者のうち、試験開始時とサプリの摂取開始から2年後および4年後にテロメアの長さが評価された1,054人を解析対象とした。研究グループによると、テロメアが短くなると遺伝子の安定性が低下し、がんや心疾患、死亡、慢性疾患のリスクが高まると考えられている。
臨床試験からは、ビタミンD3サプリの摂取群で、プラセボ摂取群と比べて4年間のテロメア短縮が有意に抑制されていたことが明らかになった。一方、オメガ3脂肪酸摂取群では、テロメアの長さに対する明確な効果は見られなかった。
研究論文の筆頭著者である米オーガスタ大学ジョージア医科大学のHaidong Zhu氏は、「今後さらなる研究が必要ではあるが、この結果は、特定の対象に絞ったビタミンDの補給が生物学的な老化のプロセスに対抗する有望な戦略となり得ることを示唆している」とマス・ジェネラル・ヘルスのニュースリリースの中で述べている。
ただし、まだビタミンD3の錠剤を買いだめするのは時期尚早だとManson氏らは警告するとともに、今回の試験で示されたポジティブな効果を、他の研究で検証する必要があるとの見解を示している。Manson氏は、「われわれは、今回の結果は有望であり、さらなる研究の実施に値するものだと考えている。ただし、ビタミンD摂取に関するガイドラインを変更する前に、再現性を確認することが重要だ」とWashington Post紙に語っている。また同氏は、ビタミンD3のサプリ摂取がテロメアに有益な影響をもたらす可能性はあるものの、健康的な食事や日常的な運動の代わりとして位置付けられるべきではないと強調している。
Manson氏は、「繰り返し指摘してきたが、重点を置くべきはサプリではなく、食事と生活習慣である」とWashington Post紙に語っている。その上で、「炎症レベルが高い人や、明らかに炎症に関連した慢性疾患のリスクが高い人などのハイリスク層では、特定のビタミンD3の補給が有益である可能性がある」と付け加えている。(HealthDay News 2025年5月27日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://ajcn.nutrition.org/article/S0002-9165(25)00255-2/abstract
構成/DIME編集部
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