経済成長に対し、認識しておきたいリスク
インド経済の成長ポテンシャルは高いといえる中、認識しておきたいリスク3つとそれが発現しないかチェックしたい情報もまとめておこう。
1.インド通貨安になるリスク
インドの通貨ルピーは、原油価格、米ドル価格、海外からの投資フローといった外部要因に敏感に反応する傾向にある。特に原油輸入国として、原油価格の上昇がインドルピー安の呼び水になりやすい。これらが急落したり減少に転じたりしないかニュースを追いかけたい。また、インフレ圧力やそれに対応するインド準備銀行(RBI)が市場介入した場合も当然通貨安へ影響する。地政学的の視点で、パキスタンとの紛争などによりサプライチェーンが混乱して経済活動が停滞しないかの情報も追いかけておきたい。
2.人口ボーナス期に対しての教育の不平等やスキルのミスマッチリスク
成長分野に対して、インドの高等教育や職業訓練の質と量が十分でない場合は、若者が労働市場で活躍できず、人口ボーナスが重荷に転じる可能性がある。そのためインドの失業率が増加し、若者の就業状況が悪化していないかは定期的に確認したい。デジタル・インディアとしてIT先進国であるがゆえ、ITリテラシーの低い人(デジタル・デバイド)が各サービスを利用できなくなったり、サイバー攻撃によりITシステムが停止し経済が混乱したりしないか。その混乱によりデジタル・インディアとしての信頼を損なって経済成長が低下しないかも注目したい。
3.法制度の実態と乖離するリスク
インドの伝統的な身分制度「カースト」は、同憲法上で差別が禁止されているが、社会では根強く残っている。そのため、下位カーストを出自に持つ人は、ビジネス(就職)での信用やお金の面で不利な立場になり、イノベーションの機会失われやすい。ビジネス面でなく、カースト間での政治的な対立を生む場合もある。ESG・人権リスク低減として、グローバルで多様性を認めようとする動きに対し、インドでの規制と実態からかい離が甚だしくなってしまうと、投資資金を引き揚げる動きの呼び水になりかねない。そのため、投資とは直接結びつかないと思えるが、「カースト」に関する社会情勢の情報を追いかけておいて損はない。
個人投資家として、インドへの投資は投資信託または米国市場経由のETFがおすすめ
2025年5月現在では、インド株を個人が直接購入することや、また外貨預金やFX(外国為替証拠金取引)でインドの通貨に投資するのも難易度が高い。一方、インド株を組み込んだファンドの投資信託であれば購入しやすい。インドへの投資が可能な投資信託を10商品まとめた。NISAの成長投資枠であればいずれも対応しているので、証券会社や銀行で商品を探してみよう。
購入手数料は金融機関によって異なるので、普段取引している証券会社や銀行の商品説明ページで確認してほしい。
また、米国株取引として米ドル建でインドに投資できるETFもある。国内で米国株取引を多数扱っているネット証券3社での取り扱い状況をともに、下表にまとめた。
インドへ投資する米国ETF
取り扱い状況は日々変わるのと、これら以外にもインドへ投資できる米国ETFもあるので、色々調べてみてほしい。
インドはIMFの予測で2025年、2026年ともに世界トップラスの経済成長率の見込みがあり、人口ボーナス期が終わる2040年代までは投資リターンが得やすい状態が続くと見られる。
投資家にとって大きな魅力と機会であると言えるが、そこに絶対はない。
国内からだと投資信託への投資が主となるため、短期的な利益追求ではなく、長期的な視点で、インドの経済成長の波に乗っていく形、積立投資でのパフォーマンスを求めるのが良さげ。ゆえに、インドへの投資を今から始めても遅くはない。
半導体をはじめとしたグローバルサプライチェーンや、デジタルイノベーションの拠点としてのの立ち位置を獲得し始めたインドへの投資は、ビジネスパーソンとしての経済変革を直接感じるよい機会ともいえるだろう。
文/久我吉史