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「ホワイトハッカー」って何者?高まる社会的ニーズと求められるキャリアパス

2025.06.09

「ハック」と聞くと、多くの人は「システムへの不正アクセス」「ウイルスやマルウェアを使った情報漏洩」などのネガティブなイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。実際、“ハッカー”という言葉がニュースで報じられる際には、犯罪行為が大きく取り上げられることが多いものです。しかし、IT業界には「ホワイトハット・ハッカー」あるいは「エシカルハッカー」と呼ばれる人々がおり、攻撃手法を“防御”や“改善”に活かし、社会の安全や便利さを向上させるという大切な役割を担っています。

ホワイトハットが切り拓く新しい“ハック”のかたち

彼らは不正アクセスによって利益を得るのではなく、セキュリティ対策が不十分な企業や政府機関に協力し、システムの脆弱性を発見・報告し、解決策を提案することで報酬を得る存在です。

世界的には「バグバウンティプログラム」などの制度が浸透しており、貢献度に応じた報酬をホワイトハッカーに支払うことで、システムの安全性を高める仕組みが活発に機能しています。日本でも徐々にその取り組みが拡大し、情報漏洩やサイバー攻撃の脅威から社会を守るべく活躍している人々が増えてきました。

そこで今回は、ホワイトハッカーとはどのような人々なのか、具体的にどのような活動を行っているのか、そしてIT業界においてどのようなキャリアを築くことができるのかを、事例を交えながら解説していきます。サイバー攻撃の増加とともに需要が高まるホワイトハッカーの世界は、もしかすると“ハックで世界をちょっと面白く”する大きな可能性を秘めているかもしれません。

ホワイトハット・ハッカー(エシカルハッカー)とは何者か?

【悪意ではなく“善意”で脆弱性を探す】

ホワイトハッカー(エシカルハッカー)は、従来「ハッキング」という行為がもつ負のイメージを覆す存在として注目されています。彼らが行うのはシステムやウェブサイト、アプリケーション、ネットワークなどの脆弱性を探し出すことですが、その目的は攻撃による破壊行為や金銭詐取ではなく、あくまでも「セキュリティの向上」です。企業や行政機関などが提供するサービスにセキュリティ上の問題がないかをチェックし、見つかった不具合や問題点を報告して修正を促すことで、利用者や社会全体を守っています。

ホワイトハッカーが重視するのは「責任ある開示(Responsible Disclosure)」と呼ばれるプロセスです。脆弱性を発見した場合、いきなり公の場で暴露するのではなく、まずはシステムの所有者や管理者に知らせ、修正の機会を与えるのです。その上で必要に応じて、脆弱性の存在を公表し、同様の被害が拡大しないよう呼びかけます。こうした責任ある行動指針が、ホワイトハッカーとブラックハッカー(犯罪目的のハッカー)の大きな違いといえるでしょう。

【さまざまな「帽子」の色:ホワイト・グレー・ブラック】

ハッカーを「ホワイトハット」「ブラックハット」と呼ぶ表現はよく知られていますが、その中間に「グレーハット」という存在がいることも事実です。グレーハット・ハッカーは純粋な善意とは言えないまでも、積極的に犯罪を行うわけでもない。一種の中立的立場にいる人々とされています。場合によっては発見した脆弱性を公に報告せず、企業に対して報酬を要求したり、時にはブラックハット側に情報を流したりするケースもあり、その行動原理は一定ではありません。

一方、ホワイトハットは常に倫理観や法を遵守し、契約に基づき正当な調査を行う点が特徴です。彼らは、企業や機関から正式に依頼されたテスト環境で攻撃手法を用いるため、違法行為にはあたりません。こうした行動の正当性が社会的に認められ、報酬も公正な形で支払われるので、ホワイトハッカーに対する需要は近年ますます高まっています。

【エシカルハッキングの手法と活動内容】

ホワイトハッカーが行う活動の代表的なものとして「ペネトレーションテスト(侵入テスト)」が挙げられます。ペネトレーションテストは、実際に攻撃者の視点でシステムにアクセスしようと試み、想定されるあらゆる手段を使って脆弱性を洗い出すテストです。

この際、テストを依頼した企業や組織とは正式な契約を結んでおり、どの範囲までテストしてよいかが事前に決められています。システムダウンなど大きなトラブルを招かないように実施範囲や手順がしっかりと取り決められているのが特徴です。テスト結果は詳細なレポートにまとめられ、修正・改善ポイントとともに企業側に提出されます。

【ソースコード監査】

より詳細なセキュリティチェックが必要な場合、ホワイトハッカーは実際のソースコードを解析することがあります。ウェブアプリケーションやモバイルアプリなど、内部ロジックにセキュリティ上の穴がないかを直接確認することで、単なる操作レベルのチェックでは見つからない深刻な脆弱性を発見することができます。

プログラミング言語ごとに特徴的な脆弱性が存在するため、広範な言語を扱うスキルが求められます。たとえば、C/C++ならバッファオーバーフローやポインタ操作の危険性、Javaならオブジェクトのシリアライズやデシリアライズ時のセキュリティリスクなど、言語固有の知識が必要になります。ホワイトハッカーは最新の脆弱性情報にも常にアンテナを張り、日々アップデートされるソフトウェアやライブラリに対する攻撃手法も研究しています。

【フィッシング対策やソーシャルエンジニアリングの検証】

セキュリティ脅威は技術的な脆弱性だけではありません。社員やユーザーの不注意、ヒューマンエラーを突いた攻撃(ソーシャルエンジニアリング)も深刻な被害をもたらします。ホワイトハッカーは、企業の従業員を対象に、フィッシングメールや電話による詐欺行為がどの程度の確率で成功してしまうかを検証することがあります。これを踏まえて、実態に合わせた教育プログラムやセキュリティポリシーの改善を提案し、人為的ミスを起こりにくくするサポートを行うのです。

こうした検証もまた、契約や許可の範囲内で行われるため、従業員やユーザーのプライバシーを侵害しないよう十分に配慮がなされます。エシカルハッキングとは、法的・倫理的観点を遵守したうえで最大限の“攻撃シミュレーション”を実施し、組織のセキュリティレベルを底上げすることなのです。

実在するホワイトハッカーたち──ロールモデルの横顔

たとえば Microsoft 初の公式バグバウンティを立ち上げ、“バグバウンティの母”と呼ばれるケイティ・ムサリス(Katie Moussouris)、自動車業界に衝撃を与えた「Jeep Cherokee遠隔ハック」を実演したチャーリー・ミラー&クリス・ヴァラセク、1990年代から政府とハッカー文化の橋渡し役を務め、2022年にTwitterの深刻な脆弱性を内部告発したピーター “マッジ” ザットコといった世界的な第一人者がいます。

さらに、iPhoneの脱獄で知られ後にテスラやSpaceXの脆弱性を報告したジョージ・ホッツ、世界最大級の報奨金を獲得したバグクラウド四天王マーク・リッチフィールドらの功績も広く語り継がれています。そのほかにもクラウドフレアのセキュリティ責任者を務めたマーカスハッチンズは若き日にランサムウェア「ワナクライ」の拡散を止めたことで知られ、オンラインコミュニティに衝撃と称賛を与えました。

バグバウンティプログラムが支えるホワイトハッカーの活躍

【バグバウンティプログラムとは?】

バグバウンティプログラムとは、企業や組織が自社のシステムやサービスに対して脆弱性を報告してくれた研究者(ホワイトハッカー)に報奨金を支払う仕組みのことです。世界的に有名なSNSやIT企業の多くがこのプログラムを導入しており、脆弱性の重大度に応じて数百ドルから数万ドル、場合によってはそれ以上の金額が支払われることもあります。

この仕組みは以下のようなメリットをもたらします。

1. 多様な視点でのチェック

自社のセキュリティチームだけでなく、世界中のセキュリティ研究者が脆弱性を探してくれるため、多角的な検証が期待できる。

2. 早期発見・早期修正

公開後すぐにセキュリティホールが見つかれば、攻撃者が悪用する前に対策を講じることができる。

3. 研究者との良好な関係構築

ホワイトハッカーに正当な報酬を支払うことで、彼らと協力関係を築き、継続的にシステムの安全性を高められる。

【国内外での導入事例】

バグバウンティプログラムはアメリカの大手IT企業から広まりましたが、日本企業でも導入が進んでいます。たとえば、ソフトウェアやウェブサービスを提供する大手企業、ECサイト運営企業、金融機関などがバグバウンティを実施することで、セキュリティ向上を図ってきました。さらに、近年ではSNS企業やスタートアップでもバグバウンティを導入し、脆弱性報告を受け付けることで、サービスの安全性向上とイメージアップを狙う動きも見られます。

報奨金の支払い方法は企業によって異なり、直接現金で支払うケースもあれば、プログラム運営プラットフォーム経由で報酬が支払われることもあります。一部の企業ではランキング形式を採用し、優秀なホワイトハッカーを表彰するなど、ゲーミフィケーションの要素を取り入れているところもあります。

海外のホワイトハッカー事情

【セキュリティカンファレンスとコミュニティ】

アメリカをはじめとした海外のIT先進国では、ホワイトハッカー向けのセキュリティカンファレンスや勉強会が頻繁に開催されています。DEF CONやBlack Hatなどの著名なカンファレンスでは、最新の脆弱性や攻撃手法が数多く発表され、世界中のセキュリティ専門家が一堂に会します。大手企業もスポンサーとして参加し、新しい防御技術や製品をPRする場にもなっています。

また、オンラインのセキュリティコミュニティやフォーラムも盛んです。専門家同士が日々の研究内容や発見した脆弱性情報を共有し合うことで、セキュリティレベルの底上げを図っています。こうしたコミュニティが形成されている背景には、「オープンに議論することで強固なセキュリティを実現する」という考え方が根付いていることが挙げられるでしょう。

【政府による支援と法整備】

海外の一部の国や地域では、ホワイトハッカーの活動を公式に認め、奨励する動きも進んでいます。政府が主体となって「脆弱性報告制度」を整え、報告者が法的に保護される仕組みを整備したり、バグバウンティプログラムに協力したりするケースもあります。具体的には、米国国防総省がハッカーに向けて開催する「Hack the Pentagon」や「Hack the Air Force」など、政府機関自体がホワイトハッカーの力を借りてセキュリティレベルを引き上げようとする動きが代表例です。このような公的支援があることで、ホワイトハッカーは合法的に活動しやすくなり、企業や行政機関との橋渡しがスムーズに行われるのです。

【日本国内のエシカルハッキング動向】

日本には、サイバーセキュリティに関する研究・調査・通報を行う機関としてJPCERT/CC(一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター)があります。ここでは国内外からの脆弱性報告やサイバー攻撃情報を一元管理し、必要に応じて各組織に警告を発したり、対策を促したりします。ホワイトハッカーはこのような団体との連携を通じて、脆弱性を発見した際の報告経路を確保し、法的・倫理的なリスクを回避しながら社会に貢献できるのです。

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