
マスクは大丈夫でも、サングラスはなかなか受け入れられない日本人が多い。顔の表情を見る時、目が隠れていると、不安に感じてしまうのである。しかし伊藤医院眼科医の有田玲子医学博士は、目の健康面からサングラスの重要性を訴えている。「紫外線による肌の影響は常識ですが、目もとても重要なのです。目は日焼け止めや服を着られない丸裸の状態です。多くの方にサングラスの重要性について認識して欲しい」と注意を呼び掛けている。
紫外線対策の盲点、「目」
気象庁がまとめた日本国内の紫外線量の経年変化は年々増加し続けている。これまでは特に対策しなくても良かった紫外線対策が、今はやらなければならない必須課題になってきた。
紫外線の皮膚への影響については広く認識されているが、有田先生は目の紫外線対策も必須の課題だと訴える。紫外線の目へのダメージはすぐにわからない場合が多いが、10~20年後に、紫外線対策をしていない人はした人と較べ2倍、白内障のリスクが高くなると有田先生は言う。
「サングラスによる紫外線対策は重要です。紫外線による目の病気は白内障だけでなく翼状片や角膜炎などがあります。特に角膜炎は痛みが伴い、目が痛いと救急車で病院に搬送される方もいらっしゃいます。昼間、ビーチにいたり、漁師さんがサングラスで防御しなかった時におこります。また、白内障は外で野球やゴルフをしていた人に多い症状で、若い世代の方にも多いです」と教えてくれた。
有田先生の病院ではGWや連休明けなど、家族でアウトドアを過ごした後に、紫外線影響のドライアイや角膜炎で来院する患者が増えると言う。目の紫外線対策は夏の必須課題になってきた。
「目を守る文化」を浸透させる企業の戦略
メガネトップ代表取締役社長冨澤昌宏さんは紫外線対策サングラス事業戦略発表会で「眼鏡に関わる私達だからこそ、目を守る文化を浸透させたい」として、紫外線から目を守る活動を積極的に行うと言う。
「日本でサングラスを持っている人はわずか12.1%程度です。欧米では60~80%と高く、特に紫外線の多いオーストラリアでは政府が紫外線対策を行っていて、子どもの頃から積極的に使われています。サングラスはファッションアイテムではなく、目を守るものになっているのです」と訴える。
さらにメガネトップが全国展開している店舗・眼鏡市場では顧客に対して継続してアンケート調査を実施しているが、回答の中で、紫外線というワードが増えてきた。商品部 櫻井憲一郎さんによると、紫外線を回答に書き込んだ人は2020年から2.4倍も増えており、メガネを利用する人も、紫外線について関心を寄せていると分析している。
「私どもはお客様に最適なメガネを提供する、視生活のトータルアドバイザーです。紫外線から目を守るためには、日傘や帽子など、いろいろなアイテムがありますが、目に入る紫外線の量からも、サングラスは一番有効があります」と目を守るアイテムとしてのサングラスの有効性を訴えている。
同社では紫外線から目を守るレンズ「パーフェクトUVブロック」の機能を向上させて積極展開していく。紫外線ブロックを強化し、SPF50+、PA++++(注)としたレンズで、前から来る紫外線を99%ブロックし、レンズ表面から反射してくる紫外線を95%ブロックできる。
紫外線にはUVCとUVA、UVBの3種類があり、波長の長さによって異なる性質がある。UVCは地表に届かない紫外線なので、人に影響するのはUVAとBだが、どちらも目に与えるダメージは大きい。有田先生によると、特にAは目の奥深くまで浸透し、白内障や加齢黄斑変性や翼状片、紫外線角膜炎といった病気の原因となると言う。
「パーフェクトUVブロック」は従来、70%程度しかカットできていなかった400nmの紫外線を含めたすべての紫外線を99%以上カットできる。櫻井さんは、「400nmの紫外線は、天気や季節に関係なく、一年中肌の奥まで到達する紫外線です。最も身近に降り注いでいる紫外線でもあります。ぜひUV対策においては夏だけでなく一年中の対策としてこのレンズを利用して欲しい」と訴えた。
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調光レンズで掛け替えの面倒を無くす
櫻井さんは「サングラスの掛け替えが面倒」という人向けに、紫外線の量や太陽光のまぶしさにあわせてレンズカラーの濃度が変化する「調光レンズ」を紹介してくれた。紫外線の入らない屋内では普通の透明なメガネレンズだが、屋外に出るとレンズの色や濃さが変化する。
「紫外線で色が変わるレンズPhotocromic(フォトクロミック)と、紫外線だけでなく光でも色が変わるレンズActive Sun(アクティブ サン)の2タイプをそろえています。紫外線が当たり始めてから数十秒程度であらかじめ設定されているレンズの色や濃さが変化します」(櫻井さん)。
逆に紫外線が無い場所に行けば、元のクリアなレンズに戻るため、眼鏡を変える必要がなくなる。この調光レンズはカラーバリエーションも豊富で、ファッションアイテムとしても期待できそう。
深刻な子どもの目の健康を守る
眼科医の有田先生は特に紫外線対策は早ければ早い程、良いと言う。「米国ではベビー用サングラスもあるほどです。私のおすすめは小学校入学ぐらいからの目の紫外線対策です。目の中の水晶体というレンズは、子供の時は透明で柔らかく、紫外線が通化しやすいのです。このダメージが何十年後かに、目の健康リスクとなってしまいます」と言う。
また、子供は瞳孔が大きく、瞳が大きいので、特に紫外線など光の入り口が大人より大きいため、危険にさらされやすいことや、野外で活動する機会が長い点からも、子どもの紫外線対策は重要と教えてくれた。大人になってからの白内障等のリスク回避のためにも、子どもの目の紫外線対策も重要となりそう。メガネトップではこうした子供の目を守るCSRも実施している。
15歳以下のすべての子供を対象にしたキャンペーンで、通常6600円の追加料金が無料となる。「パーフェクトUVブロック」レンズを希望する場合は、眼鏡市場のアプリをダウンロードして、対象のクーポンを提示するだけ。新しくメガネを作らなくても、手持ちのメガネのレンズだけを交換したい場合も適用される。キャンペーンは6月30日まで。子どもも大人も、猛暑が予想される今こそ、目を守る対策を実施したい。
注:SPF、PAは皮膚に塗布するサンスクリーンの評価方法で通常、メガネレンズの評価方法に常用されないが、紫外線を防ぐ数値として表示している。
さいたま市伊藤医院
眼科医 医学博士 有田 玲子さん
ドライアイ研究の世界的第一人者として、80本以上の英文学術論文を発表。国際的なドライアイガイドラインの作成委員を複数回務め、日本のMGDガイドライン策定にも主要メンバーとして関わる。東京大学病院・慶應義塾大学病院では、ドライアイ・MGD専門外来を担当していた。診療・研究の最前線に立つ。現在は、内科医の父が院長を務めるさいたま市の伊藤医院にて、眼科診療に従事。
YouTubeチャンネル「眼科医 有田玲子先生のドライアイ診察室」
文/柿川鮎子