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「汗っかき」と20人に1人いるとされる「多汗症」の違いとは?

2025.06.08

今年も汗に悩む季節がやってきた。実は、「汗っかき」と思っていたら、「多汗症」を放置してしまっているケースが増えており、生活に支障が出ているまま我慢していることも少なくないそうだ。

果たして、「汗っかき」と「多汗症」の境界線とは?

今回は多汗症の専門医のもと、多汗症の概要や判断目安を解説した上で、医療機関の受診メリットや受診時期の目安を紹介する。

「汗っかき」と「多汗症」を分ける境界線

一般的に「多汗症」と呼ばれる疾患は、正式には「原発性局所多汗症」という。

国内のガイドライン(*1)においては、「温熱や精神的負荷の有無いかんに関わらず、日常生活に支障をきたす程の大量の発汗を生じる状態」と定義されてきる。

特にワキの下(腋窩)に生じる場合は「原発性腋窩多汗症」というが、日本における有病率は5.75%(*2)であり、20人に1人の割合とされる。

【取材協力】

室田 浩之氏
長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 皮膚病態学 教授
1995年長崎大学医学部卒業。2004年大阪大学皮膚科赴任、2018年長崎大学皮膚病態学分野教授。無汗症や多汗症(発汗異常症)の診療に力を注ぐとともに、2022年より厚生労働省「発汗異常を伴う稀少難治療性疾患の治療指針作成、疫学調査の研究班」班長

汗っかきを自覚している場合、原発性局所多汗症(以下、多汗症)とどのような点で異なるのか気になるものだ。室田医師は、汗っかきと多汗症の違いについて、次のように解説する。

「汗っかきは運動や気温の上昇、緊張など生理的な刺激で汗をかきやすい体質を指します。一方、多汗症は、そうした明確な原因がなくても、日常生活に支障をきたすほどの発汗が6ヶ月以上にわたり持続する状態です。特に左右対称に発汗し、発症が25歳未満、睡眠中は止まるといった特徴が診断の手がかりとなります。暑くない状況でも頻繁に大量の汗をかく場合は、多汗症の可能性を疑い、皮膚科などの医療機関に相談することをおすすめします」

「日本皮膚科学会 原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023」では、原発性局所多汗症の診断診断基準として、局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6ヶ月以上認められ、以下の6症状のうち2項目以上あてはまる場合を多汗症と診断する旨が示されている。

1.最初に症状がでるのが25歳以下であること
2.対称性に発汗がみられること
3.睡眠中は発汗が止まっていること
4.1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
5.家族歴がみられること
6.それらによって日常生活に支障をきたすこと

多汗症を放置するデメリット

2013 年の調査によれば、原発性局所多汗症の有病率は 12.8%と報告されているが、医療機関への受診率は 6.3%と低いことがわかっている(*2)。

多汗症を放置するとどのようなデメリットがあるのか。

「多汗症は、衣服の汚れやスマートフォンの操作、書類作業など日常生活に支障をきたすだけでなく、人との接触や会話において強いストレスを伴うことがあります。長期的には、自己肯定感の低下を招き、学業や仕事のパフォーマンス低下にもつながる可能性があります。また、発汗部位の皮膚トラブルが起こることもあるため、身体的なトラブルも無視できません」

医療機関を受診して多汗症と診断されるとどうなる?

汗っかきと自覚しており、多汗症を疑って医療機関を受診したら、多汗症と診断される可能性がある。そのメリットにはどんなことがあるだろうか。室田医師は次のように述べる。

「多汗症と診断されることで、保険適用の治療を受けることが可能になります。これまで治療法が限られていた時代とは異なり、現在では手汗やワキ汗に対する新しい塗り薬など、治療の選択肢が広がっており、より多くの患者さんが症状を改善できる時代となっています。

また、ご自身の汗の量が医学的に病的な状態であるかどうかを知ることで、かえって悩みや恥ずかしさから解放される方も少なくありません。受診を通じて、原因のわからないつらさに対して医療的な支援が得られることは、大きな安心感と生活の質の向上につながると期待されます」

多汗症の受診目安がわかる「多汗症前線2025」

多汗症の患者は、汗をかきやすい夏に増えるが、治療薬を塗っても汗になって流れるなど新たな悩みも増えるという。

そうした中、悪くなる前に受診してほしいとの思いから、科研製薬株式会社と一般財団法人 日本気象協会、株式会社JMDC、国立大学法人長崎大学の4者による産学連携で多汗症の受診時期の目安がわかる「多汗症前線」の作成が行われた。

この前線は、多汗症患者の受診(レセプト情報)と気象の2 つのビッグデータを集積・分析することで、受診のピークを予測し、2025年の春から夏にかけての最新の気象予報をもとに作成したもの。

科研製薬によれば、『前線』という親しみやすい形で、受診の目安となる日付を提示することで、多汗症の認知拡大や受診起点の創出、患者が新しい治療に踏み出すきっかけになることを目的としているという。

今年は、東京で6月15日、大阪で6月17日に多汗症の発症および悪化しやすいため、受診のタイミングとなる。

ただし、これらの日付はあくまで目安であり、気になる症状があれば早めに医療機関に相談することが推奨されている。

汗っかきと多汗症、どちらなのか気になっているまま夏を過ごすのは、ストレスだと思われる。日常生活に支障を生じている場合は、早めに受診しよう。

*1日本皮膚科学会ガイドライン:原発性局所多汗症診療ガイドライン2015 年改訂版
*2 Fujimoto T, et al. Epidemiological study and considerations of primary focal hyperhidrosis in Japan: from questionnaire analysis. J Dermatol. 2013; 40: 886–90.

「多汗症前線2025」

取材・文/石原亜香利

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