
各自治体は今、少子化対策として婚活支援に取り組んでいるが、そのうち鳥取県は「鳥取モデル」を確立し、成果を上げている自治体の一つだ。
2025年5月に鳥取砂丘で開催した大型マッチングイベントでは雨天にもかかわらず50組中、なんと28組がマッチングに至ったという。成功の秘訣を担当者に聞いた。
また、婚活コーディネーター荒木直美氏に今ドキの若者の婚活の成功パターンも教えてもらった。
鳥取県が婚活イベントを成功させた理由
鳥取県は、婚活事業に力を入れるべく、国内最大級のリアルな婚活イベント情報掲載数を誇るプラットフォーム「オミカレ」運営企業である株式会社オミカレと2024年3月に協定を結び、官民連携による施策を実施している。その一つが、2024年から数えて2回目となる「鳥取砂丘×マッチングイベント」だ。
県内在住者を中心に全国から20~30代の男性58人、女性50人が鳥取砂丘に集まり、108人中、28組がマッチング。プログラムの一つ、借り人競争では、「晩酌をしている人」「お弁当作りをする人」「海外旅行の経験者」などが書かれた紙が配られ、条件に合う異性を会場内で声掛けして探し、相合傘で20メートル先のゴールを目指した。
また通話型マッチングアプリ「オミカレ Live」を使ったアプローチタイムでは、男女別々のスペースに分かれ婚活コーディネーターの荒木氏を囲み、男性向け・女性向けの作戦会議を行い、アドバイスを参考に気になるお相手とフリータイムを過ごした。
「鳥取砂丘×マッチングイベント2025」のフリータイムの様子
果たして、イベントが成功した理由とは? 鳥取県 子育て王国課 出会い・結婚支援担当の長谷川和宏氏は次のように回答する。
【取材協力】
長谷川 和宏氏
鳥取県 子育て王国課 出会い・結婚支援担当
鳥取県という人口最小県から少子化対策に向けた様々なチャレンジを実行しており、令和5年度からは、鳥取県知事のマニュフェスト「カップル成立500組」の達成に向けた新しい取り組み「カップル倍増プロジェクト」を推進し、特に若い方の出会い支援や官民連携による新しい婚活支援サービスに注力している。
■『婚活』というワードは禁止!参加ハードルを下げた成功の一因
「こども家庭庁の調査(令和6年度「若者のライフデザインや出会いに関する意識調査」)によると、未婚者の45.6%が「自然に知り合う恋愛や結婚でないと嫌だ」と回答しています。また若い方の意見をヒアリングするなかでも、『婚活』という言葉はガツガツしているイメージのため敬遠され、婚活イベントに参加する上での障壁となっているとわかりました」
「そこで本イベント募集時には、広報媒体に『婚活』という表現を一切使用しないように注意しました。また若い方は“身バレ”のリスクを気にする傾向にあることから、100名超が参加する大規模イベントにすることで、1人1人との接触濃度が薄まり、そのリスク回避ができるのではないかと考えました。また一度に多くの方と出会える大型イベントに仕立てることで、タイパニーズに応えられるようにとの配慮もあります。
食や観光要素を加えることで、婚活目的を意識せずに済み、参加のハードルを極限まで下げるよう意識しました。そしてデジタルネイティブ世代は、対面で自分の意思を直接伝えることが心理的ハードルになっているのではないかとの仮説から、対面の前にマッチングアプリを使って思いを伝える流れにしました。
それらの積み重ねもあり、第2回も雨にもかかわらず100名以上が集まり、当日は『こんなにたくさんの同世代に会えるなんてすごい』といった声を聞くこともできました」
第2回目は今年5月に開催済。次回は、県西部の米子地方で2025年9月20日に実施を予定している。
■婚活コーディネーターが解説! イマドキの若者に刺さる人気婚活イベントとは?
「鳥取砂丘×マッチングイベント」の司会進行とコーディネーターを務めている荒木氏は、さまざまな婚活イベントを主催している。特に今の若者に刺さる人気婚活イベントのキーワードは「結婚後の生活がイメージできる」「共家事婚活」だという。
【取材協力】
荒木 直美氏
結婚応援事業アドバイザー/婚活コーディネーター
婚活コーディネーター歴25年。「婚活界の瞬間接着剤」の異名を持ち、成立させたカップル数は2500組以上。100以上の自治体と連携し、結婚支援現場でカップリングを成功に導くカリスマアドバイザー。
「婚活をする上では、価値観やライフスタイルのすり合わせが必要です。結婚後の生活イメージを想像できるのが、共家事婚活の特徴です。この婚活イベントのプログラムでは、4~5人のグループに分かれて、カレーやハンバーガーなどのテーマの料理を所要時間内に完成させます。積極的に動く人なのか、周りにあわせて協調性を大事にする人なのか、後片付けやゴミ捨て、カトラリーの準備など目立たない家事もやる人など、人間性が出ます。料理を通して『この人は仕事(目標)にどう取り組む人なのか?』が透けて見えるというわけです。
料理という共同作業を行うことで心の距離も縮まりやすく、完成した料理を食べる達成感も場の雰囲気を盛り上げます。食事タイムは家事分担についてや、住みたい場所、家、休日の過ごし方など運営側からトークテーマを用意し、結婚後の具体的な生活に踏み込んだ会話をしてもらいます。共家事婚活は結婚前に確認しておきたいことに早くたどりつける『ファスト婚活』です」
■30代の男女の婚活成功パターン
ところで、荒木氏はこれまで多数の婚活マッチングを成功させてきた。イマドキの30代男女の婚活の成功パターンとは?
「男性に依存しない、自立した女性が選ばれている気がします。最近の婚活男性のニーズとして『共働きできる相手と結婚したい』という希望があり、結婚相手を『共同経営者』と考えているケースが多いと思います。これは世の中の事情や経済的な側面から、生活の安定を求めている結果とみています。自分と対等に働いてくれる女性と結婚し、その分、家事分担は当たり前。子育てについても『共育て意識』をしっかり持っています。
そこで『仕事を続けたい女性』が『仕事を続けてほしい男性』とマッチングしているように感じます。逆に男性の年収頼みの婚活をしている女性は男性に敬遠され、難航しています。対等な異性を選ぶ『等価交換』が行われている現状を踏まえて婚活することが重要です」
令和の婚活では、マッチングアプリや婚活イベントなどさまざまな手段がある。参加ハードルが下がってきている婚活イベントに、ぜひ注目してみたい。そして「共同経営者」となるパートナー探しを意識することがポイントのようだ。ぜひ参考にしたい。
取材・文/石原亜香利