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ヘルシンキ空港が目指す次世代「ハブ空港」の役割とは?

2025.06.05

世界には数多くの「ハブ空港」がある。「ハブ空港」とは多くの路線が就航し、「乗り継ぎ」に利用されることも多い空港のことだ。有名なところとしてアラブ首長国連邦のドバイ国際空港やシンガポールのチャンギ空港が挙げられる。

ヘルシンキ空港(正式名称は「ヘルシンキ·ヴァンター国際空港」)もその一つ。日本から飛んだ場合北欧やバルト三国や他のヨーロッパなどの70以上の都市にトランジットできる。そのヘルシンキ空港では他のハブ空港とはまったく方向に改修したと聞き、その意図を取材した。

案内してくれたのはフィンランドのナショナルフラッグシップ「フィンエアー」のコミュニケーションマネージャー広報担当者であるマリ·カネルヴァ氏。

ターミナルの「一体化」により「乗り継ぎ時間」の短縮を実現

先ほど挙げたドバイ空港やシンガポール·チャンギ空港をはじめとして世界中のハブ空港のほとんどが「巨大さ」を誇る。ドバイ空港などはターミナルが3つあり、同じターミナル内でもショップに囲まれた通路を延々10分以上歩くこともある。「世界一」が好きなドバイらしい巨大空港だ。そしてシンガポール·チャンギ空港は7階分を貫いて落ちる「滝」や東京ドーム4分の1個分の広さを誇る「屋内植物園」など巨大なエンタメ施設の宝庫である。

だが現在改修中のヘルシンキ空港の方向性はまったく逆だ。2022年6月にはそれまで2つあったターミナルを1つにまとめたのだ。

この一体化により何が実現したのだろうか。カネルヴァ氏によると、フィンエアーでは現在、日本などからヘルシンキ空港を経由してシェンゲン圏内(国境での出入国審査なく行き来できるヨーロッパの国々)へ向かう際の「最短乗り継ぎ時間」をわずか45分に設定しているという。まさに「サクッと乗り継げる」という感覚だ。

ちなみに案内版には日本語の表記も。空港内には日本人スタッフもいるという。

「目先の利益」により「利用者の利便性」重視の長期戦略

そのように利便性を高めるからには何かを切り捨てなければいけない。だから世界中の「巨大」ハブ空港にあって、ヘルシンキ空港にはないものがある。それは「高級ブランドショップ」や「それらを扱うデューティーフリーの店」などが延々と連なる通路だ。

ヘルシンキ空港にもそういう店が建ち並ぶ場所はないことはないが、ほんの数十秒で通り過ぎてしまった。カネルヴァ氏によると「香水爆弾が苦手な方もいらっしゃいますから」と。

店の数が少なければ当然そこから空港に入っている利益は少なくなるだろう。だが他の空港が巨大化して「利益」を上げることを目指しているのに対して、ヘルシンキ空港は利用者の「利便性」を大切にしている。

もちろんその「利便性」に注目が集まれば利用者は増え、将来的には空港の利益も上がるという「計算」はあるのだろう。このように「目先の利益」にこだわらず「長い目」で物事を考えるのは、先ほどの「流行に左右されずいいものを長く使う」という「フィンランド人気質」に沿ったヴィジョンなのだろうと感じた。

日本から一番近いヨーロッパだからこその「乗り換え時間」重視

そこまで利用者の「利便性」に振ることができる理由もある。それはヘルシンキ空港が「日本や韓国からいちばん近いヨーロッパの空港」であるからだ。

直行便ではなく乗り継ぎでヨーロッパの各都市に向かう場合、同じトランジット系エアラインとして中東ベースのエミレーツやカタール航空が挙げられる。それらの乗り継ぎ拠点となるドバイ空港やドーハのハマド空港よりも日本から近いという「地の利」をさらに生かすために乗り換え時間を短縮するというのは、理にかなった戦略だ。

「利用者の快適性」を重視した待合室

ヘルシンキは「小さい空港」ではあるが「狭苦しい空港」ではない。「世界中どこにでもあるようなブランド店」のためのスペースはあまりとらないが、利用者にとって必要な場所であれば惜しげもなくとる。

そんな姿勢が見事に表れているのがカネルヴァ氏が「ヘルシンキ空港でいちばん好きな場所」だという「Aukio(オーキオ)」という名の待合スペース。フィンランド語で「広場」という意味だという。

そこは空港によくある「無数のベンチが並べ、待つのに疲れた人たちがうんざりしている無機質な空間」ではない。複数人で寝転がれるほど広いソファーがいくつかゆったりと間隔をとって並べられている。その空間をぐるっと囲むようにして、壁の高さ4~6メートルくらいのところにフィンランドの自然の映像が音とともに映し出さる。座り心地や寝心地がいいだけでなく、目や耳からもリラックスできる「癒し空間」になっている。

天井も高く開放的な空間

こういうものがあることによって「スペース効率」は低くなる。だがそれよりも「居心地がいい空間」を提供することを優先。「利用者第一」の姿勢が徹底している。

フィンランド国内のどこで採取した映像と音楽を流しているのかもわかる。次の旅先選びの参考になる

ラウンジも「すべては利用者のために」という姿勢

次にビジネスクラスなどの客が利用できるフィンエアーのラウンジはヘルシンキ空港内で4つあるが、そのすべてを取材して感心したのは椅子や一人掛けソファーの種類の豊富さだ。心地よいと思う椅子は人それぞれ。またそのときの疲労度や気分によっても変わってくる。

提供する側からしたら少ない種類のものを絞ったほうが効率的である。だがすべての客が「居心地のいい場所」を見つけられるように様々な種類の椅子やソファーを提供しているのだ。

実用的だが丸みがあって遊び心も感じられる。北欧らしい一人用のソファー。

「自然との調和」を考え「採光」も重視している

また様々なシチュエーションに合った空間も提供している。

静かな語らいにピッタリの照明を落としたスペース。間接照明の「傘」はムーミンの形という遊び心も。

パソコンを広げやすいスペース。さらに集中したい人向けの個室もある。

さらにリラックスしたい人にはプレミアムラウンジ内のひとつにフィンランドらしい「隠し部屋」が用意されている。サウナ室だ。男女共用。利用の際に体を隠すバスタオルも提供される。

「巨大化」というトレンドと逆行する「小さなハブ空港」。「先入観」にとらわれず客が本当に求めるものを提供する「おもてなし」。取材を通して感じたのはヘルシンキ空港にしてもフィンエアーにしても「右へ倣え」ではなく、「正しいと思うことを自分たちで考えて実現する」という姿勢だ。「大量生産の時代」ではなく「多様性の時代」だからこそ、それは大切だと感じた。

取材協力/

フィンエアー/Finnair https://www.finnair.com/jp-ja

文・写真/柳沢有紀夫
世界約115ヵ国350名の会員を擁する現地在住日本人ライター集団「海外書き人クラブ」の創設者兼お世話係。『値段から世界が見える』(朝日新書)などのお堅い本から、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)などのお笑いまで著書多数。オーストラリア在住

写真/田所優季
旅行写真家、トラベル·ライフスタイルライター、ファッションデザイナー。

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