
心臓発作から回復後にしてはいけないこと
心臓発作から回復した後に、座位行動の時間が長いほど発作再発や死亡リスクが高く、座位行動を運動または睡眠に置き換えることでそのリスクが抑制される可能性のあることが明らかになった。米コロンビア大学医療センターのKeith Diaz氏らの研究によるもので、詳細は「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に5月19日掲載された。
この研究は、2016~2020年に急性冠症候群(心筋梗塞や不安定狭心症)の症状のために同センター救急外来で治療を受けた成人患者を対象に実施された。退院後30日間にわたり、手首装着型の加速度計を用いて、座位行動や身体活動、および睡眠の時間を測定。また退院1年後に、電話調査や医療記録、死亡記録によって転帰が確認された。解析対象者数は609人(平均年齢62歳〔範囲21~96〕、男性52%)で、1日の座位時間は平均13.6±1.8時間だった。
1年間の追跡で8.2%の患者に何らかのイベント(急性冠症候群の再発または新たな心血管疾患の発症および死亡)の発生が確認された。対象者全体を座位行動時間の三分位に基づき3群に分け、第1三分位群(座位行動時間が短い下位3分の1)を基準にイベント発生リスクを比較すると、第3三分位群(座位行動時間が長い上位3分の1)の人は約2.6倍リスクが高かった。詳しくは、第2三分位群がハザード比(HR)0.95(95%信頼区間0.37~2.40)、第3三分位群がHR2.58(同1.11~6.03)であって、座位行動時間が長いほどハイリスクとなる傾向が示された(傾向性P値=0.011)。
統計学的手法を駆使した検討により、30分間の座位行動をやめて中~高強度の身体活動をしたとすると、イベントリスクが61%低下することが分かった(HR0.39〔0.16~0.96〕)。また、軽度の身体活動に置き換えた場合にも、リスクが51%低下(HR0.49〔0.32~0.75〕)すると計算された。さらに、睡眠に置き換えた場合にも、14%のリスク低下(HR0.86〔0.78~0.95〕)が予測された。
Diaz氏はこの研究の背景として、「現在の治療ガイドラインは、心臓発作後の患者に対して、運動を奨励することに重点を置いている。それに対してわれわれは、座位時間の長さそのものが、心血管リスクを押し上げる可能性があるのではないかと考えた」と語っている。そして得られた結果を基に、「心臓発作を経験した後になにもマラソンを始めることはなく、座る時間を減らし体を動かしたり睡眠を少し増やしたりするだけで大きな違いが生まれるようだ」と総括。「この結果を基に、医療専門家が、より柔軟で個別化されたアプローチを採用するように変化していくのではないか」と付け加えている。
同氏はまた、座位行動を睡眠に置き換えることでもリスクが低下する可能性が示されたことについて、「この結果には驚いた。睡眠は心身の回復に欠かせず、心臓発作のような深刻な健康問題の後には特に重要となるのではないか」と推察している。(HealthDay News 2025年5月20日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.ahajournals.org/doi/abs/10.1161/CIRCOUTCOMES.124.011644
Press Release
https://newsroom.heart.org/news/after-cardiac-event-people-who-regularly-sit-for-too-long-had-higher-risk-of-another-event
構成/DIME編集部
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