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公認会計士とBリーガーの〝二刀流〟岡田優介が40歳で引退、次なる挑戦は「福祉事業」

2025.06.03

 2015年に発足し、16-17シーズンからリーグ戦が始まったBリーグも9シーズン目が終了。24-25シーズンは琉球ゴールデンキングスと宇都宮ブレックスの間でB1ファイナルが行われ、宇都宮がタイトルを獲得した。

 その傍らで、Bリーグ発足前から活躍し、2013年に発足した日本バスケットボール選手会初代会長を務めた岡田優介さん(B3・香川ファイブアローズ)が40歳で現役キャリアに区切りをつけた。

青学大時代に勉強を始め、5年後の2010年に超難関資格合格!

 1984年・東京生まれの彼は、土浦日大高校から青山学院大学国際政治学部へ進学。当時からバスケと学業の二刀流を突き進み、大学3年から超難関の公認会計士試験受験を決意。2007年にトヨタ自動車アルバルクに加入した後も猛勉強を続けて、2010年に試験合格という偉業を達成したのである。

「最初のきっかけは大学生協で資格試験のパンフレットを手に取ったことでした。基本的には通信教育でコツコツと勉強し、4年後には短答式で合格。5年目に論文式も合格して、資格を取得するに至りました。

 ただ、トヨタ時代はバスケの活動もハードにやっていたので、練習後には時間を作って勉強するという日々を過ごしていました。休日は10時間くらい机に向かっていた時もあったかな(苦笑)。

 移動時間がもったいなくて、トヨタの体育館や社員用の宿泊施設に泊まったりもした。ガムシャラに取り組んだ末に大きな成果を得ることができました」と岡田さんは20代の飽くなきチャレンジを振り返る。

現役ラストシーズンは香川で10番を背負った(岡田優介公式Xから引用)

日本バスケットボール選手会創設、飲食業にも進出。八面六臂の活躍

 この頃の岡田さんは、日本バスケットボールリーグ(JBL)でつねに優勝争いを演じ、日本代表にも招集されていた。2010年のアジア大会(広州)にも参戦し、タイトルは逃したものの、4位入賞の原動力になった。選手としてトップレベルを維持し、超難関資格試験に合格するというのは、本当に離れ業。これほどまでにしっかりと”二足の草鞋”を履けるアスリートは滅多にいないだろう。

 彼のチャレンジングなキャリアはその後も続いた。会計士としての実務を学ぶため、2011年2月から新日本有限責任監査法人に非常勤で勤務。2013年9月には選手会を創設。初代会長としてプレーヤーの環境整備に尽力したのである。

 さらには、ほぼ同時期の2012年末から「渋谷Pizza & Sports DIME」というスポーツバーの経営に着手。約1年後にはお笑いコンビ「麒麟」の田村裕さん、「大西ライオン」の大西功二さんと共同オーナーという形でプロ3×3チーム「DIME(=現TOKYO DIME)」を設立。スクール事業にも参入するなど、アグレッシブな展開を進めていったというから驚きだ。

「その頃は『バスケを広めたい』という思いが強くて、何か方策はないかと考えた時に飲食業が頭に浮かんだんです。正直、大して稼げるとも思っていなかったし、『赤字にならなければいい』くらいの感覚でした。一番は「バスケ好きな人、集まれ」という感覚。面白いことができる場を作りたいという気持ちでスタートしました」と本人も言う。

 結局、同店は6年半後の2019年5月に居抜きで売却。飲食業からは離れ、3×3のプロチームの運営と子供たちの指導にフォーカスすることになった。

TOKYO DIMEの公式HP

多彩な副業を手掛けながらも、本業のバスケも複数クラブで活躍!

 発足から11年が経過した今はかなり組織的になり、事務員や営業スタッフも雇用し、3~5人の専従スタッフが常駐。しっかりとした経営基盤もできつつあるのだ。

 そういった活動は、これまでの岡田さんにとってはあくまで「副業」。本業はあくまでプロバスケ選手であり、チームの勝利と自身のレベルアップにまい進していた。

 トヨタの後、彼は2014年にはつくばロボッツへ移籍し、2015年には広島ドラゴンフライズに所属。2015年には千葉ジェッツに赴き、Bリーグ元年の16-17シーズンはB1・京都ハンナリーズに在籍。バスケ界にとって歴史的な時期を最高峰リーグで過ごしたのだ。

 そしてコロナ禍の2020年にはアースフレンズ東京Zに移籍。翌2021年にはアルティーリ千葉へ所属を変え、3シーズンプレーした。そのクラブを2024年5月に退団し、現役ラストの今季はB3・香川で完全燃焼しようと決意。単身で四国に赴いて、B2昇格を果たすべく最後の最後まで粘ったが、結果的にはそれを果たせないまま引退することになったという。

「僕の現役ラストマッチは4月28日のB3プレーオフ準々決勝・アルビレックスBB戦でした。この試合に勝って準決勝進出を目指していましたが、61対78で敗れ、昇格の道は途絶えてしまいました。

 僕の出場時間は5分37秒だったんですが、やはり印象的だったのは、第4クオーターの終盤でした。残り2分18秒からコートに立って、3ポイントを1本決め、最後には自ら得たファイルからフリースローを2本決めた。結果的には負けましたけど、この奮闘ぶりを見たファンの方から『最後まで岡田さんらしさを見せてもらえた』という声をいただけて、僕自身も言い終わり方になったのかなと思いました。

 正直言うと、自分のバスケ生活は『いつもあと一歩、目標に届かない人生』だったんですけど、それもある意味、自分らしいのかなと。やるべきことはやったかなと思えましたね」と本人も少なからず達成感を覚えた様子だ。

現役ラストの対戦相手・新潟には長年の盟友・五十嵐圭選手がいた(公式Xから引用)

5月からはTOKYO DIMEの運営、会計士業務も。今後は教育・社会福祉に進出へ

 アスリートの選手寿命が伸びているのは事実だが、運動量が多く、消耗度も激しいバスケ界で40代まで現役を続けるのは容易なことではない。そういう中、「まだやれる」という評価を受けながら、コートを去るというのはなかなかできることではない。しかも、引退を今年2月に発表し、ラスト3か月のカウントダウンをファンと共有できた。そういった幕の引き方も見事だと言えるだろう。

 岡田さんにはすでに事業があるため、セカンドキャリアへの移行もスムーズだ。当面は「TOKYO DIME」の運営やスクール事業を手掛けつつ、教育事業や社会福祉事業にも着手していきたいと意向を持っている。

「今、子供たちや若い選手の育成、キャリア支援に力を入れておけば、10年後、20年後のバスケ界、日本という国に何らかの還元ができるかもしれない。それはすごく重要なことだなと考えているんです。

 社会福祉事業に関しても、僕の息子が障害を抱えていて、そういう子供たちの居場所を作りたいという思いが前々からあったんです。いくつか知り合いのネットワークがあるので、それを通して運動教室を手がけることから始めて、いずれは自分で放課後等デイサービスの施設運営することも検討してきます。そういう活動から社会とつながりを持ってもらえれば、教育の一環にもなると思うので、すごくやりがいがありますね」と岡田さんは今後のビジョンの一端を打ち明ける。

岡田さんのコートでの雄姿がもう見られないのは残念だ(公式Xから引用)

 同時並行で、公認会計士としての業務も再稼働し始めている。14年前に加わった新日本有限責任監査法人に今も席があり、5月からは少しずつオフィスに出向いて一部業務を請け負っているというのだ。

 ちょうどこの時期は6月決算前の繁忙期。会計士は決算書の一部分だけを担当するといった働き方が可能で、他の仕事との掛け持ちもしやすいのが特徴という。

「少しずつ業務に携わることでブランクを埋められますし、自分にできる範囲で仕事をこなせるのも有難いですね。バスケ界を見ても、Bリーグやクラブがマネーの専門家である会計士の力を必要としているでしょうし、アリーナ周りの専門的な会計作業も必要になってくる。そういうところで自分が活躍できればいい恩返しになりますよね。せっかく手に職をつけたので、それを最大限生かして、バスケ界に貢献していければいいですね」と岡田さんは爽やかな笑顔をのぞかせた。

 それ以外にも他競技関係者とのネットワーク作りやスタートアップ投資にも積極的に取り組んでいく構えだというから、彼のアグレッシブさはとどまるところを知らない。

 こういう人材がいることで、バスケ界やスポーツの地位向上、価値の拡大につながるのは間違いない。彼には長いアスリート経験を生かしながら、セカンドキャリアのロールモデルを築いていってほしいところ。今後の多彩な活躍から目が離せない。

今季限りでプロバスケットボール選手のキャリアに終止符を打った岡田優介さん、「次の20年はビジネスで社会貢献したい」と意気込む(筆者撮影)

取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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