〝生きがい格差〟時代をどう生きる？10代の7割以上が「生きがいを感じる瞬間がある」、40代は？

2025.05.30

不安定な情勢の時こそ、日々の幸福や生き甲斐を感じることが活力になってくれるはずだ。一方で幸福や生き甲斐を感じにくい世の中だと思っている人も少なくないだろう。ソニー生命保険は、新プロジェクト「生きがいってなんだろう」をスタートし、全国1400人規模の「生きがい実態調査」を実施した。その調査では、生き甲斐が「ない・わからない」と8割以上の人が回答したという。

生き甲斐があると実感している人は約6割

生き甲斐を感じる瞬間は人生に大切かという質問では、「そう思う」（59.9％）と「ややそう思う」（33.4％）を合わせると全体の93.3％が大切だと考えていた。ただ、生き甲斐を感じる瞬間については61.1％は「ある」と回答したが、「ない」（16.8％）と「わからない」（22.1％）を合わせると約4割が実感できていないと答えている。

男女別で大きな差はないが、年代別では10代は74.0％が生きがいが「ある」と答えているのに対して、40代では51.5と約半数だった。生きがいを人生で大切だとほとんどの人が思っているにもかかわらず、実際には生きがいを実感できているのが約6割にとどまっていた。

生き甲斐のトップ3は食事、旅行、温泉

■生きがいが「ある」人が生きがいを感じる瞬間（性別・年代別トップ10）
　生きがいを感じる瞬間はどんなときか？（複数回答）

生き甲斐を感じる瞬間があると答えた人855人にどんなことか質問すると、「美味しいものを食べているとき」（47.4％）、「旅行」（46.0％）、「温泉・銭湯・リラクゼーション・スパに行くとき」（25.4％）、「音楽を聴いているとき」（23.5％）、「パートナーと話すとき・連絡を取り合うとき」（23.3％）が上位になった。

男女別では、男性は「旅行」、女性は「美味しいものを食べているとき」が1位だった。2位以下の回答では、男性はパートナーとの関わりで生き甲斐を感じる瞬間が上位にランクインしたのに対して、女性は推し活や子どもとの関わりで生きがいを感じる瞬間が上位だった。年代別では、10代は「美味しいものを食べているとき」が1位だったが、2位が「推し活をしているとき」で、「SNS」と答えた人も3人にひとりと多い比率だった。

生き甲斐の活動費は年間10万円!?

■直近1年間で生きがいを感じるための活動にかけている費用、活動する頻度は？

生き甲斐を継続させるためにしているでは「金銭的に無理をしない」（34.7％）がトップだったが、実際に生き甲斐の費用はどのぐらいになるかという質問では、年間平均は10万7289円だった。生き甲斐活動を行う回数は年間で平均153.5回で、1年間で平均すると1週間に3回程度活動して1回の費用は 699円という結果になった。

生き甲斐が「ない・わからない」人も8割以上が日常の幸せを実感

生き甲斐が「ない・わからない」と回答した人でも日常の中でささやかな幸せを感じることがあるか聞くと「美味しいものを食べているとき」や「テレビ・映画鑑賞」、「旅行」などを合計81.7％の人が挙げており、ささやかな幸福をちゃんと感じていた。具体的な意見では「部活が終わったあと、部室でみんなとダラダラ話しているとき」や「子どもと他愛もない話をしているとき」など日常の一コマを挙げている人が多かったという。ほかにも「普段そっけない猫が甘えてきたとき（20代男性）」や「スーパーでの仕事中、会計金額が777円などのゾロ目になったとき（40代女性）」というコメントもあり、生き甲斐が「ない・わからない」と思いつつも何気ない日常にちゃんと幸福を感じているようだ。

“生きがいスルー”を防ぐためのアプローチ

今回の調査結果を踏まえて、メンタルケア・コンサルタントの大美賀直子氏は、次のようにコメントしている。

「生きがいと聞くとその言葉の重みから「素晴らしいものじゃなきゃいけない」と捉えがちです。でも実際は、日常にある楽しみや喜びを発見することが生きがいにつながります。今回の調査でも、生きがいが「ある」と答えた人にとっての生きがいとして、日常生活のささやかな瞬間が多くあげられましたが、この価値観はとても今っぽいですね。ワークライフバランスが重視されたり、コロナ禍を経て人と接することの大切さを社会全体で実感したりしたことで、大きな夢だけが生きがいでなく、自分の気持ちの豊かさや心地よさが生きがいだと気付いたのではないでしょうか。ですから、夢や目標など人生を懸ける壮大なものだけが生きがいと決めつけてしまうのはもったいない。身近にある小さな生きがいに気付き、楽しんでほしいですね。

では“生きがいスルー”をしないようにするにはどうしたらよいのでしょう？　生きがいに気付けるようになるためには、日々の暮らしにアンテナを張ることが重要です。日々の暮らしに慣れてしまうと、新しい情報や小さな感動を見逃しがちになるので、常に“気付く姿勢”を持つことが“生きがいスルー”を防ぐカギとなります。他者との対話は生きがいの発見において重要です。家族や親しい友人に限らず、SNSや職場での何げない会話からも、意外な刺激や発想の転換を得ることができます。また、頑張り過ぎて余裕がない人は、あれもこれもと全部をこなすのではなく、できたことに目を向けてみましょう。ゆとりが生まれ、小さな幸せに気付けるようになれるかもしれません。そのほかにも「布団にくるまれて安心した」などといった日常の実感を、毎日の中で確認するだけでも“今ある幸せ”に気付くきっかけになります。日々の暮らしの中で生まれる気持ちを書き出してみることもいいですね。大事なことは、「ない」ことに意識を向けるのではなく、「ある」ものに気付くこと。ネガティブな言葉（「どうせ」など）を使ったり他者と比べたりすると、生きがいを見いだしにくいので、ポジティブな言葉に言い換えて、ささやかな幸せを探してみるのもいいですね。また、通勤ルートを変えてみたり、部屋の模様替えをしてみたりするなど、何げない日常の中にいつもと違う行動を取り入れてみてもいいですね。新たな生きがいに気付くかもしれません。