結婚、出産、転職、子どもの進学などライフスタイルの変化によって、「今の住まいを変えたい」と考える人は多そうだ。最近の首都圏では、持ち家を売却して新たな持ち家を購入する「住み替え」も増えているという。住み替えによって生活の満足度に変化があった人も多そうだが、中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム『cowcamo(カウカモ)』を運営するツクルバは、首都圏に持ち家がある男女1009人に「住み替えのイメージ・目的」に関する調査を実施して、その内容を発表した。それによると「住み替え」の認知度は約8割だったが、具体的な経験や知識に結びついている人は少数という状況が見えてきた。
約8割が「住み替え」という言葉を認知
「住み替え」について知っているかという質問では、「よく知っている(36.2%)」と「何となく知っている(48.5%)」を合わせて約8割が認知していると回答した。これは家族構成の変化や働き方の多様化など暮らしの見直しを促すライフスタイルの変化が影響していると思われるが、住宅関連メディアや広告でも「住み替え」というワードが使われる機会が増えているので、自然と目に入る状況が生まれているのも一因だろう。ただよく知っている』と答えたのは全体の4割未満で、認知が必ずしも具体的な知識や経験には結びついていないと思われる。
「住み替え」は肯定派と慎重派が拮抗!?
「住み替え(持ち家を売却して新居を購入)にどのようなイメージがあるか」という質問では、「ライフステージに合わせて住環境を最適化できる(34.4%)」が最多だった。続いて『費用がかかり、経済的な負担が大きい(30.2%)』、『引っ越しや新生活の準備が大変そう(30.2%)』という回答が多かった。上位の回答では「前向きな変化」と「現実的な障壁」が拮抗しているように見え、住み替えにポジティブなイメージを持つ一方で、理想を実現するまでの負担も意識されており、住み替えを「夢」として捉えつつも「現実の選択肢」として意識するとハードルを感じる人が多いようだ。
「住み替え」の未経験者が約8割!
「住み替え(持ち家を売却して新居を購入)を行った経験」については、「ある」が16.4%しかいなかった。「ない」という回答者では、「ない(実施予定だが、まだ行っていない)(8.1%)」、「ない(興味はあるが行ったことはない)(22.4%)」、「ない(興味がないまたはくわしく知らない)(53.1%)」という内訳だった。「住み替え」未経験が8割以上を占めていたが、「ある」、「実施予定」、「興味はある」を合わせると46.9%になり、実行に移せていない人も含めると「住み替え」に関与・関心がある人は全体の半数近くはいたという。
「興味がない・くわしく知らない」が半数以上になっていたが、前設問の「なんとなく知っている」と回答した人の割合と重なるので、知識不足や選択肢としての実感のなさが「住み替え」に対するハードルを上げていると思われる。
「住み替え(持ち家を売却して新居を購入)を行った経験」が「ない」と回答した人に「住み替え(持ち家を売却して新居を購入)を行わない理由」について質問すると、「今の暮らしに満足している(46.8%)」が最多で、「住宅ローンや資金計画への不安(33.2%)」、「住み替えに伴う手続きが面倒(24.4%)」が続いた。約半数が「変化の必要性を感じていない」ことを理由にしているが、「資金の不安」や「手続きの煩雑さ」など実務的なハードルを感じている人も多そうだ。「希望に合う物件が見つからない」や「住み替えの進め方がわからない」といった回答もあるので、情報や支援の不足が「住み替え」への行動を躊躇する要因になっていると思われる。
ちなみに「住み替え」経験が「ある」人は、「住み替え(持ち家を売却して新居を購入)を行った回数」について、「1回(66.7%)」、「2回(22.4%)」、「3回(6.1%)」、「4回(3.0%)」、「5回(1.2%)」、「それ以上(0.6%)」と回答しており、33.2%が「住み替え」を複数経験しており、5回またはそれ以上の「住み替え」をしていると答えた人もいた。
「住み替え」で9割以上が生活に満足
「住み替え(持ち家を売却して新居を購入)を行った背景」についての質問では、「家族構成の変化への対応(41.2%)」、「勤務先・通学先などへの交通の利便性向上(35.2%)」、「間取りやサイズを変更したい(17.0%)」という結果になった。ライフステージの変化に伴う「住環境の再構築」が動機の中心にある人が多いようだ。「老後の準備」と回答した人も一定数いるので、将来を見据えた住宅設計や立地選定の重要性もありそうだ。
実際に「住み替え」をして「目的は達成したか」については、『達成した(57.0%)』と『ある程度達成した(39.4%)』を合わせると9割以上が達成していると考えており、満足度は高いようだ。
「住み替え」前に想定してなかったことは?
「住み替え」によって「住み替え前」に想定していなかった変化についての質問では、「通勤・通学などの日常生活」、「趣味や余暇」、「家族間の関係性」などによい変化が見られたと回答した人が多く、暮らしの質の向上に結びついていると思われる。住み替えのイメージについての設問では、「費用がかかり、経済的な負担が大きい(30.2%)」が2位だったが、「住み替え」を経験した人では資産の状況を意識せず住み替えた人でも資産の状況が「悪くなった(5.5%)」と感じている人もいるが、「良くなった(41.2%)」と感じている人が多かったようだ。「住み替え」における資産状況の悪化はイメージ先行で、考えて行動すれば資産状況も不測の自体に陥ることは少ないという結果になっている。
「住み替え(持ち家を売却して新居を購入)による生活の満足度の変化」については、「とても満足している」と「やや満足している」と合わせて9割以上だった。物理的な利便性に加えて、精神的な好変化を感じることができている点は、住み替えの本質が「場所・空間」だけでなく「暮らし」にあることを再認識させる結果だったといえる。
今回の調査では、「住み替え」という言葉自体の認知度は高いが、実際に「住み替え」を行った人は約2割にとどまっていた。多くの人が「興味はあるが一歩を踏み出せない」状態のように見えるが、背景には今の暮らしに対して一定の満足感があり、資金や手続きに対する不安感や情報不足もあることがうかがえる。一方で「住み替え」経験者は、目的の達成率と生活の満足度が9割を超えており、さまざまな要素で想定以上のポジティブな変化があったという意見もあり、「住み替え」が「人生を豊かにする選択」となる可能性も感じられる結果になった。今後は、「住み替え」に関するポジティブな具体的情報や資金計画や売買仲介の支援などが拡充されれば、より「住み替え」が進んでいくだろう。
■住み替えのイメージ・目的に関する調査概要
調査期間:2025年4月4日~2025年4月5日
調査方法:PRIZMAによるインターネット調査
調査人数:1009人
調査対象:調査回答時に首都圏に住む男女と回答したモニター
調査元:ツクルバ
モニター提供元:PRIZMAリサーチ
https://tsukuruba.com/news/2611
構成/KUMU