DIME MAGAZINE
「農芸化学」は、動植物や微生物の有用な物質や食品、健康効果などを研究する学問分野。食品産業の発展を支える研究が進む中、農芸化学分野において注目の実用的価値ある技術的業績を表彰する「農芸化学技術賞」が公益社団法人 日本農芸化学会 2025年度札幌大会の中で表彰された。
企業からも受賞者が出ており、中でも興味深い研究結果を発表していたのが、サントリーウエルネスとハウス食品グループ本社。この2社の研究成果を見ていこう。
サントリーウエルネスのロコモ予防栄養成分「ケルセチン」の研究
サントリーウエルネス株式会社 生命科学研究所は、「ロコモティブシンドローム対策を目指したロコモアの開発研究」のテーマで評価されて受賞。
老化に伴い、運動器の障害により移動機能の低下をきたした状態を意味する「ロコモティブシンドローム」が懸念されている。そこで、脚の機能維持が重要になってくるが、同社はポリフェノールの一種「ケルセチン」が筋機能に寄与することに着目した研究を実施し、「ロコモア」という脚の筋肉とひざ関節にダブルでアプローチする機能性表示食品を開発した。
細胞実験およびヒト試験により、ケルセチンの筋肉および脚の機能に対する有効性を明らかにした。
今回の受賞に関して、同研究所の担当者は次のようにインタビューに答える。
――今回の農芸化学技術賞受賞について、何が評価の大きなポイントなったと思われますか？
「これまでの高齢化社会の課題に向き合う当社の姿勢や、運動器の健康に関する30年以上の開発研究の歴史などが評価されたととらえています。ケルセチンの骨格筋機能に対するメカニズム研究からヒト試験におけるエビデンス取得、さらにはケルセチン配糖体を含むアンセリン、グルコサミン塩酸塩およびコンドロイチン硫酸の4成分の組み合わせによる歩行機能に対するヒト試験におけるエビデンス、これらの研究成果を活用した『ロコモア』の開発を行ってきました」（サントリーウエルネス 担当者）
――今回の受賞を受け、今後の展望をお聞かせください。
「研究の成果を生かし、2013年にロコモアを販売開始し、現在では脚対策サプリメントでシェアNo.1の商品となっています。また2024年にはケルセチン配糖体を増量した『脚の筋肉の柔軟性』を表示する機能性表示食品としてリニューアルしたロコモアを販売いたしました。健康的な毎日を送るには、サプリメントに加え、歩行や運動などの生活習慣を組み合わせることが大切です。
今後もサプリメントと生活習慣を軸に、運動器の機能維持に貢献する研究開発に真摯に取り組み、より健康的な世界の実現を目指して努力していきます」（サントリーウエルネス 担当者）
「ロコモア」商品イメージ
高齢化が進む中、脚の健康を長く維持できる未来が開ける意味で注目の研究といえる。
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