
黄色い桶でお馴染みの「ケロリン」が今年生誕100年ということで、100年のあゆみをまとめた「ケロリン百年物語」が出版された。
ところで、ケロリンて、ナニ?
ケロリンと聞くと幼い頃から銭湯で出迎えてくれるケロリン桶がすぐに頭に浮かぶ。あの黄色い桶にはなぜか安心感があり、心が癒される。そんなケロリン桶も今やハンズ、ヴィレッジヴァンガードなどでも目にすることができる人気アイテムだ。
もはやいつの時代も私たちのそばに寄り添ってくれるケロリン桶だが、風呂桶のケロリンは知っていてもケロリンそのものが何なのか今までちゃんと理解していなかった気がする。
ケロリンて、ナニ?
「ケロリンとは1925年に開発された解熱鎮痛剤です。西洋から輸入したアスピリンと胃にやさしく鎮痛効果を高める桂皮をブレンドした薬なんです」
そう話してくれたのは、ケロリンを製造販売する富山めぐみ製薬の経営戦略室長の笹山敬輔さん。
「効き目が早く、「飲めば痛みがケロリと治る」ことから「ケロリン」と命名されました。今も常備薬として利用されている家庭も多く、我が家の常備薬として親子3代助けられているというお客様もいらっしゃいます」
富山の薬売りが全国に届けたケロリンは昭和の時代を迎えようとしていた大正14年、革命的な薬として登場し大ヒット。
作家・坂口安吾の随筆には「知らないうちに妻がケロリンを飲んでいて驚いた」という逸話があったり、国民的映画『男はつらいよ』の寅さんのトランクにもケロリンが入っていたという。
そんなケロリンの薬のパッケージは今なおレトロな雰囲気だが、パッケージにもこだわりがある。
「描かれている男女は大正時代のモダンボーイ・モダンガールで、当時としては最先端のデザインだったと思います。大正モダニズムのデザインを今に伝えるもので、過去にはリニューアルを検討したこともありますが、この絵柄に愛着をもっていただいている方もいるためこれからも大切にしていきたいです」
そんなケロリン、もともとは全国を回って販売する置き薬という位置付けだったが、時代の流れから当時急増していた薬局への販路拡大への移行を目指した。
そこで生まれたのが、アレだった。
「商品名の知名度を上げるために銭湯の桶を広告媒体として採用したのが、ケロリン桶の始まりになります」
当時は高度成長期真っただ中。東京オリンピック前年の1963年(昭和38年)に「湯桶にケロリンの広告を出しませんか?」と持ち掛けられ、第一号は東京温泉(東京駅八重洲口)に置かれたという。
以降、ケロリン桶は全国の銭湯、温泉、ゴルフ場などの浴室へと波及していった。
さらにケロリン桶にはこんな秘密も。
「すぐに壊れないよう頑丈にするために一般的な桶よりも厚みを持たせ、ケロリンの文字はプラスチックの中に埋めて水場ではがれにくい仕様になっています」
「また、ケロリン桶には関東サイズと関西サイズがあり、かけ湯文化のある関西向けは若干小さめに作られているんです」
ちなみに関東版は重さ360g 直径225mm 高さ115mm。
関西版は重さ260g 直径210mm 高さ100mm。
――ケロリン桶のこれまでの販売個数は?
「正確な数字は不明ですが、およそ250万個以上となります。現在でも1年に4万個~5万個の製造・販売をおこなっています」
――現在もケロリン桶が人気の理由はなんだと思われますか?
「長く続けたことで銭湯の定番アイテムになり、昭和レトロの象徴になったことが大きいと思います。どこか懐かしく、日本人の郷愁を誘うアイテムになっているのではないでしょうか」
老舗による積極的コラボの理由とドラえもんコラボへの想い
幸せの黄色い風呂桶とも言えるケロリン桶は徐々に全国に拡まり、90年代以降は有名な雑貨店や富山県内のサービスエリアにも登場。
さらに近年は映画『テルマエ・ロマエ』にも登場したり、マンガ『ケロロ軍曹』やプロ野球球団とのコラボも展開するなど、多ジャンルとのコラボにかなり積極的だが、その理由とはなんなのか?
「医薬品『ケロリン』は長くご愛用いただいていますが、若い人の認知度を上げていくことが課題です。アニメやゲームなどのキャラクターとのコラボは、ケロリンを知っていただく機会になると考えています」
――特にサブカル系コラボの印象が強いですが?
「サブカルチャーとの好相性は弊社としても驚きかつ発見だったのですが、製薬メーカーとしてのイメージを損なわない(=健康イメージを損なわない)ことには注意しています」
「また、富山県・銭湯・温泉にゆかりがあることや解熱鎮痛薬ケロリンのこれからのターゲットとなる若い女性に人気の企業・キャラクターと積極的にコラボしていきたいと考えております」
――これまでのコラボで印象に残っているものは?
「初めてのコラボである「ケロロ×ケロリン桶」は発表当初から反響が大きく、予約開始と同時にすぐに完売しました。コラボ桶の人気から、あらためてケロリン桶の商品価値に気づかされました」
「それと、埼玉西武ライオンズ様から直接コラボの打診があったことも印象に残っています。イイフロの日(11月26日)に開催されるファン感謝デーの目玉商品として採用いただき、その日のうちに完売されたそうです」
――今後、コラボしてみたいジャンルは?
「本社のある富山県出身の漫画家、藤子・F・不二雄先生の『ドラえもん』とのコラボ桶はいつか実現させたいです」
ケロリン桶の後押しもあり、今年生誕100年を迎えた解熱鎮痛薬ケロリン。
3月には100周年プロジェクトの第1弾として公式ECサイトをオープン。
「ケロリン百年物語」の出版から、世界最大級のアニメの祭典「AnimeJapan 2025」に特設ブースの出展も行った。
今後も100周年を記念した数多くのイベントが開催される予定だ。
「今後は全国でのサウナイベントへの協賛や都心商業施設でのPOPUPストアの企画を進めています。自社ECショップのスタートを皮切りに、次の100年に向けて医薬品・ケロリングッズのさらなる展開をすすめていく予定です」
――製薬会社としてのこれからの展望は?
「昔は「富山のくすり」が人々の生活に欠かせないものでした。今は全国的な認知度があるものの生活に密着しているとは言えません。「富山のくすり」が再び人々の身近なものになるように研究開発やPR活動をしていきたいと思います」
取材協力
富山めぐみ製薬
ケロリンファン倶楽部
ケロリンファン倶楽部公式Instagram @kerorin_fanclub
文/太田ポーシャ