
日本経済の動向を示す代表的な経済指標として知られるTOPIX(東証株価指数)は、昭和43年(1968年)1月4日の時価総額を100として、その後の時価総額を指数化したものだ。
構成銘柄は主に東証プライム市場に上場している約1700銘柄。時価総額や流動性の高い企業が選ばれており、毎年1回見直しが行なわれる。
そんなTOPIXを構成する企業で、3月期決算の企業がほぼ発表を終えたことで、三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から分析リポートが到着したので、概要をお伝えする。
2024年度の実績は1ケタながら増収増益での着地、投資家の関心は2025年度の会社予想に
東証株価指数(TOPIX)を構成する3月期決算企業(金融とソフトバンクグループを除く)のうち、5月16日までに2024年度の決算発表を終えた企業は99%を超え、決算発表はほぼ終了した。
2024年度の実績は、前年度比で売上高は4.4%増、営業利益は7.3%増、経常利益は3.9%増、純利益は2.5%増となり、1ケタながらも増収増益での着地となっている(図表1)。
ただ、年明け以降、関税の引き上げなどトランプ米政権が進める政策の影響により、世界経済や金融市場の先行き不透明感が強まっており、投資家の関心は、2024年度の実績よりも、企業自身による2025年度の業績予想にあるように思われる。
そこで、以下、業績予想を公表している企業について、入手できるデータを用いて集計を行ない、その結果を確認していきたい。
■2025年度の業績予想は減収減益の見方に、米関税政策の影響もあって控えめな数字となった
集計の対象とした企業は、TOPIXを構成する3月期決算企業(金融とソフトバンクグループを除く)で、集計の結果、企業自身による2025年度の業績予想は、前年度比で売上高が0.2%減、営業利益は1.8%減、経常利益は2.8%減、純利益は3.3%減と、減収減益の見方が示された(図表2)。
トランプ関税による先行き不透明感が強いなかで、かなり控えめな会社予想となっている。
なお、今回の決算では、2025年度の業績予想について、トランプ関税の影響を織り込んだ企業もあれば、織り込まなかった企業もあり、また、そもそも業績予想の公表自体を見送った企業もあった。
関税政策は、トランプ米大統領次第で内容が大きく変わり得るため、景気や業績への影響を正確に把握することは困難であり、各企業の対応が分かれたのも、やむを得ないと思われる。
■市場は現状程度の予想は想定済み、ただ予想が控えめな分、関税進展で株高の余地は大きい
なお、今回の決算発表は4月下旬から本格化したが、その少し前の4月1日に日銀が公表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)をみると、輸出企業(大企業・製造業)が2025年度の事業計画の前提として想定している為替レートは、ドル円が平均で1ドル=147円35銭、ユーロ円が同じく1ユーロ=158円05銭だった。
円相場の変動は業績予想の修正要因となるため、これらの水準を参考にしておくことも大切と考える。
2025年度の業績予想は、かなり控えめなものとなったが、トランプ関税による先行き不透明感が強いなかでの予想でもあることから、市場もある程度想定済みで、あえて売り材料にはなりにくいと思われる。
ただ、当初の予想が控えめな分、トランプ関税に広く引き下げの動きが明確になれば、業績予想の上方修正を織り込む形で株価が上昇する余地は大きいとみている。
◎個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
構成/清水眞希