
シュローダー・インベストメント・マネジメントから、同社エコノミスト・チームによる四半期マクロ経済見通し(2025年4-6月期)が発表された。本稿では、同社リリースをベースに、その概要をお伝えする。
基本シナリオとその展開について
■アメリカ
米国経済については、堅調な見通しを維持している。純貿易と在庫の変動が2025年1-3月期のGDP成長率を歪めたが、内需の基調には大幅な変化はみられなかったことから、2025年の米国経済成長率見通しは1.7%としている。
2026年の米国経済成長率については、トランプ政権が財政刺激策を実施することが見込まれることから、2.4%に上昇すると考えられる。
関税の上昇は、2025年および2026年のインフレ率を3%以上に押し上げる可能性が高いとみており、米連邦準備制度理事会(FRB)は2025年の間は政策金利を据え置く見通しとしている。
ただし、インフレ圧力が弱まっていくことや、FRB議長が交代することから、最終的には2026年に計0.5%の利下げを実施し、政策金利は4%に引き下げられると見込んでいる。
■ユーロ圏
ドイツの財政刺激策の発表を受け、ユーロ圏経済見通しを大きく変更している。貿易を巡る不透明感が重しとなった場合、経済活動は短期的に軟調な局面を迎える可能性がある。
このことに加え、インフレ率の改善がみられることから、欧州中央銀行(ECB)は中銀預金金利を2%まで引き下げると考えられる。ただし、財政刺激策の効果が表面化し始めると、ユーロ圏の経済成長率は2025年の1%から2026年には2%に加速すると推測している。
■イギリス
イングランド銀行(BOE)は8月に0.25%の利下げを実施、政策金利は4%に引き下げられると見通している。
ただし、この背景には、エネルギー価格の低下によりインフレ圧力が緩和していることがある。供給制約というファンダメンタルズのストーリーは、経済成長の低迷基調は維持されるものの、インフレは粘着性を示し、政策金利は相対的に高い水準で推移する可能性が高いことを意味する。
市場が見込む水準まで金利水準が低下するためには、労働市場の大幅な悪化が必要であると考える。
■エマージング諸国
関税による中国経済への打撃は想定内のものとなると考えられる。輸出サイクルは横ばいとなる可能性が高く、短期的には根本的な国内の脆弱性に拍車がかかることが見込まれる。
悲観的な見方ばかりではなく、2026年に向けて財政政策に支えられることから、先行指標はいくぶんの景気回復を示唆している。ただし、政府の目標を達成するためには景気刺激策をさらに強化する必要があり、中国の経済成長率は4%程度と考えている。
その他のエマージング諸国については、国内要因の比重が高い経済であるため、相対的に堅調に推移することが見込まれる。
インドは多くの条件が揃ってきており、政策金利の引き下げが経済成長の回復を下支えすると考える。
対照的に、ブラジルは制限的な金融政策が依然として経済活動の逆風となっているが、インフレのピークが見えてきたことから、金利は年末までに低下し始める可能性があるとみている。
今後想定される他のシナリオ
基本シナリオ以外で最も可能性の高いリスクシナリオとして、「グローバルの財政悪化」を想定している。
当シナリオでは、2025年7-9月期にトランプ大統領が大規模な財政政策を実施して債券市場は混乱。国債利回りが急上昇して、世界的に利回り上昇が見込まれる、デフレーション方向のシナリオを想定している。
次いで可能性が高いのは、デフレーション方向のシナリオの「相互関税」で、2025年7-9月期に相互関税が再開され、各国が報復的に関税を課すシナリオが考えられる。
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構成/清水眞希