
夏、間近。
昨今は猛暑日が急増し、ビジネスパーソンの通勤・勤務の支障となっています。
酷暑を乗り切るため、ハンディファンや空調服などが人気を呼んでいますが、ビジネスパーソンが通勤や業務で使うには、音や見た目など、使用をためらう方も多かったはず。
しかし、2025年夏、大注目のウエアラブルサーモデバイスが誕生しました。それが、ウエアラブルクーラー「REON POCKET PRO」なのです。
なぜソニーが暑熱対策商品を売るの? 実は2019年から進化を続ける「REON POCKET」シリーズ
「ソニーの暑熱対策商品?」と、ちょっと不思議に思ったかもしれません。
筆者もモノ情報誌などでデジタルデバイスを追い続けていますが、ソニーと暑熱対策商品がイコールで結びつかなかったひとり。
そんな疑問を抱いていたところ、ソニーサーモテクノロジーの伊藤社長からの説明で納得しました。
発表会で説明する、ソニーサーモテクノロジー株式会社 代表取締役社長 伊藤健二さん
ソニーは、「電子機器が発生する熱の冷却問題に長年取り組んできた」(伊藤社長)のです。
伊藤社長は、2006年にソニーグループへ入社、カメラの商品設計に従事してきました。時代はフルHDから4Kへと映像コンテンツの解像度が進化する頃。多くのデジタルデバイスが映像処理などで発生する熱対策の必要に迫られていました。
デジタルカメラも例外では無く、モバイルデバイスという限られたサイズでの熱処理に工夫を凝らしたといいます。
その知見を生かし、伊藤社長は社内新規事業としてREON事業を立ち上げました。
その同機はシンプル。「通勤で暑かったんです。そこで、涼しくしてくれるデバイスが欲しくて開発しました」(伊藤社長)
〝必要は発明の母〟とはまさに、このことですね。
そして、2019年にクラウドファンディングを通してウエアラブルサーモデバイスを発売。その成功が事業化をうながし、2020年には一般販売を行っています。
「REON POCKET 1」と命名された製品は、2020年7月1日に発売開始し、ほぼ24時間内で初回出荷分の1万台を完売する大ヒットとなりました。
以降、海外販売を開始するなどの実績を重ね、2025年5月20日、同シリーズのハイエンドモデルとして、「REON POCKET PRO(レオンポケット プロ)」が発売されることになりました。
服の下に着ても目立たない「REON POCKET」シリーズ
さて、「REON POCKET(レオンポケット)」シリーズについて、改めて確認してみましょう。
レオンポケットは首もとに装着することで、本体に触れる体表面を直接冷やしたり、温めることができる、ウエアラブルサーモスデバイスです。
サーモモジュールにペルチェ素子を搭載し、通電することにより片側が冷えて、反対側が温まります。「COOL」状態で作動すると、温まった方をファンで排熱し、冷却を維持する仕組みになっています。
放熱ファンによる排熱と聞くと、音が気になるかもしれません。しかし、ファン自体がスリムでコンパクトな上、動作音はとても静かです。
冷却面積2倍、吸熱性能、駆動時間が最大約2倍の「プロ」
それでは、今回新登場したレオンポケット プロの仕様を確認してみましょう。
レオンポケット プロはその名の通り、ビジネスでの用途を考慮して開発されています。そのため、冷却面積や吸熱性能、駆動時間の進化を主な目標に設計されました。
プロと併売される、従来モデルの「REON POCKET 5(レオンポケット ファイブ)」と比較してみます。
レオンポケット ファイブの本体サイズは、幅約55×厚さ23×高さ117mmで、質量は約116gとなっています。
一方、レオンポケット プロの本体サイズは、幅約58×厚さ36×高さ134mmで、質量は約194gです。
ファイブは小型軽量を目指しているため、厚みや質量を抑えていますが、プロは冷却面積で2倍、吸熱性能と駆動時間で最大約2倍の性能差を達成するために、下の模式図のようにサーモモジュール(模式図でブルーに塗られた板状のセット)を2枚装着。ファンや冷却ユニット、バッテリーも大型サイズとしているのです。
冷却性能を追求したプロは、2枚のサーモモジュールで強弱をつけながら交互に駆動。冷却を持続させることに成功しました。さらに、カーブデザインと2枚のサーモモジュールは装着する方の体型に寄らず、冷却面に触れやすく改良されています。
下の画像では、バッテリーやモジュール、ファンなどをファイブとプロで比較しています。サイズの違いは一目瞭然でしょう。
ファンが大型になったプロですが、ファイブに比べて約50%動作音を低減。これは、同一風量の場合、大型ファンは回転数を抑えやすいためです。
以上のような進化の結果、冷却面積はプロが2倍、最大吸熱量も約2倍。最大駆動時間はファイブの約17時間からプロでは約34時間と、こちらも倍の性能を発揮します。
もちろん、服の下に装着しても目立たないレオンポケットの特徴を、プロも継承しています。
本体から出る熱を首裏に逃がし冷却を維持する「エアフローパーツ」は、ショートサイズとロングサイズに切り替えられます。
スーツなどビジネスシーンでは、首や背中の形状に合わせて襟の高さまで伸びたロングサイズを選択。目立たず効率的な排気が可能です。
首元に追従するネックバンドは、ご覧のように柔軟性を向上。先端部にシリコン製のバンドサポーターを搭載し、装着した時の肌触りを改良しています。
そして、プロユースらしい特徴として、スマホが使えない環境でも、基本操作が本体でもできるように物理ボタンを追加しています。
また、本体装着を検知するセンサー類が新たに追加され、本体の着脱によるCOOL(冷却)/WARM(温熱)を自動で開始/停止する、AUTO START/STOPの精度が向上しています。
もちろん、従来のレオンポケット同様、スマホでの制御も可能です。
これからもレオンポケットは進化する
ソニーサーモテクノロジーの伊藤社長は、プロの市場投入により法人ユースの拡大を期待できるとしています。特に、倉庫や自動車などエンジニアリングの場での利用機会の拡大を想定しているそうです。
また、2021年にデサント、パーリーゲイツとゴルフ関連で協業をしたことがあり、今後は他企業との連携も視野に入れていると言います。
夏到来で、ビジネスシーンに「涼しさ」を求める声がますます高まると予想されます。
レオンポケット プロを実際に装着したところ、その〝ひんやり感〟は快適そのもの。ビジネスパーソンは必見でしょう。
また、冷却に加え、温熱も可能。一年を通して活躍するレオンポケット プロと、シリーズの進化に期待しましょう。
【参考】REON POCKET
取材・文/中馬幹弘