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いらすとやが大活躍!「不公平な取引」をリアルに解説する公正取引委員会のサイトが面白い

2025.05.29

筆者は今年に入り、新しい趣味を見つけた。それは「公正取引委員会の公式サイトのチェック」である。

これが、本当に面白い! 他人にも勧められる素晴らしい趣味と言える。

「またこのライターは何言ってんだ!?」と思われそうだが、実は公正取引委員会のサイトほど「日本に蔓延る不正」について詳しい辞書はない。そう、このサイトはまさに「不正取引辞典」なのだ。

これに目を通せば、「現代日本の経済の仕組み」にも自ずと精通してくるだろう。

カルテル行為の実例を分かりやすく解説してくれる!

日本人なら、誰しもが中学生の時に「カルテルの禁止」を学ぶはずだ。

もっとも、カルテルはトラストやコンツェルンと共に「社会科の暗記科目」と捉えられている側面もある。ただ暗記するための勉強法は、「なぜカルテルがいけないのか?」という根本的な理由を深く学ぶ機会を奪ってしまう。実際、「カルテルは法律で禁止されている行為」という知識から深く掘り下げないまま成人を迎えてしまった人は多いのではないか。

同業者が集まって特定の商品やサービスの価格を作為的に調整する行為は、自由競争を阻害する原因になってしまう。したがって、近代民主主義国家では軒並みカルテルは違法行為と規定されている。日本の場合、表に現れていないカルテルを監視し、必要に応じて警告を出すのは公正取引委員会の役目である。

たとえば、最近でもこのようなことがあった。「東京都内の高級ホテル複数社による価格調整の疑い」である。

都内15のホテル(いずれも有名な高級宿泊施設)が、定期的に会合を開いて「毎月の客室稼働率」「客室平均単価」「販売可能な客室1室当たりの収益」などの重要な情報を交換していたという。この行為は「独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し同法第3条の規定に違反するおそれがある」として、公正取引委員会が15社に対して警告を発した。今年5月8日のことである。

興味深いのは、公正取引委員会のサイトで公開されている「本件の概要」。イラスト素材サービス『いらすとや』を利用して作った分かりやすい図解が掲載されているのだ。

Googleの独占行為について

官公庁の資料とは、殆どの場合細かい文字の羅列のような「分かりにくい代物」である。

それは資料の内容をより分かりやすくまとめた概要にも当てはまる。「概要」のはずなのに、話の複雑さは寸分も変わっていない……ということも。公正取引委員会は、そのような「日本の官公庁の悪癖」をよく知っているようだ。

そんな「公正取引委員会資料作成班の本気」が発揮された一件がある。Google対する排除措置命令だ。

これは簡単に説明すると、GoogleがAndroil OSのスマホを製造する企業に対して自社製アプリのプリインストールや、目立つ位置にそれを配置することを強要していたという出来事だ。

公正取引委員会は、Google LLCに対し、本日、独占禁止法の規定に基づき排除措置命令を行った。

本件は、Google LLCが、独占禁止法第19条(不公正な取引方法第12項(拘束条件付取引))の規定に違反する行為を行っているものである。

公正取引委員会は、令和5年10月23日に、本件の審査の開始等を公表した。また、公正取引委員会は、本件の審査の過程で、本件と同様のGoogle LLCの行為に対する調査を行った海外競争当局との間で情報交換を行った。

という説明がある。「本件の審査の過程で、本件と同様のGoogle LLCの行為に対する調査を行った海外競争当局との間で情報交換を行った」そうだから、公正取引委員会はこの件に関しては恐るべきエネルギーを注いでいることが窺える。

そして、この件に関しても公正取引委員会は非常に分かりやすい概要を公開している。

いらすとやの素材をまさにフル活用し、「何が問題だったのか」を解説している。これなら人生経験の少ない中学生……いや、もしかしたら高学年の小学生でも内容を理解できるかもしれない。

「官公庁の一次ソース」をチェックする習慣を身に着ける

以上が、筆者の新しい道楽である。

公正取引委員会のサイトは、企業が時折犯してしまう不公平な取引の模様と、委員会がそれをいかに是正しているかという様子を十二分に伝えてくれている。これはまさに「自宅でできる社会勉強」だ。

また、公正取引委員会のサイトをこまめにチェックすることで「官公庁の一次ソースを活用する」という行為を習得できるようになる。これは、ネットで拡散される偽情報に惑わされないためのスキルでもある。

「首相がこう発言した」「厚労省がこのような決定を下した」というような話題に対して、明確な一次情報を示しながら議論を進められる人は決して多くない。過激に脚色されたまとめ掲示板のURLを出して「石破首相がこんなことを言っている」とXにポストする人ならたくさんいるが……。

今現在起きている事象を正しく把握するためには、一次ソースが欠かせない。それを読み解き、妥当な解釈ができるようになるための訓練場として、公正取引委員会のサイトはこれ以上ないほど最適なのだ。

【参考】
(令和7年5月8日)ホテルの運営事業者に対する警告等について-公正取引委員会
(令和7年4月15日)Google LLCに対する排除措置命令について-公正取引委員会

文/澤田真一

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