小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

ポップコーン政治とは何か?エンタメ化する「トランプ劇場」が支持される理由

2025.05.29

 米ニューヨークで映画館に入ったことがあるのだが、店内で売られているドリンクやポップコーンの大きさは目をみはるばかりであった。常連客らしき人物のポップコーンの食べ方も堂に入っていて、前屈みに座り紙袋に大量に入ったポップコーンを1つずつ親指で弾いて口に運んでいたりもしていた。

 アメリカ人が観客として楽しむエンターテインメントには欠かせないとも言えるポップコーンなのだが、現在のアメリカでは“ポップコーン政治”という用語が目につくようになっているようだ。その背景にはもちろんトランプ大統領の存在があるのだが、新たな研究では大衆迎合主義のポピュリズムは“ポップコーン政治”の一形態であることが主張されている。

 選挙戦での演説では暗殺未遂に見舞われ、政権発足後は“トランプ関税”に“停戦交渉”とニュースが絶えず、まさにエンターテインメントであるかのようなトランプ政権は一般的にポピュリズムであると言われ、トランプ大統領はポピュリストであると見なされている。

「大衆主義者」や「庶民主義者」と訳されるポピュリストは、大衆の意見や感情に寄り添い扇動することで自分の政治的な目標を達成しようとする人物である。具体的には既成の権力構造やエリート層を批判し、庶民の味方の側に立つことで支持を集めて政策を実現しようとする政治家のことだ。

 当然だが政治家は興味深い人物であるほうが支持を集めやすいが、かといってすべての政治家がポピュリストになるわけではなく、利害に基づき特定の組織やクラスターに訴求して票を獲得するタイプの政治家も少なくない。

 それでも現在、アメリカをはじめ多くの国でポピュリストの指導者が大きな支持を得ている。ポピュリストの人気の理由はどこにあるのだろうか。

ポピュリスト政治家のエンターテインメント性

 オランダ・アムステルダム自由大学の研究チームが今年4月に「British Journal of Psychology」で発表した研究では、ポピュリストの政治家はエンターテインメント性が高いほど支持を集めていることが示唆されている。

 研究チームはアメリカ人を対象とした4つの研究で、人々が指導者をどれだけ刺激的、魅力的、あるいは注目を集める人物とみなすかが、支持率を予測する有力な要因であることを突き止めた。特にドナルド・トランプやバーニー・サンダースのようなポピュリスト指導者への支持は、ジョー・バイデンやミット・ロムニーのような非ポピュリスト指導者への支持よりも強かったのである。この研究結果は、感情的な経験が政治的嗜好をどのように形作るかについての新たな知見を提供するものになっている。

 ポピュリスト支持において、エンターテイメント性があると見なされることがどの程度重要なのかを調査するため、研究チームは1802人のアメリカ人を対象に調査を4件実施した。

 調査ではたとえば、トランプ支持者とバイデン支持者に対して、自分が支持するリーダーをどれだけ面白いと思ったか、また、そのリーダーをどれだけ支持し続けているかを評価してもらったり、架空の無名の政治家によるポピュリスト演説または非ポピュリスト演説をAIに読み上げさせて聴き、内容を評価してもらうことなどが含まれていた。

 収集したデータを分析した結果、4つの調査すべてにおいて、エンターテインメント性の評価は一貫して政治的支持の増加を予測し、この効果はポピュリストの人物においてより強かったことが判明した。

架空の人物でもポピュリスト的演説の評価が高い

 4つの調査のうちの3つは実在の政治家を評価対象に設定しているが、AIによる演説読み上げは架空の政治家によるもので、人物について予備知識がなくともポピュリストのエンターティンメント性が支持を集めることが示唆されることになった。

 つまり無名の政治家であっても、腐敗したエリート層が人々を抑圧しようとするせいで社会問題が生まれているとするポピュリスト的演説のほうが、社会問題の解決には協力が必要だと力説する非ポピュリスト的演説よりも、演説のエンターテインメント性に基づいて支持を表明する傾向が強いのである。

 さらにもう一つの重要な発見は、エリートへの不信感や「一般庶民」への強い帰属意識といったポピュリスト的な態度が、エンターテイメント性という経路を通じてポピュリスト指導者への支持を予測していたことだ。言い換えれば、既にポピュリスト的な見解を持つ人々は、ポピュリスト指導者をよりエンターテイメント性があると感じ、その結果、彼らを支持する可能性が高まっているのである。この媒介効果は、非ポピュリスト指導者には見られなかった。

「すべての政治家は、国民から面白いと見なされることである程度の恩恵を受けますが、ポピュリスト政治家は非ポピュリスト政治家よりもこの恩恵をより強く受けます」と研究チームのファン・プロイエン氏は心理学系メディア「PsyPost」で説明している。

過大評価に繋がる可能性がある“ポップコーン政治”

「これは、ポピュリズムが一種の“ポップコーン政治”であることを示唆しています。ポピュリスト候補者の支持者は、面白いと見なされる可能性のある表面的な特徴に基づいて候補者を選ぶ傾向が強く、その結果、提案された政策の実際の内容が損なわれる可能性があるのです」(プロイエン氏)

“ポップコーン政治”ではエンターテイメント性の高いポピュリスト政治家に支持が集まるが、それは過大評価である可能性も高いことになる。

 今回の研究はアメリカ人のみを対象に行っており、ポピュリスト運動は国によって異なり、アメリカの政治枠組みにはうまく当てはまらない形で左翼と右翼の思想が融合することもあるため文化的制約もある。今後の研究では、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アジアなど、他の政治体制においても同様のエンターテインメント性の効果が見られるのかどうかを確かめることが必要とされている。

“トランプ劇場”は思わずポップコーンを片手に眺めてしまうかもしれないが、ポピュリスト政治家を過大評価しかねない“ポップコーン政治”の落し穴にはじゅうぶんに注意しなければならない。

※研究論文
https://bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bjop.12791

※参考記事
https://www.psypost.org/new-study-suggests-entertainment-is-key-to-populist-political-success/

文/仲田しんじ

なぜ、人は米を買い占めるのか?「令和のコメ騒動」が起こる本当の理由

日々の生活の中ではさまざまな不安に直面することもあり、その際には落ち着いて対処することが求められてくるが、数ある不安の中でもどの不安が最もメンタルに悪影響を及ぼ...

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2025年4月16日(水) 発売

DIME最新号は、「名探偵コナン 熱狂の舞台裏」。長野県警全面協力!劇場版最新作の舞台の新聖地とは?長野県警トリオ〟をあしらったトリプルジッパーバッグの付録付!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。