
「ついにやった!」。日産ファン、モータースポーツファンの感慨は海よりも深い。そう5月18日(日)に東京お台場で開催された「フォーミュラE東京大会」で日産が三度目のポールポジションにして涙の母国初優勝を遂げたのだから! ちなみに今回は17日(土)第8戦、翌18日(日)第9戦のダブルヘッダー開催。なにはともあれ、本稿は日産推しでお届けします!
悔しい土曜があったからこそ燃えに燃えた!
日産に優勝旗をもたらしたドライバーは英国出身のオリバー・ローランド選手(下写真)だ。東京E-PRIX開催時点でフォーミュラEのドライバーズポイントランキング首位、日産もチームランキング2位と「TOKYOで勝てなきゃ噓でしょ!」というくらいの絶好調で東京に上陸した。
しかし17日の土曜日開催の第8戦、雨の東京には魔物が棲んでいた。
ポールポジションからスタートダッシュを決め独走していたローランドだが、他車よるレッドフラッグに巻き込まれリ・スタート。後続とのタイム差を「帳消し」にされたローランドは巻き返すことができず、結果2位に沈んだ。「ピットインをいつ済ませるか?」というチーム戦略、そして雨に完敗した格好だ。
そんな悔しすぎる土曜があったからこそ燃えに燃えた! ローランド&日産にとって日曜日の第9戦は「100倍返し」しなければならない日となった。
雨も上がりドライコンディションとなった日曜日。昨日の不運メンタルを引きずることなく速さを維持したローランドは、再びポールポジションを獲得。決勝レースでは他車とのつばぜり合いから6位まで順位を落としたものの、黙って引き下がるはずはない。
フォーミュラEの特徴である「アタックモード」は1レースで8分間使える。「4分、4分」あるいは「2分、6分」の組み合わせで車両の出力アップを図ることができる、馬力発動BOOSTモードだ。しかもアタックモードではマシンが四輪駆動になるからスピード、コーナリングの安定性とも爆裂アップ(この時、車体のLEDが赤く点灯する)。フォーミュラEらしいエンタテインメントともいえるし、当然のことながらバッテリーもより多く消費するから、いつ、どのように発動させるかの駆け引きが戦略上重要なカギとなるのだ。
今回ローランドは「2分、6分」を選択。レース終盤1、2位を争うタイミングで6分のアタックモードを使ったが、首位を競うパスカル・ウェーレイン(ポルシェ)が「2回目の4分アタックモード」を使い終わった時点で45秒残していたローランドが首位を奪取! その後、他車クラッシュによるセーフティカーの出動があったものの、振り切ったローランドが悲願のチェッカーフラッグ。グランドスタンドの日産応援団もまた、燃えに燃えた記憶に残る一戦となった。
もう「意外に楽しめた」なんて言わせない!モーターサウンドが巻き起こす、排気音とは違うコーフン
フォーミュラE初開催となった昨年は「ついに日本に公道フォーミュラレースがやってきた!」という目新しさで盛り上がったし、ローランド&日産が2位表彰台を獲得したことも注目に拍車をかける格好となった。
「電動マシンレース」「都心お台場が舞台」「電車と徒歩で行けるフォーミュラ世界選手権」など特色の多いフォーミュラE 東京大会だが、「意外に楽しめた」という声も少なからずあった。つまり「期待は大きくなかったが、けっこう面白かった」と言うことだろう。
今年のマシンカラーリングのテーマは日本のゲーム。昭和レトロな8ビットポリゴンでカクカクグラフィックが施されている。
しかし2年目のフォーミュラE 東京大会は「もうそんな野暮なことは言わせない!」。
フォーミュラE特有の「アタックモード」やピット戦略などの見どころをファンが理解し始めたこともおそらく大きい。また当初、ある種の色眼鏡として「エグゾーストノートのないカーレースなんて盛り上がるの?」なんて意見もちらほらあったが、実際に足を運んだ人ならあの高周波を伴うモーターサウンドが、排気音とは違うコーフンをもたらすことを知ったはずだ。
当然2026年のフォーミュラE東京大会への期待も高まる。なぜなら来期は新世代マシン「Gen4」が登場予定であり、より盛り上がること間違いなしだから。
鬼に笑われたっていい! 来年はゆりかもめで、りんかい線でお台場へ向かおう。そして我らが日産、そして今季から参戦しているヤマハ(ローラヤマハ/18日の第9戦では5位フィニッシュ!)の日本勢勝利の目撃者となろうではないか!
「日本のホームファンの前でこんなに素晴らしい結果を出せたことにとても興奮しています」と喜びを表現するオリバー・ローランド選手。あんたが大将!
ローランドのチームメイト、ノーマン・ナト選手(ドライバーだけに車夫役(笑))とチームマネージャのトマソ・ヴォルペ氏が浅草寺で必勝祈願! ご両名とも日本を楽しまれたご様子でなによりです。ちなみにナト選手は決勝17位だったが引いたおみくじが「凶」だったのが災いしたのかも?
追伸:特設観覧席は座り心地が固いので、来年観戦に行かれる方はクッションの持参をお忘れなく。これを老婆心という。
文/前田賢紀