
事業を通して社会課題解決に取り組むLIFULLが運営する不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」は、未婚化・晩婚化が進むなか、未婚者の理想の住宅条件について調査を実施。結果をグラフにまとめて発表した。
進む日本の晩婚化・未婚化。需要高まる「おひとりさま物件」のニーズを調査
まもなくジューンブライドだが、その一方で日本では晩婚化や未婚化が進み、単身世帯が急増している。こうした社会の変化に伴い、「単身向け=おひとりさま」物件への需要も高まりをみせているという。
かつてはファミリー向けが中心だった住宅市場も、今や一人暮らしに最適な間取りや設備を備えた物件が注目される時代となったのだ。そこで今回は、現代のライフスタイルに寄り添ったおひとりさま物件について、そのニーズについて調査が行なわれた。
シングル向き中古マンションの問い合わせ推移〜東京23区は全体の4割を超える
LIFULL HOME’Sにおける中古マンションの問い合わせのうち、シングル向け物件(ワンルーム、1K、1DK、1LDK、2K)の問い合わせ割合を見たところ、1都3県、東京都、東京23区いずれにおいてもコロナ禍では一時的に割合が下がったものの、2022年には急激に上昇している。
1都3県についてはその後緩やかに下落をしているが、東京23区では4割を超えた状態が続いており、需要の高さが推察できる。
■結婚意欲別:現在の住まい〜実家暮らしは「結婚願望なし」が最多、1割は住宅購入済み
1都3県在住の20~40代未婚男女を対象にしたインターネットアンケートで、結婚願望と今の住まいについて聞いたところ、「実家暮らし」の割合が結婚願望なしが最も高く(40.4%)、結婚願望あり(33.4%)と約7ptの差異が出た。
また、「購入物件」の割合も結婚願望なしが最も高かった(9.7%)一方で、結婚願望ありの人でも7.5%いることがわかった。
■結婚意欲別:購入物件種別〜「結婚願望なし」は中古物件の比率が高め
既に物件を購入している人を対象に物件種別を聞いたところ、結婚願望なしでは「中古マンション」(37.0%)が最も多かったのに対し、結婚願望ありは「新築戸建て」(33.5%)が最多となった。
また、結婚願望ありと比べて結婚願望なしの人は新築物件の割合が低くなっている。結婚願望ありの人は、将来的に家族が増えることを見越して長く安心して住める新築物件を選ぶ傾向、反対に結婚願望なしの人は立地やコストパフォーマンス(合理性)を重視していることが考えられる。
■結婚意欲別:重視するポイント〜「結婚願望あり」の方が重視するポイントが多め。最も差異があったのは「駅からの近さ」
既に物件を購入している人を対象に重視したポイントを聞いたところ、「特にない/分からない」と回答した割合が結婚願望ありは11.8%だったのに対して、結婚願望なしは28.6%にも上った。
全体的に各項目に対する選択割合も結婚願望ありの方が多く、結婚意欲のある人の方が家に対するこだわりが強いことが考えられる。
最も選択率の高かったポイントは結婚願望ありが「駅からの近さ」(42.9%)だったのに対し、結婚願望なしでは「家の広さ、間取り」(32.3%)だった。
また、結婚願望の有無で乖離が大きいのは「駅からの近さ」(差異11.6pt)、続いて「縁(えん)のあるエリア」(差異10.4pt)、「災害への耐性」(差異9.7pt)となっている。
■結婚意欲別:妥協できないポイント〜結婚願望有無で大きな乖離があったのは「乗り換えが発生する」
既に物件を購入している人に対し妥協できないポイントについて聞いたところ、結婚願望の有無に関わらず「電車以外の交通手段(バスなど)を利用する」「徒歩分数が15分以上かかる」(結婚願望あり:58.6%、結婚願望なし:52.1%)が最多となった。
反対に結婚願望の有無で差異があったのは「勤務地などよく通う場所までに乗り換えが発生する」(差異9.4%)、「急行が停まらない」(差異7.8%)となっており、結婚願望ありの人は家族生活を見据えて交通利便性をより重要視していることが推察できる。
■結婚意欲別:月収に占める住宅ローン返済割合〜「結婚願望あり」の方が返済割合が大きい結果に
既に物件を購入している人を対象に、「月収のうち住宅ローンの返済がどの程度を占めているか」を聞いたところ、結婚ありだと「2割以上3割未満」が最も多くなったのに対し、結婚願望なしでは「1割以上2割未満」が同率となった。
「1割未満」の回答割合も結婚願望なしの人の方が多く、反対に「4割以上」と回答した人は結婚願望無しが4.7%だったのに対し、結婚願望ありが13.7%と乖離がみられた。
■「結婚願望なし」未婚者の住宅購入理由〜「特にない」から「マイホームや老後の住まいを持ちたい」へ
「結婚願望がない」と回答した人のうち、物件購入者と物件購入検討者に購入(検討)理由を聞いたところ、物件購入者の最多は「特にない」(37.0%)だったのに対し、物件購入検討者は「自分のマイホームを持ちたい」(40.9%)となった。
僅差で「老後に住み場所を確保したい」(39.8%)が続いており、物件価格が高騰するなか、家を持つことのステータスが上がっていることや家を持っていないことに不安を抱く人が増えていることが考えられる。
調査結果の解説
LIFULL HOME’S総研 チーフアナリスト 中山登志朗 氏
国の統計調査では「単独世帯」と表記されるおひとりさま=一人暮らしの世帯は、2000年の1,291万世帯から2020年には2,115万世帯へと824万世帯(増加率63.8%)に増加し、全世帯数に占める割合も38.0%に達しました。
国立社会保障・人口問題研究所によれば2050年には単独世帯の割合は44.3%まで増加すると推計されています。単独世帯のうち、65歳以上の高齢者の割合も2020年時点で46.2%と高いのですが、昨今の晩婚化の進捗や未婚率の高さなどから、過半の53.8%が“現役世代のおひとりさま”ということになります(※)。
このように単独世帯の増加を反映して、LIFULL HOME’Sに寄せられるシングル向き物件(中古マンション)への問合せ数も東京都平均で37.7%、東京23区では41.6%と極めて高い水準で推移しており、まさに単独世帯シェアと同水準で、世相をそのまま映し出しているとも言えます。
賃貸ではなく住宅を購入すれば、少なくとも老後の生活において都度住む家を探さなければならない不安は解消されますし、仮に介護施設に入居するようなことがあっても購入した物件を売却して生活資金に充当することもできますから、単独世帯が一人でも長く安心して暮らせる“自分だけの城”が欲しいと考えるのはごく自然なことです。
もちろんこういった意向をある程度汲んだ単身者向けの物件は1980年代から分譲されてはいますが、今後も単独世帯が増加し続けることを念頭に、おひとりさまがより安心・安全に長く暮らせる住宅、そして自然にコミュニティ参加ができるソーシャル・アパートメント型の分譲住宅が日本でも普及・拡大していくことが求められます。
※参考
総務省統計局「令和2年国勢調査 調査の結果」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計) 令和6(2024)年推計」
調査概要
<シングル向き中古マンション問い合わせ>
集計対象/LIFULL HOME’Sに掲載された中古マンション
集計期間/2019年1月~2025年3月
<アンケート調査>
期間/2025年4月15日 ~ 2025年4月29日
調査対象者/1都3県に在住の20~40代未婚男女
調査方法/インターネット調査
有効回答数/スクリーニング8277名、本調査626名
構成/清水眞希