
インフルエンザと新型コロナの混合ワクチン、有望な結果を示す
1回の接種でインフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の両方を予防できる新たな混合ワクチンに関する臨床試験で、有望な結果が確認された。開発企業のモデルナ社によると、この混合ワクチンは、すでに市場に出回っている個別ワクチンよりも、新型コロナウイルスと主要なインフルエンザウイルス株に対しより強い免疫反応を誘導したという。モデルナ社のAmanda Rudman Spergel氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に5月7日掲載された。
このmRNA-1083と呼ばれる混合ワクチンは、モデルナ社の季節性インフルエンザワクチンであるmRNA-1010と、次世代の新型コロナワクチンであるmRNA-1283の混合ワクチンである。mRNA-1010およびmRNA-1283は、それぞれ第3相試験において承認済みの比較対象ワクチンに対する非劣性、許容可能な安全性プロファイル、および堅牢な免疫原性(物質が免疫反応を誘導する能力)が示されている。また、mRNA-1283は、初代新型コロナワクチンであるmRNA-1273(商品名スパイクバックス)と比べて相対的な有効性の非劣性が示されている。
Spergel氏らは今回、米国の146カ所で50歳以上の成人8,015人を対象に第3相試験を実施した。対象者は50~64歳(3,998人、年齢中央値58歳)と65歳以上(4,017人、年齢中央値70歳)の2群に分けられ、mRNA-1083とプラセボを接種する群(mRNA-1083接種群)と、認可済みの4価季節性インフルエンザワクチンであるIIV4(50~64歳は標準用量のIIV4〔SD-IIV4〕、65歳以上は高用量のIIV4〔HD-IIV4〕)とmRNA-1273を接種する群(対照群)に1対1の割合で割り付けられた。主要評価項目は、mRNA-1083接種群の接種後29日目の体液性免疫反応が対照群と比べて劣っていないこと(非劣性)の確認、mRNA-1083の副反応および安全性の評価であった。
その結果、ワクチンが対象とした全てのインフルエンザウイルス株および新型コロナウイルス株に対してmRNA-1083の非劣性が確認された。またmRNA-1083は、50~64歳では4つのインフルエンザ株全てに対してSD-IIV4よりも、65歳以上では3つのインフルエンザ株と新型コロナウイルス株に対してHD-IIV4よりも高い免疫反応を示した。安全性に関しては、注射部位の痛みや発熱などの副反応の出現頻度と重症度は、mRNA-1083群の方が対照群よりもやや高かったが(50~64歳:85.2%対81.8%、65歳以上:83.5%対78.1%)、その多くは軽度~中等度のもので、短期間で治まり、重大な安全性の懸念は認められなかった。
以上のような有望な結果が得られたものの、米食品医薬品局(FDA)は、mRNA-1083の承認にはさらなるデータが必要だとしている。FDAは、同ワクチンは確かに抗体産生を誘導したが、接種者の疾患への罹患や入院の予防に効果があるという証拠は十分ではないとの見解を示している。これを受け、モデルナ社はワクチンの承認が2026年まで得られない可能性があるとの見通しを示している。
米メイヨー・クリニックのワクチン専門家であるGregory Poland氏は、この結果がワクチン接種後29日目の血中抗体レベルに基づいていることを指摘し、「今回の件では、有効性のデータ確認が重要だというFDAの見解と私も同意見だ」とAP通信にコメントしている。
AP通信によると、モデルナ社は、従来の鶏卵や細胞培養を用いるインフルエンザワクチンの製造方法に比べて、mRNA技術を用いることでインフルエンザワクチンをより迅速に製造できると確信しているという。また同社は、混合ワクチンがワクチン接種率の向上につながることにも期待を示している。これに対しPoland氏は、インフルエンザウイルスの流行には季節性があるのに対し、新型コロナウイルスは通年で流行するため、接種のタイミングを計るのがやや難しい点を指摘し、慎重な姿勢を示している。(HealthDay News 2025年5月8日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2833668
構成/DIME編集部
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