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「マルハラ」「おじさんおばさん構文」はどうして生まれる?世代間のテキストコミュニケーションギャップ解消に大学生が立ち上がる

2025.05.21

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

バイドゥが提供するZ世代に人気のきせかえ顔文字キーボードアプリ「Simeji」は、愛知大学の学生研究チーム「JAWS」との産学連携の取り組み「マルハラをまぁるくプロジェクト」から誕生した、ユーザーの感情表現をサポートする新機能を5月にリリースした。

本プロジェクトは世代間の言葉の温度差に着目し、より快適なテキストコミュニケーションの実現を目指すもので、愛知大学の学生による「マルハラをまぁるくプロジェクト」の成果発表会が行われた。

なぜ若い世代は「。」が怖いのか?絵文字がもたらす影響は?現役大学生が調査・研究

JAWSは、昨年から話題になっている「句点が怖い」と感じる若者の「マルハラ(句点ハラスメント)」や、中高年特有の文章表現「おじさんおばさん構文」といった、SNSやメールでの世代間のテキスト表現におけるギャップや、世代間の価値観のズレに対する問題意識を持ち研究を開始。学内でアンケート調査を実施した。

「マルハラの要因として考えられる世代間の価値観の違いを分析することは社会的に意義があり、それを世間に問いかけることも有意義であると考え、研究を進めました。

研究結果の中で導き出された課題や、そこから考案した施策についてより専門的な意見をいただきたいと、オンラインコミュニケーションに携わっている企業へのアプローチを検討しました。

様々な企業の中でも『Simeji』さんは、北海道函館西高校とのプロジェクトなど、若者と連携して社会課題解決に取り組まれている実績もあったことから提案書をお送りしました」(以下「」内、愛知大学 学生研究チーム「JAWS」の各メンバー)

JAWSが研究、調査を重ねていく中で見出した、正確な意思疎通において絵文字の重要性を示す「顔絵文字のポジショニングマップ」と、コミュニケーションにおいて利便性が高い絵文字の「シチュエーション別絵文字セット」をSimejiに提案。

オンラインコミュニケーションの最適化を図る提案を学生から受け、学生視点のユニークな気づきがSimejiの課題意識と合致したことから、共同でリサーチと開発をスタート。

全国7965名の意識調査を実施し、世代別の感じ方や価値観の違いをデータ化。どんな機能が世代を超えて“まぁるく伝わる”のか、議論、検討を重ねた。

「私たちのアンケート調査では約200人という小規模でしか実施できませんでしたが、Simejiさんの力をお借りして40倍にも及ぶ約8000人の方々の意見を聞くことができました。

調査を実施して意外だったのは、40代以上の方も若者同様にマルハラに関する興味、関心があるとわかったことです。40代でマルハラに興味のある方は少ないと考えていたため、これは非常に驚きでした」

句読点=「。」に関する調査から、Z世代は約3人に1人が文末に丸のついたメッセージに対して怖い、つらいと感じた経験があると回答した一方で、文末に丸をつける意図として、礼儀作法といった丁寧な表現として使っているという意見も多く見られた。上の世代に関しては、丸は特に意識はせず、文末記号として扱っていることがわかった。

「句点というごく小さな表現でも印象のギャップが生まれていることが調査で明らかになりました。文末に丸をつけることにより相手に威圧感を与えてしまうことが『マルハラ』ですが、要因としては、丸が無機質だったり、冷たいイメージがあることから来ていると感じました。

文末の丸が、使う側と受け取る側で感じ方が真逆になる要因は、世代間でやりとりとして使ってきたツールの違いが大きいのかなと思っています。

我々若者世代はLINEでのコミュニケーションや、短い文章でのチャットのやりとりが主流ですが、上の世代はメールやフォーマルな文章に慣れている印象があります。そういったところで価値観の違いが生まれ、世代間のズレが起きているのではないかと考えています」

使い方によって印象を大きく変える絵文字についても調査。上司や先輩などから「お願い」をされるとき、文章の中に絵文字、句読点がある場合、どちらがモチベーション高く対応できるかという質問では、どの世代も半数以上が絵文字のついた文章の方だと回答。特に15~22歳は約70%という高い結果になった。

絵文字付きメッセージで「うれしい」「心が軽くなった」と感じたことがある人はどの世代も約半数以上で、30歳以上が約70%と特に高く意外な結果となった。これらの結果から、絵文字はテキストに気遣いや、感情のトーンを添える補助ツールであることが判明した。

「うれしい」「心が軽くなった」と感じた絵文字は下記の3つが多く、特に前向きなニュアンスがある「good!」の絵文字が好印象を持たれている。絵文字も使い方によっては、世代を超えて、ちょうどよい気持ちの添え方ができるとわかった。

ただし、絵文字は見る人や文脈によっては、誤解やすれ違いが起きてしまうこともあり、絵文字ありの文章を不快に思ったことがあるという人は、30歳以上では3人に1人(約25%)が不快に感じたことがあると回答した。

場合によっては皮肉や煽りに見えてしまったり、逆の意図に解釈されてしまったりと、絵文字は誰に、どんな文脈で送るのか、TPOに合わせてその見極めが必要だといえそうだ。

「!」や「…」の記号は、どの世代でも不快に思ったという人は1割程度にとどまり、絵文字ほど感情の印象が強くなり過ぎず、句点ほどフォーマルでないと捉える人が多く、やわらかく伝える、ちょうどよい記号として用いられているとわかった。

こうした句点や絵文字に関するうれしさやすれ違いは学生たちも経験しているという。「体調を崩してアルバイト先にLINEで連絡を入れたところ、店長から了解にグッドマークを付けて、お大事にと返信してもらい、ほっとした気持ちになった」、「真剣な話を友人にした時に、文末に不快に思われやすい絵文字を付けた返信が来て、真剣な話をしているのに、相手は本気で考えてくれてないのかな?と思った」と実体験を語った。

Simeji責任者で、プロダクト事業部 古谷由宇氏は今回の共同プロジェクトについてこう話す。

「テキストコミュニケーション、オンラインコミュニケーションは、世代間で捉え方、使い方が違うと課題だと感じている方が多い割には、表立った課題解決ができていないと感じています。

昨今はテキストコミュニケーションで退職を伝える、それさえも嫌で退職代行を使うことが話題になっていますが、その背景にはコミュニケーションの希薄化といった面があるのではないかと考えています。

私たち30代以上の世代は、メールやチャットはリアルなコミュニケーションとは異なる別の場として捉えていますが、物心ついたときからチャットシステムがある学生さんたちのような若い世代にとっては、テキストも口頭で会話をするようなニュアンスで捉えています。

テキストコミュニケーションの現場に一番近い学生さんたちが何を課題に感じているか、みなさんとリアルで話し合って共同でプロジェクトを進めてきたことは、世代間のコミュニケーションの課題解決に大いに役立つと思っています」(古谷氏)

【AJの読み】Z世代と中高年層の価値観のズレを“まぁるく”させる取り組み

愛知大学の研究チームの研究調査や実体験、調査結果をもとに、世代や立場を問わず使える円滑なコミュニケーションに向けた新機能の開発に取り組み、5月から「Simeji」に実装されたのが、新機能「まぁるく変換(予測変換)」「いろいろ感情(シーン別絵文字セット)」。

「まぁるく変換」は、文末の「。」が少し冷たく感じられてしまうと感じたときの言い回しのニュアンスに役立つ機能。入力したフレーズに対して、文末にちょうどいい絵文字を添えた例文をいくつか自動で提案。そのまま使えるやわらかな表現から選ぶことで、伝えたい気持ちをやさしい印象で届ける予測変換機能だ。機能を使わず自身で絵文字を選択することも可能。

「いろいろ感情(シーン別絵文字セット)」は、「感謝」「謝罪」「断り」など、12種類のシーンごとに絵文字を分類した一覧から、自分の気持ちに合った絵文字を選べる機能。

テキストでは伝えづらい感情も、状況に合った絵文字を選ぶことで、より自然にかつ的確に伝えることができる。

絵文字の使い方に不安を感じたり、相手との距離感に配慮したい場面でも、シーンごとの絵文字提案が“ちょうどいい伝え方”のヒントとなり表現の迷いを軽減。意図が正しく伝わらなかった際も「こういう気持ちで使った」という説明がしやすいため、誤解やすれ違いの回避にもつながる。

新機能を家族とのやり取りで活用した学生も。「親は50代だが感情を出すのが苦手。いつも悩んだ挙句を同じ種類の絵文字しか使わなかったが、『いろいろ感情』機能を見せると、自分の感情がどのようなものか把握できて、バリエーション豊かなので選びやすいと喜んでいた」、「家族に送るメッセージは上司や友人よりも端的で短くなりがち。互いに伝えたい意図が届いていないこともよくある。『まぁるく変換』や『いろいろ感情』を使うと、意味が伝えやすくなった」と話す。

送る側と受け取る側の句点や絵文字に対する認識のズレが、職場、学校、SNSなど日常のあらゆる場面ですれ違いやモヤモヤを生む要因ともなっている。Z世代と中高年層のテキストコミュニケーションにおける認識のズレを丸く収める取り組みに、デジタルネイティブの現役大学生が立ち上がったことは心強い。

取材・文/阿部純子

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