
厚生労働省発表の人口動態統計(2022年)によると、日本では3組に1組(離婚率35.5%)が離婚に至っている。
リスクモンスター(以下リスモン)は、結婚生活において「パートナーの仕事」がどのように影響を与えているのかを明らかにするため、20代から40代の既婚者600名を対象に第2回「離婚したくなる夫・妻の仕事」調査を実施したので結果をお伝えしよう。
3人に1人はパートナーの仕事に不満、業種・職種の不満には家族の時間の取りにくさが影響か
パートナーの仕事に対する「不満の有無」、「転職希望の有無」、仕事を理由とする「離婚意識の有無」の3項目を調査したところ、「不満がある」が33.7%、「転職してほしい」が26.7%、「離婚したい」が13.2%となった。
全体の3分の1がパートナーの仕事に不満を持っており、およそ8人に1人がパートナーの仕事を理由に離婚を考えていることが明らかに。
また、3項目すべてで、妻の方が夫よりも回答率が高い状態となっており、「不満がある」における回答率の差異(妻と夫の回答率の差8.0ポイント)が大きいことや、「離婚したい」において妻の回答率が前回から5.7ポイント上昇していることは、妻と夫の意識の差の表れといっていいだろう。(図表A)
世代別に集計したところ、「パートナーの仕事に不満がある」では、「30代」(回答率36.0%)、「40代」(同34.0%)、「20代」(同31.0%)の順で回答率が高く、「パートナーに転職してほしい」でも、「30代」(同31.5%)、「40代」(同24.5%)、「20代」(同24.0%)の順となった。
30代は、他の世代よりもパートナーの仕事に不満を持つ人が多く、その多くが解決方法としてパートナーの転職を望んでいる様子がうかがえる。
「パートナーの仕事が原因で離婚したい」と回答した内訳をみると、「30代」(同14.0%)が最も高い結果となった。
夫は40代になると「離婚したい」と考える人が減る一方で、妻は40代でも「離婚したい」と考える人の割合は変わらず、パートナーの仕事に対する不満の解決方法に、夫婦間での差が生じる結果となっている。(図表B)
パートナーの仕事の業種別に集計したところ、「不満の有無」、「転職希望の有無」、「離婚意識の有無」のいずれにおいても高い回答率となったのは、「食品製造業」、「小売業」、「娯楽業」(※)となった。(図表C)
また、職種別に集計したところ、3項目ともに高い回答率となったのは、「商品企画・開発」、「購買・仕入業務」、「物流・配送業務」(※)。(図表D)
「小売業」、「娯楽業」や「物流・配送業務」など、休日が土日以外となることが多く、家族との時間が取りにくい業種・職種における不満がうかがえる結果となっている。
※回答数4件未満の業種・職種は対象外としている。
不満の理由1位は「給料が低い」、平均年収以上でも夫の給料に不満は3割
パートナーの仕事に対する不満理由を聞いたところ、「不満の有無」、「転職希望の有無」、「離婚意識の有無」の3項目のすべてにおいて、「給料が低い」が最も高い回答を占めた。
「給料が低い」は、次点の2倍以上の回答率となっており、給料の低さが不満に直結していることが明らかに。(図表E)
世代別でも、3項目とも全セグメントで「給料が低い」が突出しており、性別や世代に関わらずパートナーの給料の低さは最も不満を持ちやすい要素であることが明らかとなった。
中でも、40代でパートナーの仕事に不満を持つ人や、パートナーの仕事が原因で離婚したい人の4人に3人が、「給料が低い」を不満理由に挙げている点は特徴的であり、40代では「給料の低さ」に対する不満が離婚意識に直結している様子がうかがえる。(図表F)
給料以外の理由としては、妻や20代、30代の回答として、「サービス残業・休日出勤がある」が不満理由として目立っており、子育て世代の30代においては、「福利厚生が不十分」が不満理由として目立つ結果となった。
また、20代で高い回答率となった不満理由として、「将来性が感じられない」や「ハラスメントがある」が挙げられ、世代の特徴が表れた結果となっている。
パートナーの給料を不満理由とした回答者に対して、パートナーの年収額を聞いたところ、「300万円未満」(回答率33.6%)が最も多く、次いで「400万円以上500万円未満」(同21.9%)、「300万円以上400万円未満」(同17.5%)の順となった。
パートナーの給料が500万円未満になると不満につながりやすくなる傾向が表れていた。日本の平均年収である460万円(国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査より)を下回ると不満につながりやすくなるといえる。
夫・妻別でみた場合、過半数の夫が不満を抱く妻の年収は「300万円未満」(同54.1%)であり、「300万円以上400万円未満」(同19.7%)と合わせると7割超に。
一方、夫の給料に不満を持つ妻のおよそ3分の1は、夫の年収が500万円以上であり、妻の方がパートナーに対して高い給料を求めていることが明らかとなった。(図表G)
まとめ
今回の調査結果では、全体の3分の1がパートナーの仕事に対して「不満」を持っており、およそ8人に1人がパートナーの仕事を理由に「離婚したい」と考えていることが明らかに。
夫よりも妻の方がパートナーの仕事に対して「不満」を持っている傾向が続く中、「離婚したい」と考える妻の割合は前回調査の2022年から5.7ポイント上昇している。
パートナーの仕事に対する不満は、「給料の多寡」が突出して影響していることが明らかとなった。
世代別の調査結果からは、パートナーの給料への不満に対して、20代や30代では転職による解決を優先的に考えているのに対し、40代では給料の不満が離婚意識に直結している点で、世代別の傾向が生じていることが判明。
一方、子育て世代である30代など家庭の時間を大事にしたいと思う層からは、「サービス残業・休日出勤がある」や「福利厚生が不十分」が不満につながりやすくなっているようだ。
また、「小売業」、「娯楽業」や「物流・配送業務」などは、休日が不規則で家族との時間が取りにくいことが、不満度を高める要因となっている可能性が考えられる。
企業としては、出産や子育て、住宅購入などライフステージの変化によって会社に求めるものが変化することを念頭において、自社社員のパートナーから「離婚したくなる企業」と思われることがないよう、就業環境を整えながら、従業員に還元できる体制の構築が求められているのではないだろうか。
調査概要
調査名称:第2回「離婚したくなる夫・妻の仕事」調査
調査方法:インターネット調査
調査エリア:全国
期間:2024年11月15日(金)~11月20日(水)
調査対象者:20~49歳の既婚者 男性・女性個人 600人
有効回答数:600サンプル
関連情報
https://www.riskmonster.co.jp/study/research/
構成/Ara