
「FXはギャンブル」は間違い
2024年に始まった新NISA制度は、非課税要件の緩和が話題を呼び、将来のための資産形成への関心が高まった。それから早1年以上が経ち、ますます資産形成に興味を持つ人が増えている。投資信託や株式よりも少額の資金から取引ができる「外国為替証拠金取引(FX取引)」をその候補に上げる人も少なくない。
しかし、「FX取引はギャンブルのようなもの」「素人が手を出すと危険」といったイメージがあるし、実際に一夜にして数百万円・数千万円の資金を失った人も目にする。
だからといって、「FXは資産形成に向いていない」と判断するのは早計だ。内外の金融市場でのノウハウを培ってきた、アメリカ銀行勤務を経て現在は為替情報発信サイト「アセンダント」取締役の山中康司さんがこう話す。
「値動きに注目すれば、FX市場でのドル円より、株式市場の方が変動幅が大きい。FXで負けるイメージが強いのは“レバレッジ”を高くし過ぎ負けている人の印象が強いためです。リスクを正確に認識し、的確にコントロールすれば着実に資産形成の手段のひとつとなりえます」
具体的にどのような戦略を持つべきだろうか。山中さんに5つの疑問をぶつけ、詳しく解説してもらった。
山中康司(やまなか・やすじ)/1982年に慶応義塾大学を卒業後、アメリカ銀行に入行し、トレーディング業務に従事。その後、日興証券などを経て、2002年に金融コンサルティング会社アセンダントを設立し、現在は、為替情報の配信、セミナー講師、テクニカル分析に関する執筆活動など幅広く活躍する。
疑問1)なぜFXで全資産を失う人が出てくるのか?
結論!レバレッジをかけすぎる人がいるから。無茶せず、リスクを適切に管理しよう
第1の疑問の答えは前述のとおり「レバレッジが最大のリスク要因です。FXは最大25倍のレバレッジができる。もしそうした場合、利益が大きくなる代わりに損も大きくなります」(山中さん)
レバレッジとは「てこ」という意味だが、FXにおいては「自己資金に対して取引可能な金額の比率」のことをいう。
★レバレッジとは?
例えば、1ドル=150円で1万ドルを買うには通常だと150万円が必要だが、25倍のレバレッジを使えば、6万円(150÷6=25倍)の元手(証拠金)で取引が可能になる。これは資金効率がよい反面、1ドル=149円1円動いだだけでも、1万円の損失が発生する。もし損失を出してしまった場合、自己資金6万円の約2割を失うことになる。そして、6円動けば6万円の損失ともなりうる。これが自己資金がゼロになる“ぼろ負け”のメカニズムだ。
大きな損失を防ぐためにはどうすれば良いのか。
「25倍のフルレバレッジの取引は絶対に避けてください。また、1回の取引における最大許容損失額は、総証拠金の2%程度に抑えるべきです。どんなに多くても5%以内までにすべきです。
具体的には、証拠金が100万円の場合だと5%のリスクは5万円。レバレッジを約1.5倍かけたとして1万ドル(約150万円)を取引すると、5円の逆行でこの損失に達します。場合によってはレバレッジをかけない(1倍)、または1倍を切っての運用をしてもかまいません」(山中さん)
値幅や取引量を調整してリスクをコントロールすべきなのは、株式投資などほかのものと変わらない。
疑問2)FX取引って何が魅力?
結論!24時間取引が可能。「外貨預金」より手数料が安いのも◎
金融商品としてFX取引を見てみると、市場の多様性や公正性など様々な魅力がある。
「個別企業分析が中心になる株式投資とは異なり、世界経済全体をマクロ視点で見通す面白さがあります。また、ほぼ24時間いつでも取引可能で市場規模が非常に大きく、大口の投資家による意図的な価格操作が難しく、フェアな市場だといえます」(山中さん)
各国の経済指標や金融政策、地政学的リスクなどが複雑に絡み合い為替レートを動かすため、マクロ経済への理解を深めながら投資判断を行う知的な面白さがあるのがFX取引の魅力である。
さらに、円の価値が下落を続ける中で「外貨保有」の手段としての魅力もある。
「外貨預金と比較すると、為替手数料(スプレッド)が格段に安い。金融機関により異なりますが、外貨預金だと1米ドルあたり1円ほどのコストがかかってしまいます。一方、FX取引で米ドルを買えばせいぜい1銭ほどと100分の1です。
また、FX取引では「買い」だけでなく「売り」からも取引が始められるので、この先訪れるであろう“円高局面”でも収益機会が追求出来ます」(山中さん)
ちなみに、「“売り”から取引が始められる特長を生かし、損失を限定するリスクヘッジ手段としてもFX取引が活用できます。上級者向けですが、満期が近づいた外貨預金に対し、円高方向に振れた場合の為替変動リスクを相殺するため、FXで売りを入れてリスクヘッジするといった使い方もできます」(山中さん)
疑問3)各国通貨の動きにはどんな特徴がある?
結論!〝絶対〟はないが、大まかに以下の特徴がある
主要な通貨ペアの値動きの特長。金融市場分析を精緻に行なうのはなかなか投資初心者には骨が折れるので、最低でもレンジ相場(=一定の値幅の中で上下を繰り返す相場)になりやすい通貨ペア、強いトレンドが出やすい通貨ペアには何があるかを知っておきたい。
出典:各通貨ペアの値動き、金融経済ニュース情報データにより編集部で作成
FX取引では、2つの通貨間の力関係や総合作用によりクセや個性が出る。
「資源国通貨(豪ドル、カナダドルなど)は、主要な輸出品の価格の影響を受けやすい。他方、スイスフランは、地政学的リスクが高まると安全資産として買われやすい「リスク回避通貨」としての側面を持ちます。
とはいえ、これら各国通貨の性質を見抜くには、その通貨発行国の経済を深く理解せねばなりません。経済指標の発表スケジュールや内容、中央銀行の金融政策スタンスなどを常にチェックし、それらが為替レートにどう影響してきたかを過去のデータから分析する必要があります」
各国の特徴と、各国の相互関係を完全に理解するのは、プロの投資家でない我々には難しい。上記表を「傾向」として踏まえたうえで、日々のニュースをチェックすることが為替に詳しくなる第一歩だろう。
そして、豪ドル/NZドルのようなレンジ相場になりやすい通貨ペアは、“リピート系の自動売買ツール”であるインヴァスト証券の「トライオートFX」と相性が良い。あらかじめ設定した価格帯の中で一定の値幅ごとに売買注文を自動で繰り返す戦略が取れるからだ。為替レートが上下するたびに新規注文と決済注文を繰り返し、小さな利益をコツコツと積み重ねることを目指す(具体的には【疑問4】で解説する)。
為替取引の知識を深めていく中で、レンジ相場を形成しやすい通貨ペアを見つけたら、この通貨ペアに対しトライオートFXでの自動売買を仕込むことで、感情に左右されず、24時間いつでも取引チャンスを見逃さず、収益を狙いに行くこともできる。
上記データは2025年3月度の月間取引高である。世界最大の取引量があるユーロ/米ドルは国内だと第5位の取引規模だが、それでも月間20兆円以上の取引がある。トヨタ自動車の月間売買代金が約1.5兆円~2兆円なので、それに比べても10倍以上の取引高がある。これほど大きな市場での値動きのクセを上手くつかめれば、株式市場よりもフェアに取引し資産形成がしやすいといえる。
疑問4)FXの自動売買ツールって怖そう
結論!ツールにはいくつか種類がある。コツコツ利益を積み上げる「リピート系」が低リスク
FX取引を自動で行ってくれるツールは多数存在するが、その実際は玉石混交だ。
当然、自動売買ツールを使えば必ず儲かるわけではないのだが、「人間には不可能な24時間365日の連続取引が可能なことは大きなメリット。そこを有効活用しましょう」 と、適切に活用すれば資産形成に対し有効打となると山中さんは解説する。
具体的に、自動売買ツールの機能についてみてみよう。まず自動売買ツールは、取引機能によって「リピート系」と「テクニカル系」の2つに大別できる。
例えば、インヴァスト証券の「トライオートFX」は、リピート系ツールとして、設定したレンジ内で価格が上下するたびに売買を繰り返し、コツコツと利益を積み重ねる設計になっている。主に相場の方向性を読むのが難しいレンジ相場で力を発揮する。
また、トライオートFXには独自のロジック構築機能があり、取引可能な投資対象が多いため、初心者から上級者まであらゆる投資家に活用の契機がある。
一方の「テクニカル系」では、移動平均線やMACDといったテクニカル指標を組み合わせ、複雑なアルゴリズムに基づいて売買タイミングを判断するプログラムを利用するタイプ。このプログラムは、Expert Advisor(EA)とも呼ばれている。相場に明確な方向性が出たトレンド相場で大きな利益を狙ったり、特定の相場状況にのみ特化して反応したりできるものなど戦略のバリエーションが豊富だが上級者向けでもある。
■「セレクト」で簡単にリピート系の自動売買が試せる
出典:インヴァスト証券
トライオートFXには、「リピート系」の自動売買がすぐに試せる「セレクト」という機能がある。この機能は、選択型の機能で、過去の期間収益率やリスク/リターン評価などに基づき、専門家が作成した売買戦略や、他のユーザーが作成し優秀な成績を収めた戦略を選ぶだけで、簡単にリピート系の自動売買が始められる。とりわけトライオートFXには、複数の通貨ペアや売買戦略を組み合わせることでリスク分散を図り、長期的な視点で安定した運用を目指せるようなロジックもある。例えば、2020年のコロナショックのような予測困難なほどの相場急変が怒った時でも、一定の条件下で損失を抑えやすい特長をもつロジックだ。
■「ビルダー」機能で上級者でも自分好みの自動売買が可能
出典:インヴァスト証券
FX取引の知識が身につき、より自分好みの設定で取引したい中~上級者向けに、トライオートFXには、「ビルダー」機能というカスタマイズ機能がある。
この機能は「開発型」として、自動売買したい通貨ペアの選択はもちろん、レンジ幅、注文本数、1回当たりの取引数量などを自由に設定し、オリジナルのリピート系ロジックが作れる。自分の相場観やリスク許容度に合わせて最適化した自動売買が可能になるというわけだ。
■「シミュレーション機能」で過去のパフォーマンスを検証
出典:インヴァスト証券
トライオートFXには、作成した自動売買ルールが過去の相場でどのようなパフォーマンスを示したかを検証できる「シミュレーション機能」がある。実際に運用を始める前に、過去の相場データを使ってルールをテストし、リスクや期待リターンを把握可能だ。さらに、運用に必要な証拠金の目安もわかり、裁量取引で起こりがちな計算ミスを防ぎ、計画的な資金管理をサポートしてくれる。これは、感情に流されず、ルールに基づいた取引を徹底するのに有益だ。
では、トライオートFXでの自動売買に向く通貨ペアは何なのだろうか。
「一定の価格帯(レンジ)で上下動を繰り返す傾向のある通貨ペアとして、『同じ経済圏にある通貨ペア』がその傾向にあります。例えば、オーストラリアドル/ニュージーランドドル(AUD/NZD)は、地理的にも経済的にも相関性が強いので、一方が極端に強くなったり弱くなったりしにくく、レンジ相場を形成しやすいです。同様に、ユーロ/英ポンド(EUR/GBP)、などの欧州という同じ経済圏にある通貨ペアも、比較的レンジ内での動きが期待できます。また、スカンジナビア通貨同士、例えばノルウェークローネ/スウェーデンクローネ(NOK/SEK)なども同じことが言えます。米ドル/円(USD/JPY)のような主要通貨ペアは、金融政策の大きな転換期や経済情勢の変動により、数ヶ月から数年にわたり一方向へ大きく動くことがあるため、トライオートFXにはあまり向かないでしょう。
いずれの通貨ペアを選択するにしても、過去の値動きのクセが未来も継続する保証はありません。特に、経済危機や金融政策の大転換などが発生した場合、従来のレンジを大きく逸脱し、二度とその価格帯に戻ってこないというリスクもあります。『自動売買=設定後は完全放置』のイメージがありますが、市場の大きな変動を示す兆候に注意を払い、必要に応じて、自動売買の戦略を停止または変更する勇気をもって利用しましょう」(山中さん)
疑問5)FX取引で上級者になるために必要なことは?
結論!知識の獲得のためにも自動売買ツールを活用しよう
「一朝一夕にFX取引での収益を安定化することは難しいです。しかし、継続的に学習していけば、上級者としての道が開けていくし、そこに至るまでに自動売買ツールを活用するとよいでしょう」と山中さんは説く。
FX取引で成功するためには、金融市場に関する知識獲得や、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析の上達に加え、実取引経験の積み重ねが不可欠である。その点では、トライオートFXは、単に取引を自動化するだけでなく、FX投資家が知識を深め、経験を積みながら成長していく過程をサポートする“頼れるツール”と言える。
例えば、前述のセレクト機能は、初心者が専門家や実績のあるトレーダーの戦略を参考にして、相場の動きや戦略の有効性を学ぶ良い機会になるだろう。また、ビルダー機能を使って自身で戦略を作るプロセスは、相場の分析力や取引の判断力を養う良いトレーニングができるといってよい。シミュレーション機能を活用して、リスクを抑えながら様々な戦略を試すことで、実戦に必要な経験値を効率的に積むことも可能だ。
さらに基礎的な内容を学べるブログも公開しており、体系的に知識を得ることも可能だ。
出典:インヴァスト証券
「FX取引の学習には金融機関が掲載しているコンテンツを活用するのも良いです。金融庁の規制の目があり『嘘を書いて投資家をだます』ことがないため、信頼度が高いといえます」(山中さん)
取引ルール遵守とリスク管理のためにトライオートFXを有効活用
FX取引のみならず、金融市場は刻一刻と変化していく。その変化に一喜一憂することなく、また、市場の誘惑や恐怖感に流されることなく、定めた取引ルールを機械的に守っていく強いメンタルが必要だ。
しかし、人間である以上、感情のコントロールは簡単ではないので、トライオートFXでの自動売買が有効な選択肢となる。
トライオートFXでは、あらかじめ設定したルールに基づき、感情に左右されることなくシステムが淡々と取引する。これにより、個人の裁量取引では難しい「決めたルールを守り続ける」という取引の計画性遵守をサポートしてくれるのだ。
また、初心者でも始めやすい「セレクト」から、詳細な設定が可能で上級者向けの「ビルダー機能」まで、幅広いニーズにも対応している。
つまり、FX取引が持つ”過激なイメージ”とは対照的に、トライオートFXは初心者がコツコツと地道に利益を積み重ねることを目指す運用スタイルと相性が良く、経験を積んで上級者に達するまで伴走してくれる良きパートナーにもなってくれる。
FX取引による資産形成を考えるなら、その有力な手段の一つとして、トライオートFXを活用してみてはいかがだろうか。
取材・文/久我吉史
金融ビジネスパーソン×副業記者。金融機関でのシステム企画や経営企画、統合的リスク管理や、商品企画などを経験し、現在は新規事業R&Dや事業投資へのリスクマネジメントに携わりながら、記者活動を行なう。