
世界No.1求人サイト(※)Indeed の日本法人であるIndeed Japan(以下 Indeed )は、国際的なエコノミックリサーチ機関であるIndeed Hiring Labのエコノミスト・青木 雄介氏によるレポート「日本の求人掲載賃金上昇率の動向:数年にわたる停滞を経て、なぜ2024年に賃金は急上昇したのか」を日本時間2025年5月16日に公開。
※ Comscore 2024年3月総訪問数
続いて、その主要ポイントをまとめたリリースが到着したので概要をお伝えする。
賃金上昇率は2024年から上昇、2025年に入って緩やかに転じる
Indeed 賃金トラッカーによると、2024年に入ると賃金上昇率は加速、右肩上がりの伸びを示している。2025年初頭にはやや鈍化の兆しが見られたが、4月時点で前年同月比3.6%の伸びが観測されている。
2024年に見られた賃金上昇の加速の背景には、人手不足の継続、インフレに対する労働者・企業意識の高まりがあると考えられる。加えて、春闘をはじめとする賃上げムードの広がりによって、企業が新規採用時に提示する賃金を引き上げざるを得ない状況が強まったことが反映されていると推察できる。
Indeed 賃金トラッカー、すなわちIndeed 掲載賃金上昇率の前年同月比とその3ヶ月移動平均の推移を表す。期間は2019年1月から2025年3月まで。
そして2025年初頭に賃金上昇が鈍化した理由としては、一部企業での採用活動への注力度の低下、賃上げの先行実施が一巡したこと等に加え、国際的な景況感の悪化の可能性に対する警戒感や、国際的な政況に関連した不確実性の高まりなど、様々な可能性が考えられる。
また、2024年に急速に進んだ賃金上昇の反動的な調整と見ることもできるため、引き続き動向を注視する必要がある。
■賃金上昇率は物価上昇率に追いつかない状況が続いていたが、2024年以降は遅れを取り戻す動き
日本の賃金上昇率は、2022年と2023年は物価上昇率に追随できず、かつ物価上昇率を大きく下回る状況が続いていた。
しかし、2024年に入ると遅れを取り戻し、賃金上昇率が物価上昇率に追いつくような動きを見せていると考えられる。背景として、インフレに伴う労働者の高賃金への強い関心や、離職率の上昇を含む労働市場の流動性の向上により、企業の賃金上昇圧力が高まりやすい環境になってきたことが挙げられる。
また、企業が徐々に価格転嫁を進められたことも、賃金上昇につながっていると考えられる。加えて、春闘を含む賃上げ機運の継続が名目賃金上昇に波及し始め、価格と賃金の相互作用による好循環が徐々に可視化されつつあると見られる。
Indeed 賃金トラッカー(3ヶ月移動平均)、CPI、Core CPIの推移。期間はそれぞれの最新確定年月まで記載(Indeed 賃金トラッカー:2025年3月まで、CPI・CoreCPI:2025年2月まで) 。
■幅広い職種カテゴリーで賃金上昇率は高まっている
なお、2025年4月現在、広範囲の職種カテゴリで賃金上昇が見られる。5%台の賃金上昇率を示す職種カテゴリーは5つあり、4%台まで広げればさらに8職種、3%台まで広げればさらに8職種が入る。
一方で、2019年4月では5%台、4%台、3%台の職種カテゴリーが1つずつしかないことに加え、8位以降は1%台の賃金上昇率となり、職種間で偏りがあった。実際に職種間標準偏差も、2025年4月の方が2019年4月よりも小さいことが確認できる。
これらのデータは、現在の高い賃金上昇率は、労働需給が特に逼迫した一部の職種に牽引されているのではなく、労働市場の大半の分野に広く及んでいることを示唆するものだ。
◎リリースや調査結果の詳細はこちらから https://jp.indeed.com/press/releases/20250516
関連情報
https://www.hiringlab.org/jp/
構成/清水眞希