
中年期に運動量を増やすとアルツハイマー病のリスクが低下する
中年期に運動量を増やすことが、後年のアルツハイマー病(AD)のリスク低下につながることを示唆するデータが報告された。バルセロナ国際保健研究所(スペイン)のMüge Akinci氏らの研究によるもので、詳細は「Alzheimer’s & Dementia」に4月30日掲載された。
運動習慣がADのリスクを低下させる可能性のあることは既に知られていて、ADの13%は運動不足が関与して発症するという報告もある。しかし、中年期の運動習慣の変化が高齢期のADのリスクに、どのような影響を及ぼすのかは明らかになっていない。Akinci氏らはこの点について、スペインにおけるADの患者と家族に関する研究(ALFA研究)のデータを用いた縦断的解析を行った。
解析対象者は、年齢が45~65歳でADリスク(家族歴など)を有しており、研究参加時点(ベースライン)で認知機能障害がなく、ベースラインと追跡調査時における脳画像検査データや運動習慣に関するデータに欠落のない337人(ベースライン年齢60.5±4.78歳、女性62%)。ベースラインと追跡調査の間隔は、平均4.07±0.84年だった。
運動を行っているか否か、および、世界保健機関(WHO)が推奨する運動量(週に中強度運動を150~300分または高強度運動を75~150分)を満たしているか否かにより、全体を以下のように分類した。一つ目の群は、ベースラインと追跡調査の2時点ともに運動を行っていない「座位行動維持群」で29.4%。二つ目は、2時点ともに運動はしていたもののWHOの推奨を満たしていない「非遵守群」24.3%。三つ目は、2時点ともにWHOの推奨を満たしていた「遵守群」16.9%。四つ目は、遵守から非遵守または運動せずに変化した「非遵守への変化群」13.6%。五つ目は、非遵守または運動せずから遵守に変化した「遵守への変化群」15.7%。
年齢、性別、教育歴、遺伝的リスク因子(ApoE4)の影響を調整後、「座位行動維持群」を基準として、ADの発症にかかわるアミロイドβというタンパク質の脳内の蓄積量を比較すると、「遵守への変化群」はその増加量が有意に少ないことが分かった(P=0.014)。また、「遵守群」を基準とする比較では、「非遵守への変化群」はアミロイドβの増加量が有意に多いことが分かった(P=0.014)。
論文の上席著者である同研究所のEider Arenaza-Urquijo氏は、「われわれの研究結果は、AD予防のための公衆衛生戦略として、中年期の運動を推奨することの重要性を裏付けるものだ。運動量の増加を促す介入が、将来のAD罹患率を低下させる鍵となる可能性がある」と話している。(HealthDay News 2025年5月2日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/alz.70007
Press Release
https://www.isglobal.org/en/-/aumentar-la-actividad-fisica-en-la-mediana-edad-podria-proteger-del-alzheimer
構成/DIME編集部
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