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もし投資していたらどうなった?JTとNTTの過去10年のトータルリターンを比べてみた

2025.05.18

日本たばこ産業(JT)と日本電信電話(NTT)は、高配当銘柄として投資家から注目される企業です。ここでは、2015年から2025年までの10年間(※予測を含む)における両社の株価推移と配当実績を振り返り、「株価上昇+累計配当」によるトータルリターン(税引前)を単純比較します。また、企業のビジネス構造や財務基盤、配当政策の変化、NTTのグループ再編の影響などにも触れ、最後に10年を総括していきたいと思います。

1. 企業概要と財務の土台

【日本たばこ産業(JT)】

1985年に国営から民営化され、国内たばこ市場でトップシェアを持つ企業です。海外たばこブランドの買収や医薬・食品事業への多角化を進め、安定したキャッシュフローと高い利益率が強みとされています。しかし国内喫煙率の低下や健康志向の高まりといった逆風要因は根強く、近年は株価が低迷する時期が長く続きました。たばこ以外の事業としてはTableMarkを軸に冷凍うどん・パックご飯などの加工食品を伸ばし、規制リスクの小さいキャッシュ源を確保しています。また国内のニッチ領域の薬を手掛ける医薬事業は2025年に塩野義へ譲渡し、研究開発負担と減損リスクを整理しています。食品強化+医薬売却でタバコ依存度を下げつつ、配当を維持するためのポートフォリオの再構築を進めています。

特に高配当が魅力とされ、現在の配当利回り4%超です。

【日本電信電話(NTT)】

旧電電公社から1985年に民営化され、日本最大の通信事業グループに成長しました。固定電話や携帯通信(NTTドコモ)、光回線、さらにITサービス(NTTデータなど)を展開しており、国が約3割の株式を保有する特殊会社として財務の安定性が高いのが特徴です。5GやDX(デジタル変革)需要を取り込み、グローバル展開やグループ再編で効率化を進めるなど、社会インフラを担う企業として安定成長を続けています。

NTTは「毎年少しずつ増配する」方針を掲げており、株価上昇と合わせて長期投資家のトータルリターンを押し上げてきました。

2. 配当方針と配当利回りの推移

【日本たばこ産業の配当動向】

日本たばこ産業の配当は「安定配当」を基本としつつ、利益成長にあわせた積極増配が目立ちます。2008年に1株24円だった配当は2019年に154円へと6倍超に拡大しています。しかし、国内たばこ需要の減退や海外M&A費用などで業績が頭打ちになり、2019年の配当性向は78.6%、2020年には88%へ急上昇。2021年にはとうとう減配(154円→140円)となりましたが、その後は業績回復とともに再度増配(150円)し、2023年は194円まで復活しています。とはいえ株価自体は高配当に見合うほど上がらず、高利回りが続く「配当利回り依存型」になりがちな点もあります。

【NTTの配当動向】

NTTは増配を続けることを重要な政策とし、2012年3月期から14期連続の増配を達成してきました。配当性向は30~40%台が中心で、業績に無理のない範囲で毎年の配当を積み上げるスタンスです。その結果、配当額は約10年で4倍以上になりましたが、株価も安定的に上昇してきたため、配当利回りは常に2~3%台に落ち着いています。2024年3月期の1株配当は「5.1円」と聞くと低そうに見えますが、これは2023年7月に実施した「1→25分割」の後の数字なので、分割前換算では実質的に5.1円×25=127.5円という形です。増配によるインカムゲインの上昇と、緩やかな株価の値上がりが同時に起きていることがNTTの強みと言えます。

3. 株価推移と配当実績

【日本たばこ産業の株価推移】

2015年は日本たばこ事業の収益好調により年初から株価が上昇し、4,000円台半ばを記録。そこから2016年、2017年、2018年と下落が続き、一時は2,000円台半ばまで落ち込む場面もありました。株価が低迷したことで配当利回りは6%台に急上昇したものの、業績の伸び悩みが続き、減配リスクもくすぶっていたことが投資家の不安を煽りました。2021年には実際に減配が行われ、株価は1,900円台まで急落。しかし2022年以降は業績回復や経営効率化が進んで配当を再び増やし、株価も持ち直して2023年末には3,500円前後まで回復したものの、2015年の水準にはまだ追いついていないのが現状です。

【NTTの株価推移】

NTTはこの10年を通して大きな下落らしい下落がなく、緩やかな上昇トレンドを描いてきました。2015年当時は分割前で6,000円台だったのが、2023年には1万5,000円を超える水準へ到達。複数回の株式分割を実施しており、現在は1株あたりの水準が低く見えるものの、実質的には2~3倍以上の値上がりを果たしています。政府保有株の売却にあわせてNTT自身が積極的に自社株買いを進めたこともあり、1株あたり利益が増えやすい構造になったことが大きいです。さらに配当も毎年増やしているため、株価の上昇と配当収入の両方を獲得できてきました。

4. NTTのグループ再編と影響

NTTグループでは、2020年に携帯子会社のNTTドコモを4兆円超で完全子会社化する大規模再編を行いました。目的は、携帯通信の競争激化に対応し、グループ全体のシナジー効果と利益の内部化を進めることです。その後もNTTコミュニケーションズやNTTコムウェアをドコモに統合するなど、重複業務の整理を進めています。

直近では今年の5月8日に連結子会社のNTTデータグループの完全子会社化も発表しています。

こうした再編が劇的な株価急騰をもたらしたわけではありませんが、親子上場の解消と効率化の成果が中長期的な業績安定と配当原資の拡充につながり、結果的に増配余地を高める後押しとなることが期待されます。その一方で、巨大組織に陥りがちな意思決定の遅さがグローバル競争力の低下を招くリスクもあります。

5. トータルリターン比較(2015~2025年)

日本たばこ産業は2015年初株価を3,400円前後、NTTは同6,000円前後と仮定して算出し、配当累計はJT約1,562円、NTT約3,250円(分割調整前換算)を基に比較してみると、日本たばこ産業のトータルリターン(+約80%)はNTT(+約225%)の約1/3に留まり、この10年でNTT株主の総利益が日本たばこ産業の株主を大きく上回りました。日本たばこ産業は高配当によるインカムゲインで約45ポイントの押し上げがあったものの、株価自体の伸びが限定的でした。

一方、NTTは配当増加に加え株価の大幅上昇が寄与し、配当込みリターンでは約3.25倍(+225%)と圧倒的な成果を上げています。

6. 配当株のなかでも“増配株”を選ぶメリット

高配当株と一口に言っても、実は配当政策にはさまざまなタイプがあります。たとえば「配当利回りが常に高いが、業績や配当性向の余裕があまりない」企業と、「配当利回りは中程度だが、長期的に増配を続けている」企業では、投資家が得られるメリットやリスクが異なります。ここでは“増配株”の主なメリットをいくつか挙げてみます。

【6-1. 複利効果と株価評価への好影響】

長期的に増配している企業は、配当金が右肩上がりになるため、インカムゲイン(配当収入)の成長が期待できます。仮に配当金を再投資しなくても、増配自体が投資家にとって「将来的にこれだけのキャッシュフローが得られる」と見なされるため、株式市場では「将来の収益価値が増す」と評価されやすくなります。その結果、株価が上がる傾向が強まり、キャピタルゲイン面でも恩恵を受けやすいのです。NTTが長年にわたる着実な増配と業績拡大を背景に株価を大きく上げた例は、まさにその好例といえます。

【6-2. 減配リスクの低減】

「毎年少しずつでも増配する」と公言している企業は、それだけ資金繰りや利益の先行きに余裕があると判断されやすいです。増配を継続するには安定したキャッシュフローと適度な配当性向が欠かせません。逆に、無理をして配当を高く出している企業は業績が伸び悩むと減配に踏み切らざるを得なくなり、株価が一気に売り込まれやすいリスクがあります。実際、日本たばこ産業が2021年に減配を実施した際の急落は記憶に新しいところですが、こうしたリスクをより低減できるのが、余裕を持って増配方針を継続している企業の魅力といえます。

【6-3. 長期投資家にとっての心理的安心感】

増配株は、一度保有すると年々配当額が増えるので、投資家としては「多少株価が揺れても配当収入は拡大する」という安心感を得やすいです。株価が上下しても配当が増える見込みがあると、短期的な相場の波にあまり影響されず、長期保有を続けやすくなります。NTTのように10年以上の連続増配実績があれば、市場全体が不安定な時期でも「どうせ減配しないだろう」と見込めるので、投資家が慌てて売りに走る必要が比較的少なくなります。

【6-4. 配当再投資戦略との相性の良さ】

今回の比較では「配当を再投資しない」前提でのリターンを見ましたが、もし配当を別の機会に再投資する“複利運用”を考える場合、増配株はさらに威力を発揮します。配当金が年々増えていくほど、再投資に回せる資金も膨らみやすく、時間を味方につけた資産拡大につながりやすいからです。もちろん配当利回りが高い銘柄を低迷期に大量に買っておく、という投資法も魅力的ではありますが、そのぶん株価下落リスクを負うことになります。一方、増配株は株価・業績面が安定しやすい(=大幅な下落リスクが比較的小さい)ため、長期の資産形成に向いている可能性が高いと言えるでしょう。

【6-5. 高配当「=割安」ではない点に注意】

そもそも「配当利回りがやけに高い=株価が割安でお買い得」とは限りません。そのため、利回りだけに飛びつくのではなく、企業の増配能力や事業の伸びしろを慎重に見極めることが重要です。増配を継続できる企業は、多くの場合、安定したビジネスモデルと強固な財務基盤を持っているケースが多く、長期視点の投資先として安心感が高い傾向があります。

おわりに 10年の総括と今後への示唆

ここまでの内容を総合すると、今後の高配当株投資においては、*現状の配当利回りや直近の実績だけで判断せず、「事業モデルや財務体質の強さ」「継続的な増配余力」「配当性向の余裕」「市場が織り込むリスク」などをしっかり評価することが重要です。

筆者自身の個人的な見解として、実は高度な投資レベルが要求される配当投資は、株価下落時にも一定のキャッシュフローが得られる利点がありますが、減配に直面すると大きく痛手を負うおそれもあります。そのため、長期的には増配が望める企業を見極める力が欠かせないため、企業や業界分析をする知識欲求を持った方に向いている投資手法とも言えるでしょう。

文/鈴木林太郎

https://irbank.net/E00492/results#google_vignette
https://diamond.jp/zai/articles/-/206846

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