
今年、10回目を迎えたヘリテージカーのイベント「オートモビルカウンシル 2025」が4月11日~13日の3日間、幕張メッセで開催された。昨年から国土交通省や日本自動車工業会などの後援団体も加わり、出展した自動車メーカーもBYD、ケータハム、ジャガーランドローバー、ポルシェ、マセラティ、トヨタ、ホンダ、マツダ、三菱など9社となった。その他の関連メーカーやショップなどからの参加も見られた。
特別ゲスト、ジョルジェット・ジウジアーロ氏が来場
また、イタリアからは特別ゲスト、ジョルジェット・ジウジアーロ氏が来場。往年の自動車デザイナーでクルマ好きなら知らない人はいないほど有名な人物であり、会場には彼の代表作となる9台も並べられた。フォルクスワーゲンの初代「ゴルフ」からアルファロメオ「ジュリア」、いすゞ「ピアッツァ」、そして「デロリアン」まで会場を盛り上げた。
それらのクルマの現役時代を知っている人も、まだ生まれていなかったりする世代も皆が脚を止めて話を聞き、カメラやスマートフォンを向けていたのが印象的だった。ジウジアーロ氏の講演は11日と12日に行なわれた。私の知人などは幕張のホテルに泊まり、2日連続で話を聴きに行くほどの熱の入れようだった。
今年は、メーカーやインポーターの展示にも変化が現われたように感じた。昨年までは「富士モータースポーツミュージアム」を全面に展示していたトヨタも、いよいよクラシックカーに本腰を入れてきたという印象をもった。歴代の「スープラ」を題材に、パーツの再生産などの取り組みも紹介。ブースを見ても明らかにスタッフの数も多く、昨年までとは力の入れ方が違うように感じた。
一方で、日産自動車の展示については正直よくわからなかった。立派なブースに「スカイラインスポーツ」をはじめとするクラシックカーが数台展示されていたが、どこにも“NISSAN”の表示がなかったのだ。だからといって、他の団体名が記されているわけでもない。一部ではホンダとの経営統合問題が理由だとも噂されていた。“会社が統合するのだから、日産のヘリテージを明らかにしてはならない”ということだが、それをホンダが求めるとは思えないし、ヘリテージを明らかにすることはむしろブランド価値を高めることなのだから、統合そのものは関係はないはずだ。
そのホンダは今年発表される予定で、すでにあちこちのイベントなどにも展示している新型「プレリュード」と歴代の「プレリュード」を展示していた。
マツダは、以前のスタイリングコンセプトカー「先駆」と、ジウジアーロ氏がデザインした「ルーチェ」のプロトタイプなどを展示。
三菱は「デボネア」「ラムダ」「ギャランGTO」「ディアマンテ」「HSR-2」など5台のヒストリックカーと現行の「アウトランダーPHEV」を出展した。
インポーターでは、マセラティジャパンが「マセラティ クラシケ」の日本での取り扱い開始を木村隆之社長が発表。1980年以前に生産されたマセラティ車を対象に、イタリアから派遣されてくる認定担当者が認定証発行のために審査を行なうという。これまではわざわざクルマをイタリアに送らなければならなかったが、今年からはその手間がなくなることになる。
ランドローバーは、現行の「ディフェンダー」と貴重な初代「ランドローバー」などを展示。ケンブリッジ大学とオックスフォード大学の学生たちによるイギリスから南米への探検紀行のために仕立て上げられたクルマだ。単に古いクルマを展示するだけでなく、そのクルマのユニークな背景や使われ方なども併せて紹介できるところに、自動車文化の層の厚みと豊かさが存在している。
今年の「オートモビルカウンシル」は盛況だったが、同時に各メーカーとインポーターのイベントへ取り組む姿勢や、自動車の歴史と文化へのリスペクトの濃淡が如実に現われていたようにも感じた。展示しているクルマについて質問をしても満足に答えられないメーカーがある一方で、ずいぶん前に乗用車生産から撤退したいすゞが、かつての名車「ピアッツァ」の元になったコンセプトカー「アッソ・ディ・フィオーリ」をきれいに保存していて、それをジウジアーロ作品として展示していた姿勢は評価に値する。もちろん、個性的なショップの展示も見どころが多く、早くも次回の開催が楽しみになった。
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https://automobile-council.com/
取材・文/金子浩久(モータージャーナリスト)