世界のトップを走り続けてきたハッチバックが進化を続けている。大衆車とプレミアム、方向性が異なる2台が示した次世代ハッチバックのあるべき形に迫った。
SUVやミニバンがファミリーカーの主流になってから、国産の2BOXカーはすっかり元気がなくなってしまった。しかし、欧州ではメーカーは着実に2BOXカーの改良を重ね、新型車をリリースし続けている。
VW『ゴルフ』も2021年に導入した8代目『ゴルフ』を2024年7月にブラッシュアップ。同年12月から納車を開始した。BMWはエントリーグレード『120』の4代目が2024年11月にデビュー。『ゴルフ』と『120』はサイズは同じでも大衆車とプレミアムカーというカテゴリーの違いがある。いずれも注目度が高いモデルということで比較してみた。
『ゴルフ』は5ドアハッチバックとステーションワゴン『ヴァリアント』がラインアップされている。外観にも手が加えられたが、内装の変化のほうが大きい。ディスプレイが大きくなっただけでなく、インフォテインメントシステムの操作がわかりやすくなった。パワーユニットは直4、1.5Lガソリンターボと直4、2.0Lディーゼルターボを選べる。48Vのマイルドハイブリッドは低回転域からの加速はスムーズだが、2000回転以上でアクセルオンした時のエンジン音がやや大きい。100km/hの巡航はDレンジで1900回転なので、高速走行はぎりぎり静粛性が保たれている。
一方、BMW『120』は全面改良でスタイリングも一新。バリエーションは5ドアハッチバックのみ。パワーユニットは3気筒1.5Lガソリンターボ+48Vマイルドハイブリッドで『120』と『Mスポーツ』の2グレードと、直4、2.0Lガソリンターボ+4WDの『M135 xDrive』が用意されている。こちらは『ゴルフGTI』のようなスポーツモデルだ。
『120』に乗り込むと、メーターパネルとコントロールディスプレイが一体化した、大きく湾曲した画面が目に飛び込んでくる。先進安全装備もハンズ・オフ機能はオプションだが、同じルートをバックで正確に戻れるリバース・アシスト機能や多くの標準装備が搭載されている。今回の試乗車にはテクノロジーとハイラインのパッケージ50万円相当が装備されていた。ただし、パッケージオプションは、必要なものだけを選ぶことはできない。ユーザーに不親切な設定となっているところが残念だ。
50年にわたって世界標準であり続けるハッチバック
フォルクスワーゲン『ゴルフ』
Specification
■全長×全幅×全高:4295×1790×1475mm
■ホイールベース:2620mm
■車両重量:1350kg
■排気量:1497cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHCガソリンターボ
■最高出力:150PS/5000~6000rpm
■最大トルク:250Nm/1500~3500rpm
■変速機:7速DSG
■燃費:18.7km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:455万3000円
※eTSI R Line
ビッグマイナーチェンジでイルミネーション付きエムブレムが初採用された。夜間の走行時に目立つ。ヘッドライトは8代目になり、500m先まで照らす強力なメインビームが設定された。
太いCピラーが「く」の字に見えるのは、初代『ゴルフ』からのスタイリングアイデンティティー。ホイールベースはBMWより50mm短く、全長は75mm短い。全高は10mm、BMWより高いことになる。
ハッチバックのゲートは、リアのVWマークを押してロックを解除、手動で開閉する。テールランプのLED式はR Lineではオプションになる。リアゲートの開口部は路面から660mmと低めだ。
プレミアムコンパクトへと進化
BMW『120』
Specification
■全長×全幅×全高:4370×1800×1465mm
■ホイールベース:2670mm
■車両重量:1460kg
■排気量:1498cc
■エンジン形式:直列3気筒ガソリンターボ
■最高出力:156PS/5000rpm
■最大トルク:240Nm/1500~4400rpm
■変速機:7速DCT
■燃費:16.8km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:478万円
何と言ってもフロントグリルのキドニーが縦のラインではなく、斜めのデザインを組み合わせたことで話題に。もちろんBMW車としては初めてのこと。今後、このパターンが主流になるのか。
スポーティーさを感じるサイドビュー。ウインドウは後ろに行くほど高めにし、クーペ的なイメージを打ち出している。サイドパネルに2本のプレスラインを入れて高級感を演出している。
テールランプを1本のラインで結んで一体化するのは最近の流行。ウエストラインが高いのでリアウインドウの上下幅は狭い。リアゲート開口部は路面から710mmで開閉は自動。