
MINIシリーズは2023年11月から新型になり、第1弾として「MINI COUNTRYMAN」が「MINI CROSSOVER」に代わり登場した。その後、MINIを改め、「MINI COOPER 3/5ドア」「MINI COOPER CONVERTIBLE」も登場し、2024年6月に「MINI ACEMAN」が加わった。「MINI ACEMAN」は電気自動車専用モデル。「MINI COUNTRYMAN」「MINI COOPER 3ドア」にも電気自動車はラインナップしているが「MINI COOPER 5ドア」に電気はなく、その代わりに「MINI ACEMAN」が加わった。
5ドアのプレミアムコンパクトSUV
ボディーサイズは「MINI COUNTRYMAN」より「MINI COOPER 5ドア」に近いが、スタイリングは「COUNTRYMAN」似という成り立ちのプレミアムコンパクトSUVだ。バリエーションは5ドアワゴンだけ。グレードは電池容量42.5kwh、一充電での走行可能距離310km(WLTCモード)、184PS、290Nmの「ACEMAN E」と、電池容量54.2kwh、一充電走行可能距離414km(WLTCモード)。218PS、330Nmの「ACEMAN SE」が用意されている。今回、試乗したのは「SE」。充電状態98%、走行可能距離320kmと表示されていた。
新型MINIになって、COOPERも内装が大きく変わった。とくにインパネ中央の直径240mmの大径ディスプレイは有機ELで、タッチ機能を採用。スワイプやタッチ操作でメーターパネルとしての機能はもちろん、AR機能はナビ、メディア、電話、エアコン、各種設定などが操作できるようになった。
内装も布地を連想させるダッシュボード素材は、リサイクル・ポリエステルを使用、編み物のような模様に、モードによって色の変わるランプが組みこまれており、パッセンジャーも和ませてくれる。モーターの始動/停止キーやシフトレバー、走行モードなどの操作はインパネ中央下の操作パネルで行なう。
走行モードの選択は、エクスペリエンスモードにより、8パターンの光のグラフィックを投影させるが、8パターンの中で走行モードと連携しているのは、グリーン/コア/ゴーカートの3モードのみ。コンフォートドライビングのコアモードでスタートする。スタートレバーをひねり、始動。ブーンという走行音は若干、室内に入ってくるが、軽快なスタートだ。
「MINIサウンドモード」にはもうひと工夫欲しかった!?
動力性能は0→100km/hの加速が7秒台。これは、スポーティーモードのGO-KARTモードでも変わらない。GO-KARTモードは、アクセル・オンでうなり音が意図的に強調されるMINIサウンドモードもあるが、無音に近い状態で加速するのが電気自動車(モーター)の魅力とすれば、不要なアクセサリーだ。
回生はアダプティブ/低い/普通/高いの4段階で調節できる。コアモードで走り出し、最初に感じたのは乗り心地の硬さ。タイヤからのゴツゴツ感や、路面の凹凸による上下動がキツい。高速走行ではフラットにはなるが、路面への吸いつき感はイマイチ。電気自動車は床下に重量物の電池を搭載しているので、重心が低く、コーナリングや直進時のどっしり感があるのだが、それを感じることはなかった。
MINI COOPER 3ドアの電気モデルに試乗した時は、重心の低さとキビキビ走る雰囲気が、MINI COOPERの得意とするGO-KARTフィーリングだったが、5ドアの電気自動車「MINI ACEMAN」ではそれが感じられない。理由として考えられるのは「MINI ACEMAN」の全高は3/5ドアのMINI COOPERより50~55mm高いこと。この差が重心の高さにも影響しており、硬めのサスセッティングが腰高の吸いつき感の低さに結びついているのかもしれない。
コンフォートなコアモード、スポーティなGO-KARTモード、マイルドなグリーンモードのどれを選択しても、乗り心地は硬く、振り幅に差はあるが、上下動のキツさが感じられた。個人的には各モードでもう少し、硬さの差があったほうがモード切り替えの楽しみが増えると思った。
もうひとつ気になったのは「MINIサウンド」だ。本文中でも触れたがこれはオン/オフで人工的にエキゾーストサウンド的な音を室内に流すモードだが、その音質がエキゾーストサウンドではなく、うなり音的な音なのでけっしてスポーティーとは言えない。もう少し音質の工夫をしてほしいと思った。
結論として「MINI ACEMAN」は、MINI COOPER 5ドアEVの代わりとして登場したが、GO-KARTフィーリングを、重視することで、バランスが微妙にくずれてしまったように思う。MINIの路線からは外れるが、もう少しマイルドにしたファミリーSUV的な方向性のほうが、より多くのユーザーに好まれるのかもしれない。
■関連情報
https://www.mini.jp/ja_JP/home/range/all-electric-mini-aceman.html
文/石川真禧照 撮影/萩原文博