
2025年5月に改正戸籍法が施行される。戸籍の氏名にふりがなが付く点が最大の特徴だ。「自分のふりがなはどのように通知される?」「間違っていた場合は?」などのポイントをまとめた。
目次
2023年(令和5年)6月に成立した改正戸籍法が、いよいよ2025年(令和7年)5月26日より施行される。戸籍上の氏名にふりがなの追加を定めている点がポイントだ。
自分の戸籍のふりがなはどのように通知されるのか、万一、間違っていた場合はどのような手続きが必要になるかを覚えておこう。
また、改正戸籍法の施行に合わせて、「ふりがな変更手数料」などを不当に要求する詐欺が出回る可能性もある。くれぐれも正確な情報を把握しておきたい。
改正戸籍法がスタート。ふりがなの法制化など変更のポイントは?
改正戸籍法は、2023年の成立から順次適用が進められてきた。2025年5月の改正では主に以下の点が変更されている。
・戸籍にふりがなが追加される
・戸籍のふりがなに一定の基準が設けられる
・ふりがなの変更手続きには家庭裁判所の許可が必要
・マイナンバーカードへのローマ字表記記載も検討中
■改正戸籍法の変更点1:ふりがなの法制化
2025年の改正では、戸籍に記載される氏名にふりがなが追加される。記載はカタカナ。新生児の場合は、出生届に記載されたふりがなをそのまま反映する。一方、すでに戸籍に記載されている人の場合は、本籍地の自治体から住民基本台帳などで把握しているふりがなが通知される。
なお、2025年5月26日から1年間は自分でふりがなを届け出ることも可能だ。ただし、氏(姓)のふりがなを届出られるのは戸籍の筆頭者のみ。それ以外は、自身の名のふりがなのみを届け出られる。戸籍の筆頭者が死亡等で除籍されている場合は、第二順位の配偶者や第三順位の子が氏のふりがなを届け出ることもできる。
■改正戸籍法の変更点2:ふりがなに一定の基準を設けてキラキラネームを抑止
改正戸籍法で必須となったふりがなは、規律によって「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない」と定められている。法務省の専用解説ページでは、具体的に以下のようなケースを届出不可としている。
1.漢字の意味や読み方との関連性が認められない読み方(例:太郎をジョージ、マイケル)
2.漢字との関連性を認めることができない読み方を含む読み方(例:健をケンイチロウ、ケンサマ)
3.漢字の持つ意味とは反対の意味による読み方(例:高をヒクシ)
4.別人や読み違い・書き違いと誤解される読み方(例:太郎をジロウ)
キラキラネームを具体的に禁止しているわけではないものの、社会を混乱させるものや、差別的・卑わい・反社会的な読み方など、社会通念上、名前として適当とは言えないものはふりがなとして指定できないと考えられる。
※参考:Q10 届出することができないフリガナはありますか。よくあるご質問(法務省)
■改正戸籍法の変更点3:ふりがなの変更には家庭裁判所の許可が必要
改正戸籍法では、戸籍に記載されたふりがなを変更する場合は家庭裁判所の許可が必要となる。戸籍の筆頭者もしくはその配偶者が、裁判所に許可を得た上で本籍地の自治体に届け出るしくみだ。
ただし、改正後の経過措置として、すでに戸籍に記載されている人は一度のみ、家庭裁判所の許可なしで変更の届出ができる。例外的措置は、ふりがなの間違いを訂正するのが主な目的だ。また、間違いを訂正する場合であっても、上記の1.から4.に該当するようなふりがなへの変更は認められないため注意しよう。
■改正戸籍法の変更点4:マイナンバーカードのローマ字表記も検討中
戸籍へのふりがなが追加される一方で、マイナンバーカードにもローマ字表記でのふりがなが検討されている。
2024年5月27日から日本国籍がある場合は海外でもマイナンバーカードを継続利用できるようになっているため、こちらの利便性も向上するはずだ。
※参考:マイナンバーカードを国外で利用する(マイナンバーカード総合サイト)
■改正戸籍法でふりがなが付く理由と背景
戸籍法が改正される以前は、戸籍の漢字表記の複雑さにより、「マイナンバーカード等のデジタル化に支障をきたす」「行政機関同士のデータ連携が困難」など問題が起きていた。
戸籍の氏名にふりがなが記載されることで、従来の漢字表記よりもデータベース化が容易になり、行政機関同士が氏名情報を共有できるようになる。住民票の写しやマイナンバーカードにもふりがなが記載されるため、本人確認資料として利用可能になる点も利便性が高まると言えるだろう。
改正戸籍法のふりがなはどう通知される?
改正戸籍法施行により自分の氏名のふりがなはどのように通知されるか、また、間違っていた場合の訂正方法も見てみよう。
■戸籍のふりがなは本籍地のある市区町村長から通知がある
戸籍に記載される予定のふりがなは、改正戸籍法が施行される5月26日以降、本籍地の地区町村からの通知書などにより順次通知される。通知が届いたら、まず氏名のふりがなを確認しよう。記載内容に間違いがなければ届出の必要はなく、令和8年5月26日以降に通知に記載されたフリガナがそのまま戸籍に反映される。早期に戸籍へふりがなを記載したい場合は、届出をすることも可能だ。
■戸籍のふりがなが間違っていた場合は訂正の届出をする
氏名のふりがなが間違っている場合は、マイナポータルからオンラインで届出ができる。また、市区町村窓口での届出や郵送による届出も可能だ。
届出が可能なのは、氏は戸籍の筆頭者(筆頭者が除籍されている場合は配偶者、配偶者も除籍されている場合はその子が届出人となる)。名は戸籍に記載されている本人が届出人となる。
届出の書式はマイナポータル上もしくは、各市区町村窓口に用意されているほか、法務省のホームページからもダウンロードできる。
■戸籍のふりがなの届出は無料。届け出なくても罰則はない(詐欺に注意)
戸籍のふりがなを届け出るのに手数料はかからない。また、通知されたふりがなは訂正の届出をしなければ改正戸籍法の施行から1年で戸籍に反映されるため、正しい場合は届出自体が不要と言える。
改正戸籍法の施行を悪用して「届出に手数料が必要」「届出期限が過ぎているので罰則が課される」といった詐欺が横行する可能性もあるため正しい知識を身につけておこう。
仮に誤ったふりがなが戸籍に反映されたとしても、一度に限り、家庭裁判所からの許可を得ずに変更が可能だ。(届出を行った後に氏名のフリガナを変更する場合は家庭裁判所の許可が必要となる。)
■戸籍のふりがな通知、海外在住者の場合
海外に居住中の場合、戸籍のふりがなの通知や訂正の届出がどうなるか気になる人も多いだろう。
日本に住民登録がない場合は、本籍地の市区町村から戸籍に記載予定のふりがなの通知が届かないケースがある。また、本籍地の市区町村が氏名のふりがなに関する情報を有していない場合は、戸籍にふりがなが記載されないため、心配な場合は2026年5月25日までの期間にマイナポータルで届出をしておこう。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部