
3COINSから発売された「ミニトイカメラ」が売れている。3月31日に発売されるやSNSで話題になり公式通販サイトではすぐに品切れ。店頭からも数日で姿を消した。その後、何度か入荷されるもたちまち売り切れとなっている。
なぜ、これほどまでにヒットしているのだろうか?
手のひらサイズのコンパクトなトイカメラ
「ミニトイカメラ」2750円(税込み) ※画像は3COINSより
大きさ約縦5.7×幅6.75×奥行き2.85cm。重さはなんと約34.5g。6.1インチのスマホの半分くらいのサイズ感で(重さに至っては5分の1程度)、手が小さな女性でも手のひらにすっぽりと収まる大きさだ。
カラーはブルー、グリーン、ピンク、アイボリーの4色展開。すべてパステル調になっている。
トイカメラと言いながらも本格的な機能をいくつも備えている。
背面にはデジカメのような液晶画面があり、撮影時の画質設定も可能の他、フィルター、タイマー撮影、フラッシュを搭載。画素数は最大800万画素。一般的なガラケーのカメラも800万画素程度なので、ガラケーレベルと言っていい。
そして、なんと動画撮影まで可能となっている。
※画像は3COINSより
本体底部にはSDカード挿入口とUSB Type-Cポートがあり、本体だけでなく外部メモリにデータ保存やパソコンへのデータ転送が可能となっている。また、本体の充電もUSB Type-Cポートから行なうので、普段使っているスマホの充電器がそのまま利用可能なのも嬉しいポイントだ。
おもちゃのような外見にも関わらず意外な高性能スペックさにさまざまな界隈でも話題になった。
4月下旬、実際にミニトイカメラを購入した30代男性は購入理由を次のように語る。
「発売日にSNSで話題になっているのは知っていましたが、3COINSのおしゃれアイテムという認識でした。
カワイイけど私とは別界隈の流行だな、と。しかし、私が普段見ているようガジェット系やカメラ系の配信者も取り上げており購入しようと思ったんです。見た目のかわいさに反して、色々と遊べそうなのが男心をくすぐりますね」
「レトロブームだから」と語るのは安直?
ミニトイカメラはガジェット界隈などにも波及したが、3COINSのメインの顧客層である20〜30代女性に受け入れられたのも間違いない。なぜか?
ここ数年”レトロブーム”なるものがZ世代の一部で起こっている。
たとえばiPhone4や5の端末を中古で購入し、あえて画質が悪い写真を撮ることが一部界隈では話題になっていた。5000万画素や2億画素といった高性能スマホカメラに慣れ親しんだ彼らにとって500万画素、800万画素で撮影した写真は懐かしさやエモさ、そして新鮮さを感じるという。
3COINSのミニトイカメラの画質は最大800万画素。ミニトイカメラもこのブームの一環として売れたのだろうか?
ミニトイカメラを購入した20代女性に話を聞いた。
「一言でレトロブームと言ってもいろいろあります。
私も純喫茶とか昔ながらの商店街に遊びに行くのは好きですが、レトロな写真にまでなかなか手が出せません。だってカメラとか写真ってちょっと敷居が高いじゃないですか。難しそうだし、どこで、何を買ったらいいかわからない。インスタでエモい写真を見かけていいなって思っても自分で撮ろうとまで思いませんでした」
そこに現れたのが3COINSだったという。
「いつも使っているスリコ(=3COINSの愛称)で購入できるのが良かったです。私の周りでもスリコで買えるなら欲しいと話題になりました。デザインもパステルカラーでファッションアイテムとしてもカワイイし、私はiPhone16なので普段使っている充電ケーブルが使えます。いつもの場所で購入できて、いつもの道具が使えるのは購入動機として大きかったです」
ブームと言われても、普段触れていないジャンルやブランドに手を出してみるのはなかなか心理的ハードルが高いもの。こうした潜在的ユーザーの期待に応えられた企業は少なかったのかもしれない。「若い世代でレトロブームだからレトロ画質なトイカメラが売れた」と簡単に語ることも可能だが、レトロブームの中なぜこの商品が選ばれたのか? 分析するとそこには一言で語れない理由があった。
取材・文/峯亮佑