
中国のネットショッピングといえば、アリババの「淘宝(タオバオ)」だが、最近では「京東」との競争が熾烈になっている。
今回は、中国在住ライターが、日本人にはまだあまり馴染みのない中国のネットショッピング事情および「京東」の拡大勢力について紹介する。
中国のネットショッピングは世界最大のオンライン小売市場
2023年の中国のオンライン小売売上高は、前年比11%増の15兆4,300億円と約299兆円規模と11年連続で世界最大のオンライン小売市場となっている。
デトロイトと中国チェーンストア管理協会発表の2024年オンライン小売トップ5では、1位に京東、2位がアリババであった。
京東は2023年オンライン小売売上高が87,122,400万元(約17兆円)とアリババの11,040,500万元(約2兆円)を大きく引き離している。
他方、京東や淘宝のようなECサイトやアプリの訪問者数では、2024年第1四半期時点で、1位淘宝、2位は抖音(TikTok)、3位は拼多多(pinduoduo)、4位が小红书(xiaohongshu)、5位に京東だ。
小売売上ではなく取引量ではやはり淘宝が圧倒している。抖音は日本でもよく知られるショート動画のアプリで、中国でも人気だ。
拼多多は、共同購入アプリで、共同購入者が時間内に現れると割安に購入することができる。
そして、小红书は日本でいうインスタグラムのようなもので、インフルエンサーが使用している物の投稿からそのまま購入することができる。最近は、淘宝でも動画で実際に使用している動画を見て購入することができる。
「京東」が勢いを伸ばすワケ
以前から圧倒的な1位だった淘宝に、最近では京東が肉薄している。
淘宝は、安くて様々なものが手に入るが、未だに当たりはずれはある。京東の創業者・劉強東氏は、そのような中国のEC市場に懸念を持ち、良い商品を消費者に届けようと事業を始めた。劉氏は、その当たりはずれの原因の多くが、配送にあることが分かり、物流事業をまず構築すること考えた。
そのため京東は、淘宝と異なり、自社で物流事業を持っており、配送時間が淘宝より圧倒的に早い。また、中国の配送業者は日本と異なり、地面に投げたり、雑に扱ったりするのが一般的であるため、ちょっとした物でも多くが手厚く包装してあるのが普通ではあるものの、外装はいつもボロボロになっている。
このような状況では、不良品でなかったとしても、どんなに手厚く包装していたとしても、配送が原因で不良品となってしまうこともある。
これまで、配送を委託していたものを京東が自ら物流事業を持つことで、配送にかかる不良品を減らしていった。
また、返品における手続きも淘宝より簡単だ。淘宝で返品をしたい場合は、返品申請、返品理由、返品理由となった商品の写真を送り、さらに宅配業者を手配して返品しなければならない。一方、京東は、返品申請が簡単で、自社で物流も持っているためすぐに宅配業者が来てくれ置いておけば返品商品をもっていってくれ、返品が簡単にできるようになっている。
今年の独身の日はどうなるか?
中国では、かつて独身の人が婚活パーティーを開く日であった日として、「独身の日」が11月11日に設定されている。淘宝は、独身の人が自分へのご褒美を贈る日として、大規模セールの日としてセールスを強化していった。
その日の売上は中国景気を占う指標としても注目されるほど。
2024年の「独身の日」の売上シェアは、淘宝が38%、京東が20%、抖音13%、拼多多10%だった。
次は、今年の6月18日に京東が始めたネットショッピング最大のセールの「6.18セール」がある。独身の日ほどではないが、このトランプ関税後の中国景気を占う指標として注目すべきであろう。
※1元=19.4円換算(2025年4月時点)
(参考)
デトロイト 中国オンライン小売TOP100
2024中国网络零售TOP 100总销售规模达1.91万亿元 | 德勤中国 | 消费行业
テンセント 2024年中国電子商取引ランキング
2024中国电商排行:抖音、拼多多强势增长,万物淘等新晋电商进入榜单|抖音|网站排名|电商_新浪新闻
文/大堀貴子