
新築マンションの価格高騰が止まらない今、中古マンションを検討する人も増えている。
マンションを購入する際には資産価値がこの先落ちにくく、なおかつ暮らしやすい住居を見極めたいところだ。資産価値は“立地や築年数”などの数字である程度予測できるが、“暮らしやすさ”は数字では測れない。集合住宅を12万戸以上手がけてきたマンション設計のプロによれば、“暮らしやすさ”を判断するにはその住宅の「敷地の草木」に注目すべきという。
敷地の緑は住民コミュニティーの質を表す
手入れの行き届いた植栽は、単なる景観の良さ以上の意味を持っている。共用部の緑にまで気を配れるということは、住民が自分たちの住まいを大切に思い、建物の景観や価値を保つ努力を惜しまないということ。たかが植栽、されど植栽。住民の価値観を如実に写すものなのだ。
また、住民が草木の手入れに自主的に関わっているマンションでは、自然とコミュニケーションが生まれやすい。エントランスやエレベーターホールで挨拶を交わす関係が育ち、結果的に防犯や災害時の助け合いにもつながる。
さらに、住民の協力体制があるマンションでは、長期修繕計画の実行もスムーズに進みやすいという。必要なときに必要な修繕をしっかり行える体制は、結果としてマンションの資産価値の維持に直結する。
築45年でも選ばれる「大倉山ハイム」
神奈川県横浜市の「大倉山ハイム」は、1979年に建てられたマンションだ。敷地内の緑の手入れは住民が自主的に行い、風通しのよい設計とあいまって、築45年の今も快適な住環境が維持されている。空き室が出るとすぐに買い手がつくほど人気があり、資産価値の高さが実証されている。
1979年の建設時に植えられた木々が成長し、豊かな緑を育んでいる。
草木がきちんと手入れされているマンションでは、住民の意識が高く、資産価値を守る力が備わっている。住民同士のつながりが育まれることで、マンションそのものの価値も自然と長く保たれていく。
この記事は、書籍『本当に価値のあるマンションの見つけ方』より、一部内容を抜粋・再構成したものです。書籍では他にも、購入前に知っておきたいマンション選びの視点を多数紹介しています。
■著者
日建ハウジングシステムは、1970年に日建設計より分社・独立。大規模ニュータウンが誕生したマンション黎明期に設立されて以来、50年以上にわたり、集合住宅などの設計に豊富な知見を生かし、「暮らし」の仕組みづくりを通じて住関連分野で高い信頼を築いてきた。これまでに12万戸を超える集合住宅を手掛けており、都市集合住宅の企画・設計および調査研究に卓越した専門性を誇る。2025年4月には日建設計と合併し、より幅広い住宅提案を行っている。