
新築マンションの価格が高騰し、「予算的に新築は厳しい」という人も増えている。そこで、「多少古くても、自分好みにリフォームすればいい」と、中古マンション+リフォームを選ぶ人は多い。
だが、その選び方には注意が必要だ。
中古マンションは「自由に間取りが変えられる」と思いがちだが、実際には“変えやすい物件”と“変えにくい物件”ははっきり分かれる。購入後に「えっ、水回りは動かせないの?」「この壁、抜けないの?」と気づいても、もう遅い。
今回は、マンション設計のプロが教える、「リフォームしやすいマンションの見抜き方」を紹介する。
リフォームのしやすさを決めるのは次の4つ!
チェック(1):部屋が“整形”かどうか
リフォームの自由度が高いのは、四角く整った“整形”の部屋。斜めの壁や出っ張った梁が多い部屋は後から手を加えるのが難しいことも。部屋のデコボコが少なければ、壁や天井の工事がしやすく、レイアウト変更に柔軟に対応できる。
チェック(2):床下に空間があるか(二重床)
床の構造には「二重床」と「直床」がある。二重床はフローリングとコンクリートの間に空間がある構造で、配管や配線を通すスペースが確保されている。
二重床ならリフォームで間取りを変更する際、配管の移動がしやすいため、床にも気を配って物件を選びたい。
チェック(3):水回りが動かせる構造か
一般的なマンションでは、排水管や給水管が住戸内の壁や床下を通っているため、水回りの移動には大がかりな工事が必要になる。中には、構造上どうしても移動できないケースもあり、「リフォームで自由に間取り変更できる」と思い込んで購入すると、あとで困ることも。
一方で、水回りや内装をあとから自由に変えやすいマンションもある。こうした物件は、建物の“骨組み”と“内装”をあらかじめ分けて設計しているのが特徴だ。専門的には「スケルトン・インフィル工法」と呼ぶ。この工法を採用したマンションでは、配管が住戸外の共用スペースに集約されている。住戸内にパイプスペースがない分、リフォームの自由度が増す。この点もチェックしておきたい。
チェック(4):エアコンの位置にも注意
見落とされがちだが、エアコンの位置もリフォームの自由度に大きく関わってくる。
エアコン本体と室外機は冷媒管やドレン管で接続されており、これらの配管経路は基本的に変更できない。場所を移動させたくても、マンションでは外壁は共用部にあたるため、冷媒管を通す穴を新たに開けるには管理組合の許可が必要で難しいケースも多い。エアコンを新設する可能性がある場合、設置が可能か、室外機までの距離などを確認しておこう。
リフォームは購入直後にだけ行うものではない。
子どもの誕生や独立、親との同居など、ライフスタイルの変化によって、必要な間取りも変わっていく。そんなとき、手を加えやすい構造の家であれば、大きな引っ越しをせずとも、今の暮らしに合わせて快適な空間に更新できる。
住み続けながら間取りを変えられる――それこそが、これからのマンションに求められる“価値”ではないだろうか。
この記事は、書籍『本当に価値のあるマンションの見つけ方』より、一部内容を抜粋・再構成したものです。書籍では他にも、購入前に知っておきたいマンション選びの視点を多数紹介しています。
■著者
日建ハウジングシステムは、1970年に日建設計より分社・独立。大規模ニュータウンが誕生したマンション黎明期に設立されて以来、50年以上にわたり、集合住宅などの設計に豊富な知見を生かし、「暮らし」の仕組みづくりを通じて住関連分野で高い信頼を築いてきた。これまでに12万戸を超える集合住宅を手掛けており、都市集合住宅の企画・設計および調査研究に卓越した専門性を誇る。2025年4月には日建設計と合併し、より幅広い住宅提案を行っている。