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障がいを持つ猫たちの写真展「オンリーにゃんず写真展」のモデルになった猫と飼い主の歩み

2025.05.04

もう30年以上前のこと。小学校への通学路に片目がない野良猫を毎日見かけた。

近隣からはゴミを漁る迷惑な猫扱いされていたし、当時の筆者は特段猫に愛着はなかったが、何故か見かけるたびに見えなくなるまで目で追うような気になる存在だった。

障がいは個性。その個性の大切さを知る機会になる写真展がある!

片目が見えていないというハンディキャップを抱えているとは思えないほど動作も機敏だったし、視野の広さにも感心した記憶がある。

後年になってSNSを見ていると、全盲なのにジャンプして窓際に飛び移る猫や、肢に欠損があっても健常な猫と一緒に運動する猫などの写真、動画に巡り合った。

相当なハンディキャップがあっても、それを物ともせずに暮らしている彼らを見て、本当に驚いた。

インターネットは便利なもので、そういった猫たちの日常を知ることだってできるし、飼い主さんの苦労や工夫を知ることもできる。

それこそ、ここ数年は障がいを抱えていても懸命に生きる猫たちの写真展も開催されるようになった。それが「オンリーにゃんず写真展」である。

今回はその「オンリーにゃんず写真展」を企画している、ピノワルド工房の主催・武山真人さんにこの写真展の開催のきっかけについてインタビューすることができた。

この企画の成り立ちに少しでも興味がある方は、ぜひ読み進めていただきたい。

元々ハンドメイド作品を制作していた個人作家の武山さん。障がいを持つ猫たちの接点を得たピノワルド工房

松本 まずはじめに、ピノワルド工房に関して、どういった活動を行っているのか、簡単に自己紹介をお願いできますか?

武山さん ピノワルド工房は、元々は猫の画像加工をし、ハンドメイド作品を制作する個人作家の工房です。

布製品でのオーダーメイドを中心に展開し、猫好きの間で徐々に認知を広げていきました。

活動を続ける中で、オーダー依頼をしてくださる飼い主の猫たちに、障がいや病気を持つ猫たちが多いことに気づいたのが、転機です。

同時に、SNSなどではそうした猫たちの存在を公開している方が当時は少なく、「バッシングされるから」といった発信されない理由も聞き、驚きました。

どの子たちもとても可愛いのに、一部の心無い言葉のせいで愛する子を魅せる場がないことに、複雑な思いを抱きました。

無ければ作る。そんな想いから始まったのが、この「オンリーにゃんず写真展」です。

今では多くの猫さんに参加していただき、障がいや病気の有無に関わらず、“その子らしさ”を肯定し、愛されるという、発表の場の一つに認知していただいております。

2020年からスタートした写真展。都市部を中心に開催されてきたこれまでの歴史

松本 ピノワルド工房と言えば、病気や障がいを持っている猫ちゃんの写真展「オンリーにゃんず写真展」を企画していますが、ここまでの歴史について教えてください。

武山さん「オンリーにゃんず写真展」は2020年にスタートしています。以降、様々な形で開催を重ねてきました。

・2020年と2021年は千葉県浦安市の「オリエンタルホテル東京ベイ」にて開催。多くの猫好きの注目を集め、展示会としての方向性が定まりました。

・2022年は愛知県名古屋市の「セントラルギャラリー」へと舞台を移し、より多くの方々に猫たちの個性と魅力を届けました。

・2023年は京都写真美術館のWEBギャラリーの力を借り、オンライン開催を実施しました。世界中の方々からの視聴も可能となり、より広い層のにゃんずたちが登場。多くの方々から喝采を頂きました。

・2025年は、東京・原宿の「デザインフェスタギャラリー」にて11月に開催されます。

写真展開催の原動力!ピノワルド工房の看板猫、つむぎちゃんについて

武山さんの愛猫・つむぎちゃん

松本 私は武山さんの飼っていらっしゃるつむぎちゃんの密かなファンでもあります。

全盲の猫と触れ合ったことも過去にあるのですが、本当に日常生活を歩む上では人間よりも遥かに自分の置かれた状況に順応することに驚きました。

つむぎちゃんとの普段の生活の様子について教えてください?

武山さん「オンリーにゃんず写真展」は障がいや病気を持つ猫たちの魅力を伝えるために始まった写真展です。その原動力は、我が家の一匹の猫、「つむぎ」の存在です。

つむぎは、生後数週間の時にカラスに両目を突かれ、かろうじて右目が光を感じられる状態で保護されました。

その後、縁あって我が家にやってきました。彼女は目が見えないハンディキャップを持ちながらも、今ものびやかに過ごしています。

見えないことなど関係なく、高い所にもすいすいと登り、降りられなくなったら怒るなど、感情を素直に出す子。

気が強く、先住猫として他の猫を打ち負かし、好奇心旺盛で一番に挑戦しないと気が済まない子。その姿は、SNSを通して、多くの方々に感動と笑顔を与えています。

2025年は11月に東京・原宿で「オンリーにゃんず写真展」開催予定!

松本「オンリーにゃんず写真展」は年々、障がいを抱える猫の飼い主さん以外にも注目される企画になっているように感じます。

2025年の開催内容をもう少し詳しく知りたいのですが……。

武山さん 今年2025年は、東京・原宿にある「デザインフェスタギャラリー」にて開催します。

アートやカルチャーが交差する街での開催を行うにあたり、「個性」や「多様性」を大切にした展示と、高い親和性を見せていきたいと考えています。

展示で伝えることは、「かわいそう」ではなく、前向きに生きる力、そして飼い主たちとの深い絆。

写真には、猫たちの表情やしぐさだけでなく、その背後にあるストーリーが添えられる予定です。

それらの物語はどれも、命を大切にし、違いを受け入れ、共に生きるということを、やさしく教えてくれるように思います。

来場した方々には、アートを楽しむように写真を眺めながら、自然と心動かされていく。

そこにあるのは猫の写真でありながら、まるで人間ドラマのような「日々の尊さ」そのものと感じてもらえる展示と受け取ってもらえたら嬉しいです。

障がいを持つ猫との暮らし。支えられてるのは飼い主の方かも…

松本 今、日本でもっとも多く飼育されているペットは猫と呼ばれるほどに、猫は私たちの生活に密接に関与する動物になりました。

傾向として、昔よりペットにかける医療費も多くなった時代です。

それだけに障がいがあっても、大切な家族として認識する飼い主さんも増えてきましたが、恐らく今後も、屋外で病気や怪我を抱えた猫を保護し、育てようとする方は途切れることがないと思います。

そういった方々に向けて、障がいを持っている猫と暮らす際の心得について、最後にお伺いしてもよろしいでしょうか?

武山さん 障がいや病気のある猫との暮らしは、特別なことのように思えるかもしれません。

でも実際は、ただ少し工夫が必要なだけのような気がします。その子が暮らしやすいように少し支えるだけなのかもしれません。

そうして、その子のペースに合わせて暮らしているうちに、こちらの心も“やわらかく”なっていきます。

一緒に笑い、一緒に寝て、毎日を少しずつ分かち合っていく。その時間は、驚くほど温かくて、深くて、そして楽しいです。

見た目や違いではなく、その子自身を知る。“特別”ではなく、“ふつうに愛おしい”と感じられる。

「小さな命との出会いが、あなたの世界をもっとやさしく、豊かにしてくれる」のかなと思います。もしかしたら、支えられているのはこちらなのかなと思います。

どんな命も、そのままで美しい。今年の秋はデザフェスでオンリーにゃんずたちに会おう!

ということで、今回はピノワルド工房主催者の武山さんに「オンリーにゃんず写真展」についてのお話を伺うことができた。

筆者は数年前からこの写真展に興味を持っており、YouTubeチャンネルにアップされる猫たちの紹介動画にも目を通してきた。

障がいの有無に関わらず、猫は飼い主からの愛情を受けてここまでのびのびと生活できるのか、と驚きの連続だった。

最後に、武山さんが話していた、この写真展に向けての率直な思いを引用したい。

「『オンリーにゃんず写真展』が届けたいのは、なにも特別なメッセージではありません。“どんな命も、そのままで美しい”という、あたりまえのようで見落とされがちな真実です。

つむがれた命の物語は、やさしく、力強く、私たちの心に届いてくると思います。

猫たちの姿から見えてくるのは、“違い”を超えてつながる可能性。誰かを想い、寄り添うことの大切さです。今を生きる私たちのオアシスに。“気づき”となるかけがえのない時間に。この写真展で一瞬でも感じていただけたら嬉しいです」

デザインフェスタギャラリー原宿におけるピノワルド工房の次回出展は2025年の11月22~24日(予定)になる。

開催までまだ日が開いているが、会場は交通の利便性の良い原宿だし、さまざまな出展者の展示もついでに楽しむことができる。

ぜひとも近隣にお住まいの方は、晩秋の予定の中に「オンリーにゃんず写真展」に出向く、を組み込んでみてはいかが?

文/松本ミゾレ

【取材協力】
オンリーにゃんず写真展主催者 武山真人さん(ピノワルド工房)
オンリーにゃんず公式ホームページ

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