
花粉の飛散量は前年の気温や日照時間などが影響しているというが、今年は非常に花粉の飛散量が多い春になった。
「春の花粉症」とひとくくりに話してしまいがちだが、スギとヒノキでは違う点がいくつかあるという。いったいどのような違いがあるのだろうか。耳鼻咽喉科医の木村聡子先生に教えてもらおう。
ヒノキの方が目や喉の炎症が強く出る傾向に
5月になり、花粉症のピークは越えたようだが、まだまだヒノキの花粉は飛散している。
「全国一律ではなく少しずれはあるものの、飛散する時期は、スギは1月半ばからスタートし、ピークは2月から4月、5月にはおおむね飛散しなくなります。ヒノキは2月からスタートし、ピークは3月から4月です。そして、6月中旬くらいまで飛散します」
症状は非常に似通っており、目や鼻、喉や皮膚といった場所に症状が出るのは共通している。
「ただ、ヒノキの方がスギに比べて花粉の粒がやや小さく、粘膜に入りやすいとされています。そのため、ヒノキの方が、目や喉の粘膜の炎症が強く出る傾向にある。例えば、目や喉のかゆみや違和感、咳などです。更に、ヒノキの方が少量の花粉でも症状が出やすいという特徴がありますね」
少しの違いはあるとはいえ、症状は非常に似ているため、どちらの花粉にアレルギー反応を起こしているのか、自己判断するのは非常に難しい。
「ご自身ではスギの花粉症だと思っていても、実際はヒノキの花粉症だったというケースはもちろんあります。逆のケースももちろんあります。そして、花粉というといろいろありますが、スギとヒノキは非常に似ている構造です。そのため、スギの花粉症がある人は、ヒノキの花粉症も同時にお持ちの方が多いのです。スギの花粉症の方で、約7割の人がヒノキの花粉症も持っているとも言われています」
自己判断をして、市販薬で対処をしているという人もいるだろう。しかし、アレルギー検査をして、自分が何の花粉に反応しているのかは調べてもらった方が良いこともある。
「自分がどのアレルギーを持っているのかを知ることで、“いつから”“どんな薬を”“どれくらい”使えばいいのかという目安になります。例えば、スギ花粉が飛び始める時期は、ヒノキの花粉症だけをお持ちの方はそこまで対策はしなくていいわけです。また、飛散のピークに合わせて薬の量を調整することもできます。中には自分でアレルギー性鼻炎と思い込んでいてもそうでないケースもあります。」
自分にとって必要な薬を適切な量で適切な時期に服用するには、どんなアレルギーを持っているかという情報は非常に大切だ。マスクや服装など日常の中で対策をするタイミングも変わってくる。自分がどういう物質にアレルギー反応を示すのか、一度調べてみるといいだろう。
木村聡子医師プロフィール
医学博士、日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本アレルギー学会専門医、補聴器適合判定医、補聴器相談医、難病指定医。大学病院、総合病院などを経て、現在は都内クリニックに勤務。耳鼻咽喉科疾患全般において年齢層を問わず幅広く対応し、丁寧な説明を心掛けている。
取材・ 文/田村菜津季