DIME MAGAZINE
活況を帯びつつも競争が激しいトレーディングカードゲームの世界。そんな中、2024年発売された『名探偵コナンカードゲーム』が売り上げを伸ばすためにとった手段とは何か？ 開発者のインタビューから見えてきた。
原作とTCG、両方のファンに響く仕掛けが満載
昨今、TCG界が活況を帯びている。理由のひとつに、コロナ禍があると言われている。外出を制限されたことで、家で遊べる玩具の人気を押し上げたのだ。コロナ禍が収束してもその人気は衰えず、日本玩具協会によると、カードゲームやTCGの市場規模は23年度で2774億円を超え、昨年比118％と成長を続けている。市場の活況を受け、新商品も続々登場。そんな群雄割拠の中から『名探偵コナンカードゲーム』が人気となった理由とは？ タカラトミーの開発チームの山口朋さんに話を聞いた。
「今回の企画は連載30周年記念にと小学館側からご提案がありました。最近のTCGはIPを使ったものが盛り上がりを見せています。高い人気を誇る『名探偵コナン』は魅力的ですが、対戦型のTCGと世界観が合うのか、という懸念もありました」
TCGの基本は、それぞれ異なる能力値や効果などが設定されたカードでデッキを組み、ルールに則って対戦するというもの。
「TCGでは相手を打ち負かすことで勝利します。当初は、謎解きがメインのコナンとの親和性を見出せるのかわかりませんでした」
そこで、これまでのTCGの型にはめるのではなく、新たな対戦ルールを取り入れることで、ゲームを新構築したという。
「事件を先に解決した方が勝利するというルールにしました。推理の過程も楽しめるように設計したのですが、それだけでは対戦になりませんから、相手の邪魔をできる仕組みも作りました」
新たなルールが受け入れられるのかという懸念をよそに、急速に人気を拡大。カードの発売から4日後に発売された『週刊少年サンデー』に「出荷枚数2000万枚突破」の文字が躍るほどだった。
コナンファンはもちろん、従来のTCGファンも取り込めるようゲーム性も重視した。
「何度かプレイしていると、どうしてもカードの使い方が定着してしまいます。パターン化してしまうと勝っても面白くありませんよね。そこで、『バランスを整備する』と言うのですが、新たなカードを投入したり、あまり使われてない既存のカードの効果が発揮できるよう常に調整しています」
試作段階で青山剛昌先生にも実際に遊んでもらったという。
「青山先生もTCGをやっていたそうで、実際に試してもらいました。その際には、このキャラにはもっと推理力が欲しいなど、具体的な要望をいただき反映しました。『名探偵コナン』の魅力は、本筋と個々のキャラクターのエピソードがうまくかみ合っていくところだと思います。このキャラがここで？といったこともあったり。ですので、カードには脇役まで幅広く採用しています」
カードには、青山先生の描き下ろし線画や原作のコマだけでなく、実際には描かれなかったが、ファンが見たいに違いないというシーンも再現。ファンファーストという青山先生の意思が共有され、ヒットにつながっているようだ。
タカラトミー
『名探偵コナンコードゲームスタートデッキ』（5種）各1320円
相手を倒すのではなく事件を解決するというロールプレイゲームシステムを採用。『名探偵コナン』の人気キャラたちと一緒に事件を解決する爽快感を味わえる。
〈遊び方〉
好きなキャラと事件を解決！
カードは4種。中心となる「パートナーカード」のほか、「キャラカード」は推理やアクション、「イベントカード」は強力な効果、「事件カード」は解決すべき事件内容を表わす。
キャラカードやイベントカードを使い推理やアクションを行なうことで、指定された証拠の数を証拠エリア内に集める。パートナーカードの能力や効果を上手に利用することで、ゲームを有利に進めることができる。
開発者が語る──名探偵コナンカードゲームへの魂
タカラトミー
キャラクタービジネス本部 TCG事業部
山口 朋さん
『名探偵コナンカードゲーム』の企画からゲームの設計などに携わる。「小学生の時に読んだ作品に、社会人になってから関われるとは思っていませんでした」
〈理由1〉青山剛昌先生の描き下ろしも封入！！
青山先生描き下ろしの線画を使用したカードが収録されたスタートデッキ。どのキャラにどのテーマカラーを使用するかも、担当者を悩ませた。「キャラクターのイメージカラーを決めるようなものなので、実に悩ましかったです」（山口さん）
〈理由2〉名シーンはもちろんオリジナルイラストも描かれている！！
カードには原作の名シーンを多く採用。「一方、オリジナルカードは、原作には登場しなかったが、人気のエピソードや、見えなかった表情など製作者が選び抜いたシーンを再現しています」（山口さん）。ゲームをしなくても揃えたくなる仕掛けといえる。
〈理由3〉対戦を楽しくする拡張パックを随時発売
TCGにおいて、様々な戦略で勝利できる環境の維持は重要なポイント。「特にコナンではキャラクターで集める人も多いので、どれかひとつのグループの強さだけが突出しないよう、拡張パックなどでバランスを整えるようにしています」（山口さん）
〈理由4〉定期的に体験会を開催しファン拡大に注力！！
体験会などファン向けのイベントが様々な場所で開催されている。『名探偵コナンカードゲーム』を機にTCGを始めた人も多いそう。「対戦スペースより交流スペースが盛り上がることも。話ができる仲間を作れるのもTCGの魅力です」（山口さん）
〈理由5〉『週刊少年サンデー』などの付録にしてファンを獲得！！
『週刊少年サンデー』と『少年サンデーS（スーパー）』では、『名探偵コナンカードゲーム』の役立つ情報をたっぷり紹介する「コナンカードクラブ」を不定期で掲載。さらに、本誌を購入することでしか手に入らない限定カードが付録になることも。
2025年4月26日同時発売！
タカラトミー
『CT-D08 名探偵コナンTCG Case-ThemeDeck 03 青の古城探索事件』
『CT-D09 名探偵コナンTCG Case-ThemeDeck 04 死亡の館､赤い壁』各1650円
『名探偵コナンカードゲーム』の1周年を記念して投入されるテーマデッキ。長野県警の3人や少年探偵団がパートナーカードとして登場。それぞれのキャラクターも多数収録。
取材・文／内野智子 撮影／谷川将啓 編集／寺田剛治
©青山剛昌／小学館 © TOMY
DIME最新号は「名探偵コナン」の大特集、スペシャルコラボ付録は〝長野県警トリオ〟のトリプルジッパーバッグセット
2024年、連載開始から30周年を迎えた「名探偵コナン」。
TVアニメや劇場版も人気を博し、今や国民的な作品となっています。関連イベントや商品も充実し、物語の舞台やUSJでのイベントなど、コラボ企業は多岐にわたり、その集客力はとどまるところを知りません。今回の特集では、そんな広がり続ける〝コナンワールド〟について徹底取材、コナン人気の〝真実〟に迫ります！
※表紙以外は通常版と同じです。
※特別付録「名探偵コナン トリプルジッパーバッグセット」はDIME2025年6・7月合併号通常版・スペシャル版共通です。
【特別付録】
「名探偵コナン」トリプルジッパーバッグセット
劇場版最新作でも大活躍する〝長野県警トリオ〟をあしらったスペシャルコラボ付録を制作！充電ケーブルや筆記具など持ち物の仕分けに便利なサイズ違いの3点セットです。
※通常版・スペシャル版ともに付録は同じです。
※表紙以外のコンテンツ、付録は通常版、スペシャル版で同じ内容になります。
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■DIME SPECIAL1
編集者、声優、地方自治体、コラボ企業に聞くコナン人気の深層とは!?
『名探偵コナン』熱狂の舞台裏
長野県警全面協力！劇場版最新作の舞台、長野の新聖地とは？見学のポイント、撮影にベストなスポットなどマップ付きで詳しく紹介！青山先生が取材時に食べたカツ定食も!?
- 青山先生の故郷「鳥取砂丘コナン空港」全フロア撮影スポットガイド
- 函館、八丈島、シンガポール、劇場版作品が生んだ驚異の集客力
- 約10年続くユニバーサル・スタジオ・ジャパンとコナンの熱い関係
- JR西日本の「名探偵コナンミステリーツアー」の謎を解く！
- 商品コラボ企業に取材したコナン消費の深層
- サンデー編集部担当編集に聞く、青山先生のファンサービス精神
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