
現地時間2025年4月24日午後3時より、アメリカ・ワシントンにおいて、日本の加藤財務大臣兼金融担当大臣とスコット・ベッセント米国財務長官による、初の対面による日米財務大臣会談が行なわれた。
会談では為替レートの変動と金融の安定化、進行中のトランプ関税を巡る措置などが協議されたという。そんな会談が市場に及ぼす影響を分析したリポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から届いているので概要をお伝えする。
注目の日米財務相会談が終了、米国から為替水準の目標や管理の枠組みなどの話はなかった
米ワシントンを訪問中の加藤勝信財務大臣は4月24日(日本時間4月25日早朝)、ベッセント財務長官と会談し、為替分野などについて協議を行なった。
加藤氏は会談後、米国からは為替水準の目標や、為替を管理する枠組みなどの話は全くなかったとした上で、為替に関して、引き続き緊密かつ建設的に協議を続けていくことで一致したと明らかにした。
また、加藤氏はベッセント氏との会談において、米国による一連の関税措置は極めて遺憾であることを伝え、日米貿易協定との整合性に懸念のある関税措置の見直しを強く申し入れたと述べた。
そして、為替について、水準は市場で決定されること、過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与えることなどを再確認したと述べている。
■為替に関し引き続き緊密かつ建設的に協議を続けていくことで一致した点もほぼ予想どおりの結果
注目された日米財務相会談だったが、市場が懸念していたような、米国が日本に対し円安是正を強く求める展開にはならなかった。
今回の会談については、4月21日付レポートで、為替レートに関して想定され得る米国の対応を4つのケースにまとめ、それぞれに対する為替市場の反応をまとめた。
それを再掲したものが図表だが、今回の会談の結果と照らし合わせて考えてみたい。
1つめは、「為替については日米財務相の間で緊密な連携を図り、議論を継続する」などの発言にとどまるケースだ。
日米関税交渉も始まったばかりの段階であることを踏まえると、具体的な為替レートへの言及には踏み込まず、今回はこのケースとなる可能性が高いと考えたが、おおむね想定内の結果になったと思われる。
3つめと4つめのケースは実現のハードルが高いと判断したが、前述のとおり米国側から話はなかった。
■一般的な表現での為替合意なら投機は後退、今後は関税交渉や日米金融政策の行方に注目
2つめは、ある程度、日米関税交渉が進展した段階で、「通貨の競争的切り下げを回避」などの一般的な表現で、日米の合意が示されるケースだ。
報道によると、ベッセント氏は24日、早ければ来週にもおおまかな理解を共有する合意に達する可能性があると述べており、2つめのケースに至る公算が大きいとみている。
これにより、米国の円安是正要求の思惑を材料とする投機的なドル売り・円買い圧力は後退していくのではないかと考えている。
今後、ドル円相場の焦点は、関税をめぐる日米の交渉(2回目は日本時間5月1日か)や、米中の交渉の進展に移り、関税引き下げに向かえばドル高・円安、交渉難航、決裂ならドル安・円高の動きが予想される。
また、日銀金融政策決定会合(4月30日、5月1日)や米連邦公開市場委員会(FOMC、5月6日、7日)において、どのような政策が示されるかについても、ドル円の方向性に影響を与え得るため、注目される。
構成/清水眞希