
近年では、著名人などの不倫トラブルがワイドショーで連日報じられたり、SNS上で激しく叩かれたりするケースが目立っています。
不倫は当事者同士の問題で、部外者が必要以上に口を出すべきではないようにも思われます。その一方で、特に著名人などの不倫が報じられた際には、契約解除などによって仕事に影響が出るケースが少なくありません。
法的な観点からは、不倫をするとどのようなペナルティを受けることになるのでしょうか。
1. 不倫のペナルティ(1)|慰謝料の支払い
不倫をした人は、自分の配偶者や不倫相手の配偶者に対して慰謝料を支払う義務を負います(民法709条)。
慰謝料の金額は、50万円~300万円程度の範囲内に収まるケースが多いです。一例として、以下のような要素が慰謝料の金額に影響します。
・離婚するかどうか
・不倫の回数や頻度
・婚姻期間
・未成熟の子どもの有無
・被害者の精神疾患の有無、状態
など
2. 不倫のペナルティ(2)|離婚
配偶者以外の異性と性的関係を結ぶことを「不貞行為」といいます。
不貞行為は法定離婚事由の一つとされています(民法770条1項1号)。
不貞行為をした人は離婚したくないと考えていても、相手に訴訟(裁判)を起こされれば強制的に離婚が成立します。
3. 不倫のペナルティ(3)|仕事の契約の解除
著名人などが不倫トラブルを起こした際には、事務所や取引先から契約を解除されるケースがあります。
契約の解除は、契約上の解除規定に従って行われていると考えられます。
たとえばブランドイメージなどとの関係で、不倫をしない旨の誓約が契約に定められている場合は、その違反を理由に契約を解除される可能性があります。
不倫を禁止する条項が明確に定められていなくても、「信頼関係を損なう行為」「ブランドイメージを毀損する行為」などの抽象的な禁止事項が定められている例はよくあります。
不倫がこれらの禁止事項に該当するかどうかはケースバイケースの判断になりますが、社会的なイメージが重要である著名人などの場合は、契約の解除が認められる余地があると思われます。
4. 不倫を理由に解雇されることはあるのか?
著名人の契約解除とは異なり、一般企業で働いている人が不倫をした場合に、企業から解雇されることはないと考えられます。
企業が従業員を解雇するためには、解雇すべき客観的・合理的な理由があり、解雇が社会通念上相当であることが必要です。この条件を満たしていない解雇は、解雇権の濫用として無効となります(労働契約法第16条)。
一般企業で働く従業員の不倫は、企業の業務とは関係がなく、純粋にプライベートな事柄といえます。周囲の同僚からすると、不倫の話に触れにくいなど若干の気まずさはあるかもしれませんが、業務に対して具体的な支障が生じるとは思えません。
したがって、不倫を理由とする解雇は客観的・合理的な理由がなく、社会通念上相当とも言えないため、無効になる可能性が高いと考えられます。
解雇には至らない懲戒処分(減給・出勤停止・降格など)についても、客観的・合理的な理由と社会通念上の相当性が要件とされています(同法第15条)。純粋にプライベートな事柄である不倫を理由とする懲戒処分は、解雇と同様に無効となる可能性が高いです。
仕事に影響が出てしまいがちな著名人の不倫とは異なり、一般の人の不倫はほとんどの場合、純粋に当事者だけの問題と言えるでしょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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