
2025年4月22日の東京外国為替市場は一時1ドル139円台をつけ、2024年9月から7か月ぶりとなる円高ドル安を記録した。これは4月初頭の150円前後の水準から、一気に10円以上も円高が進行したことになる。
そんなドル円相場に関する分析&解説リポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から届いているので概要をお伝えする。
ドル円は139円台をつけるがベッセント氏とトランプ氏の発言を受けてドル高・円安に
ドル円は日本時間(以下同じ)4月22日の午後3時前に、一時1ドル=139円89銭付近に到達。2024年9月16日以来のドル安・円高水準をつけた。
その後はいったんドルを買い戻す動きが優勢となったが、23日の午前3時過ぎに、ベッセント米財務長官が関税を巡る中国との対立は緩和に向かうとの認識を示したことが報じられると、ドル買い・円売りが加速。ドル円は午前6時頃に141円57銭水準まで戻った。
さらに、午前6時を過ぎたあたりから、トランプ米大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長について「解任するつもりはない」との発言が伝わると、ドル円は午前7時半頃に143円22銭近くまで、ドル高・円安が進む。
一時139円台をつけたドル円ではあったが、ベッセント氏とトランプ氏の発言を受け、米景気悪化やFRBの独立性への懸念が和らぎ、さらなるドル安・円高の進行には至らなかった。
■為替市場では3つの山と2つの谷で形成されるドル円の「ヘッドアンドショルダー」が話題に
為替市場ではこのところ、ドル円のチャートに現れた「ヘッドアンドショルダー」が話題になっている。
これは、トレンドの転換点を示すチャートパターンで、3つの山と2つの谷で形成される。2つの谷を結んだ線を「ネックライン」といい、ドル円であれば、ドル高・円安局面で「ヘッドアンドショルダー」が現れ、ドル円レートが明確にネックラインを割り込むと、ドル安・円高局面に転じたと解釈される。
具体的にチャートをみると(図表1)、2024年7月につけたドルの高値161円95銭水準を中央の山とし、その左に2023年11月高値の151円91銭水準の山、その右に2025年1月10日高値の158円87銭水準の山が形成されている。
ネックラインは、2023年12月につけたドルの安値140円25銭水準と、2024年9月安値の139円58銭水準の2つの谷を結んだ線となる。
■完成なら大幅なドル安・円高示唆も参考程度が賢明、トランプ氏の強気姿勢の変化に注目
ドル円がこの先、2024年9月安値の139円58銭水準を割り込んでドル安・円高が進めば、ヘッドアンドショルダーは完成する。この場合、ドル安・円高の目途は、2024年7月高値の161円95銭水準と2024年9月安値の139円58銭水準の値幅である約22円37銭を、139円58銭水準から差し引いた117円21銭水準になる。
ただ、これはあくまで1つのチャートパターンの解釈であり、参考程度にとどめることが賢明と思われる。
ドル安・円高の材料は、米関税政策の強化、米国売りの加速、円安是正の強めの日米為替合意などであり、ドル高・円安の材料は、これらが逆の動きになることと考えられる(図表2)。
トランプ氏は、自らの強気姿勢で国内経済や金融市場に深刻な悪影響が及ぶことは避けたいというのが本音と推測され、時間の経過とともに強気姿勢は緩和方向に修正され、ドル高・円安材料の要素が強まるのではないかとみている。
構成/清水眞希