
昼夜を通して続く熱波は心疾患による死亡リスクを高める
日中も夜間も高気温が続く熱波の間には、心疾患による死亡者数が増えることが新たな研究から明らかになった。特に、夜になっても暑さが和らぐことのない複合熱波と呼ばれる熱波での心疾患による死亡リスクは、日中の気温だけが大幅に上昇した場合よりもはるかに高かったという。復旦大学(中国)公共衛生学院教授のRenjie Chen氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology」に4月8日掲載された。
Chen氏らは今回、2013年から2019年に中国本土で発生した2390万2,254件の心疾患による死亡データを解析し、気温との関係を調べた。熱波を、昼間のみの熱波、夜間のみの熱波、および昼夜を通して続く複合熱波に分類し、熱波による超過積算温度(excess cumulative temperatures in heatwaves;ECT-HW)と呼ばれる新しい指標を用いて死亡率を推定するとともに、従来の熱波指標を用いて推定した死亡率と比較した。ECT-HWは、熱波の有無だけを示す従来の指標とは異なり、熱波の強度(温度の上昇幅)、持続期間、および季節内での発生時期といった詳細な特性を捉えることが可能だという。
その結果、複合熱波の場合、心疾患による死亡リスクはECT-HWの全範囲において一貫して増加し、明確な閾値は確認されなかった。死亡のオッズ比は、複合熱波下では1.86と推定されたのに対し、夜間のみの熱波下では1.16、日中のみの熱波下では1.19と推定された。さらに、複合熱波下では、特に突然の心停止、心筋梗塞、心不全による死亡が多いことも示された。
ECT-HWと従来の指標のそれぞれを用いて熱波による心疾患の超過死亡数を推定したところ、複合熱波では、ECT-HWに基づく推定で4万1,869件(心疾患による死亡全体の1.75%)、従来の指標に基づく推定では2万7,036件、夜間のみの熱波ではそれぞれ9,092件(同0.38%)と2,871件、昼間のみの熱波ではそれぞれ9,809件(同0.41%)と4,785件であり、ECT-HWに基づく推定値の方が高いことが示された。
こうした解析結果は、都市部での冷却シェルターの整備や家庭での空調コントロールの改善など、持続的な暑さから人々を守るための取り組みの強化が必要であることを示していると研究グループは述べている。
Chen氏は、「気候変動によって複合熱波の頻度と強度が高まりつつあることを踏まえると、この研究結果は、リスクにさらされている人を守るための特定の疾患に応じた予防戦略と公衆衛生ガイドラインの改訂の必要性を明確に示したものだと言える」と指摘している。
研究グループは次の段階として、さまざまな気候変動のシナリオのもとで、熱波に関連した心疾患により死亡する可能性が高い人がどの程度いるのかを予測する予定だとしている。(HealthDay News 2025年4月7日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0735109725003390?via%3Dihub
構成/DIME編集部
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