
世界最大規模の世論調査会社であるイプソスは、トランプ大統領による新たな関税制度に対するアメリカ人の考え方や態度に関するロイターとの共同調査結果を発表した。
本稿では同社発表リリースをベースに、その概要をお伝えする。
アメリカの貿易相手国への新関税を支持する人は半数未満
・アメリカ人の82%が、トランプ氏による最近の関税発表を知っていると回答した。「非常によく知っている」と答えた割合は、民主党支持者(51%)の方が共和党支持者(36%)よりも高くなっている。
・アメリカ人の5人に2人 (39%)は、メキシコからの輸入品への新たな関税賦課を支持しており、また、米国の貿易相手国すべてに対する10%以上の新たな関税賦課も支持している (39%)。そしてアメリカ人のおよそ3人に1人 (35%)は、カナダからの輸入品への新たな関税賦課と、米国外で製造されたすべての自動車とトラックへの25%の新たな関税賦課を支持している (35%)。
・共和党支持者は、民主党支持者や無党派層と比べて、これらの関税を支持する割合が有意に高く、7割以上がこれら4つの関税に賛成している。一方、民主党支持者で賛成しているのは約1割にとどまっている。
・「関税は、商品を輸出する国が支払う税金である」という文が間違いであると正しく答えた割合は、共和党支持者では19%で、アメリカ全体(32%)よりも低くなっている。FOXニュースや保守系メディアを視聴している人は、この文が正しいと誤って答える割合(72%)が他のメディアを視聴している人よりも高くなっている。(グラフ1)
< グラフ1>
・半数以上のアメリカ人(52%)は、「他国が国際貿易においてアメリカを利用してきた」と感じており、この考えは共和党支持者(85%)に特に強く、無党派層(55%)や民主党支持者(25%)よりも顕著だ。
・アメリカ人の4人に3人(76%)が「新しい関税は、制度を悪用している国をターゲットにすべきで、すべての国に一律で課すべきではない」と考えている。これは共和党支持者(82%)、民主党支持者(76%)、無党派層(77%)すべてで多数派を占めている。
・全体として、アメリカ人のおよそ半数(49%)が、「短期的な経済的痛みがあっても、アメリカを長期的に強くするためには価値がある」と考えている。これも、共和党支持者(81%)では高く、民主党支持者(23%)や無党派層(49%)と比べて顕著な差があった。(グラフ2)
<グラフ2>
アメリカ人の大多数、商品の価格が関税により上昇すると予想
・アメリカ人の4人に3人以上が、今後6か月間で個人用電子機器や携帯電話(77%)、自動車(73%)、日用品(73%)の価格が上昇すると予測している。家電製品(72%)、生鮮食品(70%)、住宅の修理・改装(62%)、牛乳やチーズなどの乳製品(56%)についても、価格が上がると予想する人が多数派だ。(グラフ3)
<グラフ3>
・過去3か月において、5人に2人(39%)が「お金が足りずに購入を延期した」と答えており、21%が「月々の支払いを期限内に支払えなかった」、16%が「生活費をまかなうために借金をした、または老後資金を取り崩した」と回答している。これらの割合は、2024年末から2025年初頭に実施されたイプソスの調査結果とほぼ同じ水準だ。
・バイデン前大統領の政権下でのインフレの影響についても意見は分かれており、共和党支持者(54%)は、民主党支持者(12%)よりも「バイデン政権時代が最もインフレが高かった」と正しく答える割合が高くなっている。
トランプ氏による他の大統領令に対しても米国民の意見は分かれる
・アメリカ人の半数以上(55%)が、「連邦政府の規模縮小」を支持している。しかし、「退職の延期や解雇によって連邦政府の職員数を迅速に削減する取り組み」については、支持する人は39%にとどまっている。
◎詳細な結果はこちらから
https://www.ipsos.com/ja-jp/most-americans-say-prices-will-increase-due-tariffs
調査概要
調査方法/KnowledgePanelを使用したオンライン調査
調査対象/アメリカの18歳以上の成人1027人
実施日/2025年4月4日(金)から2025年4月6日(日)
調査機関/イプソス
関連情報
https://www.ipsos.com/ja-jp
構成/清水眞希