電車には架線が必要…そんな常識を覆す新時代の電車が走っている。それはバッテリー駆動電車。駅で充電し、非電化区間はバッテリーからの放電でモーターを回転させる、斬新な電車に試乗してきた。
◎架線が無い田園風景に最先端の電車が走る違和感
関東地方の北部、栃木県の県庁所在地にあるJR東日本の宇都宮駅。そこにステンレスに緑の帯をまとった、最新の鉄道車両が停車していた。これがスマホのように充電して走るバッテリー駆動電車「EV-E301系」だ。ここから東北本線を約11kmほど北上すると宝積寺(ほうしゃくじ)駅にたどり着く。宝積寺駅から烏山駅までが烏山線となり、約20kmが非電化区間になる。普通ならば電車は走れないのだが、このEV-E301系は気にせずどんどん走っていくのだ。バッテリーの放電で走る最先端の車両は、スマホを想起させる。のどかな田園風景をパンタグラフを下げたステンレス製の電車が走る姿は、カルチャーショックでもある。
EV-E301系電車はJR東日本 烏山線の気動車を置き換えする目的で2014年3月にデビューした。烏山線は大正12年4月に開業した烏山駅と宝積寺駅を結ぶ、90年を超える歴史を持つ非電化単線の鉄道で、主にキハ40系と呼ばれる気動車で運用されてきた。しかし、ハイブリッドカーやスマホにも利用されるリチウムイオンバッテリーの性能向上を受けて、非電化区間でもバッテリーで走行できる電車の営業運転の目処が立ち、日本初のバッテリー駆動電車が走行を始めたのだ。
沿線にある滝駅に入線するEV-E301系。パンタグラフを下げて走る姿にカルチャーショックを受ける。
滝駅~烏山駅間の車窓。最新の運転席から緑溢れる単線風景を眺める違和感が、たまらない。