
佐賀県有田町周辺の地域で作られている、400年の歴史を持つ伝統工芸品、有田焼。透き通るような白さと、染付や色絵、金彩などが施された美しい器は、見ているだけでも幸せな気分にさせてくれます。
その美しさゆえに、ほかの器やテーブルクロス、カトラリーとの組み合わせ方法がわからず、普段使いするには難しいと感じている人も多いのでは。
そんな伝統を受け継ぎながらモダンに進化し続ける有田焼を縦横無尽に使いこなし、美しい食卓を提案しているのが、食空間プロデューサー兼テーブルコーディネーターの山野舞由未さん。
最新著書『有田焼で楽しむテーブルコーディネート』(世界文化社)は、料理を、器を、暮らしを、そして食卓を囲む家族や仲間との時間を豊かにする、今までになかったテーブルコーディネートの教科書。
今回は『有田焼で楽しむテーブルコーディネート』から異素材との組み合わせの楽しみ方をご紹介。和食器という概念を取り払い、自由に組み合わせてみることで、新しい有田焼の魅力を感じることでしょう。
異素材との組み合わせ
テーブルコーディネートには、「異素材」との組み合わせが欠かせません。ここでは、有田焼と相性がよく、なおかつ新鮮な印象をもたらす異素材アイテムを厳選して紹介します。「有田焼=和食器」という思い込みは無用。フランスのリネン、クリスタルグラス、イギリスのアンティークシルバー、博多曲物やナンタケットバスケットなど自由に組み合わせてみましょう。見たこともない有田焼の表情が見えてきます。
■漆器と
漆器を「真行草」に例えると、輪島塗は「真(正格)」、ここで使用した越前塗の隅切り膳は「行(真と草の中間)」や「草(風雅)」ではないでしょうか。日常からハレのシーンまで使えて重宝するタイプです。テーブルクロスの青色と、朱赤の隅切り膳のコントラストも鮮やかです。
十五代柿右衛門のご自宅にて、迎春の設えを。厳かな新春の食卓に漆器は欠かせません。漆器のお膳は輪島塗の田谷漆器店作。波文様の蒔絵が豪華です。お椀は我が家に伝わるもので、共箱には菓子椀の表書きがありましたが、松竹梅に鶴とめでたい文様尽くしなので雑煮椀に見立てました。柿右衛門窯の器で格調高いハレのテーブルコーディネートに。
■ファブリックと
イギリスではテーブルクロスを敷かず、テーブルのマホガニーの質感を生かすのとは対照的に、フランス式のテーブルセッティングは必ずテーブルクロスを敷きます。同じテーブルクロスで食卓を囲むことは「平等である」ことを意味しています。最も格が高いリネンは、白の麻のダマスク織。硬質な焼き物を柔らかく縁取る効果もあります。
■クリスタルと
食卓の印象が重くなりがちな磁器と合わせる「異素材」として、最もおすすめなのはクリスタルグラス。繊細にして華やかなグラスは、和食器のコーディネートに優美さを添えます。写真はサンルイのアンティークのデキャンタとワイングラスです。
骨董尽くしのテーブルにクリスタルグラスを。グリーンの色付きグラスはラリックのアンティーク、隣はオールドバカラです。色付きで高さがあることで食卓がぐっと華やかに。低めのグラスは、いくつか並べて花器にしても素敵です。
■ヴィンテージシルバーと
フルコースのおもてなしはハードルが高くても、紅茶と菓子と果物なら気軽に友達をお招きできます。柿右衛門のティーセットに、イギリスアンティークのメロンシェイプのティーポットを合わせました。クリスタルグラスや曲物などの異素材も取り入れて軽やかに。
1900年頃に作られた香蘭社のティーセットと、イギリスアンティークのティーケトル。同時代のもの同士が生み出す美しい空間です。高さのあるティーケトルやティーアーンはホールウエアといい、カトラリー類をフラットウエアと呼ぶのと区別しています。
■曲物と
有田焼と相性のよい伝統工芸品として「博多曲物」があります。写真は「通い盆」。本書ではシルバーのティーポットとカップ&ソーサーや片口とぐい呑みと合わせました。曲物は、料理を直接のせても素敵です。
■ナンタケットバスケットと
籠物はものによってカジュアルになりすぎますが、ナンタケットバスケットは格をキープしつつ軽やかさを演出してくれます。朝食のセッティングに合わせて、ブレッドケースに見立てたナンタケットバスケットに、ル ジャカール フランセのナプキンを敷いて。
■アクリルと
アクリルの折敷はモダンな器をより引き立てたり、水面を覗くガラスのような役割をしたり、モダンに見せる効果があります。他のアイテムをカジュアルにしすぎないことと、モダンな有田焼に合わせることを心がけましょう。
☆ ☆ ☆
『有田焼で楽しむテーブルコーディネート』
(世界文化社)2750円
山野舞由未著
<著者>
山野舞由未 (やまの まゆみ)
テーブル & スタイリング 主宰、食空間プロデューサー
テーブルスタイリスト
子供のイギリス留学に伴いイギリスに語学留学。英国式紅茶と食卓芸術に興味を持ち、数名の講師にテーブルコーディネートを師事。帰国後、百貨店やギャラリー、東京ドームでの「テーブルウェア・フェスティバル~暮らしを彩る器展~」などでのイベントやトークショー、スタイリング、セミナーのほか、ウェッジウッド、フランスリネン ボーヴィレ、ロイヤルクラウンダービー、ドイツの名窯ニュンヘンブルグ、イギリスアンティークシルバー、アリタポーセリンラボ、深川製磁などのブランドのスタイリングを多数手がける。エレガントで華やかな食空間の演出にファンが多い。紅茶とテーブルセッティングの教室を主宰。学IWATAYA 定例講座講師。福岡県在住。