
佐賀県有田町周辺の地域で作られている、400年の歴史を持つ伝統工芸品、有田焼。透き通るような白さと、染付や色絵、金彩などが施された美しい器は、見ているだけでも幸せな気分にさせてくれます。
その美しさゆえに、ほかの器やテーブルクロス、カトラリーとの組み合わせ方法がわからず、普段使いするには難しいと感じている人も多いのでは。
そんな伝統を受け継ぎながらモダンに進化し続ける有田焼を縦横無尽に使いこなし、美しい食卓を提案しているのが、食空間プロデューサー兼テーブルコーディネーターの山野舞由未さん。
最新著書『有田焼で楽しむテーブルコーディネート』(世界文化社)は、料理を、器を、暮らしを、そして食卓を囲む家族や仲間との時間を豊かにする、今までになかったテーブルコーディネートの教科書。
今回は『有田焼で楽しむテーブルコーディネート』から色の統一感を楽しむテクニックをご紹介。同系色で揃えたときに醸し出される統一感はとうっとりするほどの美しさです。
色をリフレインする
テーブルコーディネートで私が最も大切にしているのは色彩の統一感です。一目惚れしたグラスの色や、花屋で引かれた薔薇の色などきっかけはいろいろありますが、今回は「有田焼」が出発点なので、器の中の色を食卓上のアイテムでリフレインさせてみました。おすすめは面積を占める割合が一番高いテーブルクロスで、器の色を繰り返すこと。本書のコーディネートでもそのように、器の色をリフレインさせています。テーブルクロス、ナプキン、グラス、そして花まで、同系色で揃えたときに醸し出される統一感は、比類なき美しさです。
器に使われている色彩を食卓全体にリフレインした例。ネイビーをネームカードに、ピンクは花とナプキンに、そしてグリーンをテーブルクロスに。多色遣いの染錦を並べた食卓も、こうすれば美しく調和します。
■同系色で
起点は香蘭社の明治時代の古陶磁に描かれている青と金の竹の色。テーブルクロスの青と、クリストフルのパーシャリーゴールド仕上げのカトラリーで統一感を演出。さらに白磁の白をナプキンでリフレインしました。
李荘窯業所の呉須の青でブルーの世界を作りました。テーブルクロスを少し水色寄りにして、ナプキンやグラスは濃いブルーで設えています。同系色でのグラデーションを楽しむコーディネートです。
テーブルクロス、ナプキン、グラス、ガラス製のレンゲ。テーブルアイテムをすべて青で統一しています。単調にならないように、ナプキンは2種類の折り方に。同系色の中でメリハリをつけています。
■花と呼応させて
畑萬陶苑のキュイールシリーズのコーヒーカップ(ここではティーカップに見立てています)とケーキ皿。鍋島の古典的文様の一つである青海波との組み合わせが素敵な器です。青海波のブルーを、染めのスイートピーのブルーでリフレイン。硬質な鍋島の古典文様も、繊細な春の花のブーケの色と合わせることで柔らかい印象になります。
香蘭社の明治時代の古陶磁、ブラックホーソンのコーヒーカップの絵柄を覗いてみましょう。描かれている牡丹の花々の赤やピンクの濃みの美しいこと。それをフラワーアレンジメントのダリアや蘭の色、そしてマカロンの愛らしい色で重ねていきます。一見コーディネートが難しそうなカップも、色を味方にすればこんなに素敵になるのです。
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『有田焼で楽しむテーブルコーディネート』
(世界文化社)2750円
山野舞由未著
<著者>
山野舞由未 (やまの まゆみ)
テーブル & スタイリング 主宰、食空間プロデューサー
テーブルスタイリスト
子供のイギリス留学に伴いイギリスに語学留学。英国式紅茶と食卓芸術に興味を持ち、数名の講師にテーブルコーディネートを師事。帰国後、百貨店やギャラリー、東京ドームでの「テーブルウェア・フェスティバル~暮らしを彩る器展~」などでのイベントやトークショー、スタイリング、セミナーのほか、ウェッジウッド、フランスリネン ボーヴィレ、ロイヤルクラウンダービー、ドイツの名窯ニュンヘンブルグ、イギリスアンティークシルバー、アリタポーセリンラボ、深川製磁などのブランドのスタイリングを多数手がける。エレガントで華やかな食空間の演出にファンが多い。紅茶とテーブルセッティングの教室を主宰。学IWATAYA 定例講座講師。福岡県在住。