歴史に詳しい堀口さんが深く思いを馳せる江戸の文化と制服の変遷
――山脇学園で大事にされている「志」の文字を取って「志の門」と名づけられた、学校の敷地に隣接する武家屋敷門のことも『イラストでたどる女子高生制服100年図鑑』の中では紹介しています。入学式や卒業式の時だけ、特別に門をくぐることから、生徒さんたちには特別な存在のようです。
私が在校していた当時はまだ校舎にはなくて、数年前(正確には2016年)に、山脇学園が所有している九十九里の敷地から、現在の場所まで運んできたという話を聞きました。江戸時代について研究している視点から言えば「志の門」は門の両側に門番が控えるための「番所」を備えているのがポイント。格式が高く文化財としても貴重なんです!
重要文化財に指定されている通称「志の門」。2024年11月に実施されたイベントで一般公開し、約270名という多くの人たちが立派な佇まいに魅了されたとか。
――歴史に詳しい堀口さんならではの着眼点ですね! 江戸時代といえば、現在放送されているNHK大河ドラマ『べらぼう』の舞台。堀口さんも様々なメディアで同ドラマのことを解説されていてますが、これまではあまり描かれてこなかった江戸の文化が、とてもよく紹介されていますよね。
2024年に放送されていた『光る君へ』にも同じことが言えますが〝文化を描く大河ドラマ〟という潮流は、すごく興味深いですよね。戦国時代や幕末にぶつかり合う物理的な力を〝ハードパワー〟とするなら、ここ2年のNHK大河ドラマで描いているのは〝ソフトパワー〟という文化の持つ力。それって実はすごく強くて、感心させられることも大きい。文化の大切さを見直すきっかけにもなっていると考えています。
最近の国際情勢は〝ハードパワー〟による争いが絶えない状況ですが、そんな時にこそ〝ソフトパワー〟はとても重要だと思うんです。いがみ合う相手同士でも、お互いに好きな文化でつながることができるかもしれませんし。
日本のマンガやアニメは世界的に人気で、その原点が江戸時代に流行した浮世絵ではないかと言われています。和食についても寿司、天ぷら、蕎麦といった食事が、庶民的なものとして定着したのも江戸時代です。そんな時代を描くドラマを通して、世界の人たちを魅了する宝物が日本にはたくさんあることを、気づかせてくれているようにも感じます。
――山脇学園で歴史好きな素養を育まれた堀口さんらしい考察で、興味深いお話ですね。最後に『イラストでたどる女子高生制服100年図鑑』の感想を聞かせてください。
洋装制服の採用を始めた山脇学園に通っていたことから、制服の歴史についても興味はあったんですけど、この本のように1冊にキチンとまとまっているのを見たことがなかったので。(こういった本が出たことに)「ありがとう!」と純粋に思いました。
本のイラストを見ていると、時代による制服のいろんな変化を感じられます。山脇学園の第一制服も制定当時はきっとモダンな装いだったのかもしれません。けれど今見ると、すごくクラシカルで伝統を感じるというのが、とてもおもしろいなと。
いま最先端の制服でも、100年後にはひょっとしたらクラシックなものになっているのかも……といった考えも巡ってきますね。制服は大切な時を刻んでいて、時代を表わしているものなのだなと、改めて感じることができました。
――本に関する感想も含めて、本日はありがとうございました!
堀口茉純さん
1983年、東京都足立区生まれ。幼少期より時代劇に親しむ。小学4年生の時、司馬遼太郎の本に出合い、沖田総司に初恋をした。山脇学園卒業後は、明治大学文学部演劇学専攻に進学して歌舞伎や日本文化の研究を行なう傍ら、在学中に文学座付属演劇研究所で演技の勉強や、日本舞踊(若柳流)および殺陣の稽古を始めて、大学卒業後に『八州廻り桑山十兵衛』で時代劇デビュー。2008年には、江戸文化歴史検定一級を当時としては最年少記録で取得。それを機に「江戸に詳しすぎるタレント = お江戸ル(おえどる) 〝ほーりー〟」として注目を集め、歴史好きのアイドル的存在に。江戸時代が平和だった背景のひとつとして、当時の世の中で広く浸透していた儒学について考察する近著『論語と将軍 徳川将軍15人と江戸時代を創った帝王学』(講談社)が4月17日に出版予定。
堀口茉純さん著
『論語と将軍 徳川将軍15人と江戸時代を創った帝王学』(講談社)
4月17日発売
★インタビュー中の模様はコチラをチェック!
取材・文/田尻健二郎 撮影/関口佳代 イラスト/めばち
『イラストでたどる女子高生制服100年図鑑』好評発売中!
大正時代から令和時代まで、100年あまりに及ぶ学生服の変遷をたどる書籍「女子高生制服100年図鑑」が発売中。全国42校を例に挙げながら、イラストおよび写真で紹介している。
制服のイラストは、書籍・広告のほか『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』といったアニメのEDイラストなども手がけてきたイラストレーターめばちさんが、計129点を本書のために描き下ろし。めばちさん特有のふんわりとしたやさしいタッチの絵で、制服の歴史をたどるという構成も話題。
学校および制服の選定には、170年の歴史を誇る老舗学生服メーカー菅公学生服に協力を仰ぎ、制服研究の第一人者として知られている森伸之氏による監修のもと、新旧105着の制服を紹介している。
堀口さんが通われていた山脇学園中学校・高等学校の内容も含め、必読の内容だ。
■関連情報
https://www.shogakukan.co.jp/books/09311585
■公式Instagram
https://www.instagram.com/100years_school_girl_uniform/
【訂正のお詫び】
『イラストでたどる女子高生制服100年図鑑』P127の撮影協力の記述に誤りがありました。正しくは「東京菅公学生服」になります。関係各位にはお詫びするとともに訂正いたします。